第5話 本当かな?

 まるで昼間に夢を見ていたみたいだった。

 とても甘美な夢を。

 勝也先生のあたたかい体温に包まれて、驚いたけどすごくホッとした。

 それはちりこの落ち込んだ気持ちによく効いた。



 ――新手の詐欺かなとも思ったわ。

 だって勝也先生は私よりも8個も年が下だし、私を好きになる理由がてんで見つからない。

 

 私の涙を見たって言っていたけれど、いったいどこで?

 うん、騙されないように気をつけなくっちゃ。

 でも、でもね。ちょっとだけ良い気分だったなあ。

 ほんのちょっとだけ、ね。



 そんな風に勝也先生とのことを思い出していて、ちりこはボーッとしていた。

 

 ちりこの子供は、幼稚園の年長さんの長男と年中さんの次男。

 

 ――アホ旦那が浮気して、私たちを捨てて若い女と同棲しようが再婚を夢見ようが、私がこの子たちを守るんだ。


 就職活動が全然上手くいかなくて。

 

 自分が何の取り柄もないすごいダメダメ人間なのかもと落ち込んでいたけれど、勝也先生に好きだって言ってもらえてちょっと自信がついた。


「あれ……? 私、ちょっとだけ心が楽になってる?」


 勝也先生と話してから、張り詰めた心が癒されてることに気づいた。

 ……まだ彼のこと、全部は信じられないけれど。

 そう――。私は心を許したわけじゃない。

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