第10話 どうしたら良い?

 自宅に帰り着いたちりこ。

 どこをどう帰ったのか記憶にないぐらい、憔悴してた。

 どっと疲れが襲ってくる。


 ちりこは呆然とした頭で玄関から自分の家のキッチンまで歩いて、座り込んだ。

 膝を抱える。

 ……ショックで泣きそう。

 キッチンの床のひんやりとした冷たさがちりこに伝わる。


 まだ12時だから子供達は帰って来ない。

 子供達にこんな落ち込んだ姿は見せられないよ。


「はあっ……」


 受けたショック、突きつけられた現実がちりこの想像を超えて大きすぎて。


「買い物した食材、……しまわなくっちゃ」


 早く冷蔵庫にしまわないと、ナマモノは傷んでしまう。

 買い物したエコバッグから出して冷蔵庫に食料を機械的にどうにか片付けながら、涙があふれていたのに気づいた。


 頭の中がぐちゃぐちゃだった。


「私……、どうしたら良いの? どうするのが正解なの?」


 旦那の浮気相手は二人もいて。

 一人は男で一人は女で、それにもうアホ旦那の子を身ごもっているなんて!


 さっさと離婚するべきなんだろう。

 だけど、怒りや勢いに任せて離婚してしまったら、何か取り戻せないようなしくじりをしてしまう気がしてる。

 旦那とまさひこの思うがままに、ズルい彼らの良いようにされてしまう。


 こんなに抉られた心、痛くて、痛くて、惨めでたまらない。


「もうっ! 早く離婚したい!」


 ちりこの小さく呟いた嘆き、哀しい心の叫びは部屋中に虚しく響いて、薄暗いキッチンの空気にすーっと溶けていった。

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