第5話 もはや子供じゃん
本館の入口、そこには魚を象った看板が置いてありいかにも”ここからは魚がいるよ!!“と言っているようだった。
看板には人気のクラゲやカクレクマノミが描かれており、本館に入って行く人で溢れかえっていた。
中に入ると入り口付近にはカクレクマノミが、
「みてみて!これ!これ!カクレクマノミだよ!!可愛いよ!!!」
大喜びで駆け寄り眺めている、やはり幼子のようだった。
「ホントだな…」
「カクレクマノミはね、イソギンチャクに隠れることで外敵から見を守ってるんだよ!だからあそこに入ってる子いるでしよ?」
「あれか」
何かビクビクして隠れているようで母さんに怒られているときの姉さんみたいだった。
姉さんは母さんに怒られ始めるといつも俺の後ろに隠れ”ごめんなさい”と小さく謝るのだ。
それにとても似ていた。
「イソギンチャクに隠れてないやつもいるな?」
「う〜ん、その子その子で正確が違うんじゃない?」
「ま、そうか」
魚も人と同じで個性があるということか…。
「ねえねえ、次はあっちのクラゲを見に行こ?」
「おう」
クラゲのコーナーでは様々な種類のクラゲが泳いでいた。
すべて同じクラゲだというのに本当に個性的だった、とても長い触手を持っているもの、とても大きな身体を持っているもの、とても小さな身体を持っているもの、とても短い触手を持っているもの。
それら全てに新鮮な反応をしていく姉さん。
「凄い!長いよあの触手!!」
と長さを指で測って見たり。
「ちっちゃい!!凄い可愛い!」
と可愛がりながら眺めてみたり。
「凄い、身体おっきいし触手は太いくて長い、触ってみたい……」
一つ一つにしっかりと反応して愛でていた、いつもは見えない無邪気な笑顔はとても愛らしいものだった。
「もう、歩ももっとこっちに来て一緒に見ようよ!ね?いいでしょ?」
と言いながら俺の腕に抱きつ「クラゲはねぇ〜?死ぬと水になるらしいよ?」と楽しそうに語る。
その後はペンギン、ラッコ、チンアナゴなどなど、人気な海の生き物達を見て回った。
全てに目を輝かせ楽しそうにしていて、それだけで俺は満足だった。
すると急にぐぅぅ〜、と小さく音がなる。
姉さんは顔を真っ赤に染め、
「ぼ、僕じゃないよ……歩がお腹すいたんだよね?」
と、必死に訴えかけてくる。
「そうそう、お腹すいたからなにかたべに行こ?」
と食事を始めたのは4時を回った頃だった。
一日水族館を歩き回ったため空腹で仕方なかったのだろう、普段はあまり量を食べない姉さんも大盛りを頼み、それを完食していた。
「ふぅ〜、美味しかったぁ、歩はもう少し食べる?」
「いや、俺もお腹いっぱいだよ」
「未来、今日はありがとな」
「ふふん!ねぇねぇ歩、楽しかった?」
「うん」
「じゃあ僕と結婚してくれる?」
「……友達からとかなら」
「なにそれぇ!じゃあその次は彼女だね?歩」
そう今日の余韻を感じ取りながら、二人で仲良く帰路についた。
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