No.34【ショートショート】Instagram♡探偵 ~女子高生探偵と一枚の投稿写真~
鉄生 裕
Instagram♡探偵 ~女子高生探偵と一枚の投稿写真~
井伊根星子には二つの顔がある。
普段は天真爛漫でどこにでもいるような女子高生だが、
ひとたび事件が起きれば、警察も顔負けの推理力で次々と謎を解明する名探偵であった。
しかも彼女は、スマホ一台でどんな事件も解決してしまうのだ。
そんな星子のもとに、今日も依頼が舞い込んできた。
「最近、彼氏の様子がおかしいんです。
実は昨日、新宿で友達と会うと言って家を出た彼の跡をつけてみたんです。
そしたら彼、新宿とは反対方向の電車に乗って、横浜で降りたんですよ。
そこで彼のことは見失っちゃったんですけど・・・
家に帰ってきた彼に何度尋ねても、横浜には行ってないって言うんです。
しかもその証拠に、彼がインスタに投稿した写真も見せられて・・・」
そう言うと、依頼人の女子大生はスマホの画面を星子に見せた。
画面には依頼人の彼氏と、その友達と思われる人物が映っていた。
「これは彼氏さんのインスタのアカウントですか?」
「はい、そうです。
これは彼が昨日投稿した写真なんですけど、
たしかに彼は昨日、横浜で降りたんですよ」
彼氏がインスタに投稿した数枚の写真には、
新宿の街で友達と楽しそうに遊んでいる彼の姿がしっかりと写っていた。
しかも、その中の一枚に偶然写っていた電光掲示板には、
昨日の日付である【4月1日】の文字が記されていた。
「写真に写っている彼氏さんの友人と連絡を取ることはできますか?」
「もう確認しました。
彼の友人も、昨日は彼とずっと一緒に新宿にいたって言うんです・・・」
彼氏が投稿した写真には、たしかに新宿の街が写っている。
だが、依頼人の彼女が嘘をついているようにも見えない。
「わかりました。とりあえずこの写真をもとに色々調べてみますね。
何かわかったら、こちらからご連絡します」
普通の探偵であれば一週間はかかるだろう。
だが、星子の手にかかれば、
写真に写っている違和感の正体を調べるのに
半日もあれば十分だった。
翌日、星子は依頼人の女子大生と駅前の喫茶店で待ち合わせをしていた。
「もしかして、もう何かわかったんですか?」
依頼人にそう尋ねられた星子は、
スマホの画面に映し出された写真を指さしながら、自信満々に言った。
「ここを見てください。
彼氏さんの後ろに写っている飲料水の屋外広告ですが、
この広告は、3月31日の夜中に別の広告に貼り替えられているんです。
もしこの写真が本当に4月1日に撮られたものだとしたら、
この飲料水の広告が写っているのは、ありえない事なんです」
星子の言う通り、彼の後ろに写っている飲料水の広告は、
4月1日の朝には求人募集の広告に貼り替えられていた。
電光掲示板に写っていた日付は、
恐らく画像編集ソフトで【4月1日】に書き換えたのだろう。
「彼氏さんが何処で何をしていたのかまでは分かりませんが、
彼氏さんが投稿したこの写真が偽物だという事は確かです」
星子のあまりの名探偵っぷりに、
依頼人の女子大生もただただ感心しきっていた。
「どんな事件も解決する名探偵というのは、本当だったんですね。
本当にありがとうございます。これ、気持ち程度ですが・・・」
依頼人はカバンから茶封筒を取り出すと、
星子の前に差し出した。
「お気持ちはありがたいですが、お金は結構です。
私がやっているのは仕事じゃなくて、あくまで趣味ですから」
星子は今までにいくつもの事件や依頼を解決してきたが、
お金を受け取ったことは一度も無かった。
用意したお金を受け取ってもらえず、
申し訳なさそうにしている依頼人を見て星子は言った。
「それじゃあ、一つだけお願いしても良いですか?
私のインスタ、フォローしてください♡」
井伊根星子には二つの顔がある。
普段は天真爛漫でどこにでもいるような女子高生だが、
ひとたび事件が起きれば、警察も顔負けの推理力で次々と謎を解明する名探偵であった。
しかも彼女は、スマホ一台でどんな事件も解決してしまうのだ。
No.34【ショートショート】Instagram♡探偵 ~女子高生探偵と一枚の投稿写真~ 鉄生 裕 @yu_tetuki
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