エピローグ
それは、シェリルが地球へと転移して来てから二日目の夜だった。
自らの書斎で報告された資料に目を通していた博司は、ある項目で視線を止める。
その項目とは、明日退院となるシェリルに関することだ。
『これは転移当初の彼女のステータスです』
・ステータス
【名 前】 シェリル
【年 齢】 14
【ジョブ】 刻印魔法士
【レベル】 27
【魔力量】 314/314
【スキル】
・魔法スキル
『初級風魔法』『初級水魔法』『初級火魔法』『初級土魔法』『初級闇魔法』『初級光魔法』『刻印魔法』
・武術スキル
『刀剣術(1)』『短剣術(1)』『格闘術(1)』『棒術(1)』
・補助スキル
『危険察知』
【ジョブスキル】『魔石抽出』『魔力回復速度上昇(中)』『刻印アーカイブ』『刻印除去』『刻印魔法士の素養』
【ギフト】 刻印魔法
【称 号】 孤児の少女 孤独を乗り越えし者 世界を超えし者
『そしてこれが今日確認した彼女のステータスです』
・ステータス
【名 前】 朝比奈シェリル
【年 齢】 14
【ジョブ】 刻印魔法士
【レベル】 27
【魔力量】 314/314
【スキル】
・魔法スキル
『初級風魔法』『初級水魔法』『初級火魔法』『初級土魔法』『初級闇魔法』『初級光魔法』『刻印魔法』
・武術スキル
『刀剣術(1)』『短剣術(1)』『格闘術(1)』『棒術(1)』
・補助スキル
『危険察知』
【ジョブスキル】『魔石抽出』『魔力回復速度上昇(中)』『刻印アーカイブ』『刻印除去』『刻印魔法士の素養』
【ギフト】 刻印魔法
【称 号】 孤児の少女 孤独を乗り越えし者 世界を超えし者
「おかしい、これはどういうことだ……!?」
普段、常に冷静でいる博司が、動揺を隠せずに声を荒げる。
博司の言う通り、どう考えてもおかしな点があった。
「苗字が、存在しなかっただと……?」
ステータスに関する調査は、新世界現象以降、最も優先して調査されたことだ。
そのぶん他のことより、ずっと多くのことが分かっている。
その中の一つに、今回言及されている苗字についての情報も調べ抜かれていた。
現在、この世界で苗字が無い人間は見つかっていない。
遠い国にいる親が分からない孤児ですら苗字がしっかりと記載されていた。
どういう理屈かは不明だが、この苗字の信ぴょう性は現在100パーセントである。
現に、戸籍を取得したばかりのシェリルのステータスには、すでに苗字が反映されているのだから。
むろん、他の可能性も考えた。
異世界では文明が進んでおらず苗字の法が制定されていない、などだ。
しかしその可能性は、やけに詳しいシェリル本人によって否定されている。
まず彼女の両親が苗字持ちだった事。
名は、ベリル・ベッカーとシエンナ・ベッカーだ。
次に、シェリルのいたルヴニオン王国では、半世紀以上前に、苗字制定の法が出されている。
同じ孤児ですら苗字を持っているとシェリルが明かすので、ほとんどの人間に苗字が普及していたとみて間違いない。
出自は明らかで、両親も苗字持ち。
にもかかわらず、転移時に苗字が無かった。
それどころか、両神山ダンジョン内で初めてステータスを見たときから、苗字が存在しなかったという。
「……考えても分からぬな」
結局答えなど見つからない。
新世界現象が発生してからおかしなことばかりだったが、今回の件は極め付きである。
「まさか人ではない、などということもあるまい」
あり得ない想像だ、と自嘲の笑みを浮かべながら首を振る。
いろいろと考えねばならない立場も疲れる、と。
そんなことを想いながら、残る資料を片付けていくのだった。
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