第5話 本当かな?
まるで昼間に夢を見ていたみたいだった。
とても甘美な夢を。
勝也先生のあたたかい体温に包まれて、驚いたけどすごくホッとした。
それはちりこの落ち込んだ気持ちによく効いた。
――新手の詐欺かなとも思ったわ。
だって勝也先生は私よりも8個も年が下だし、私を好きになる理由がてんで見つからない。
私の涙を見たって言っていたけれど、いったいどこで?
うん、騙されないように気をつけなくっちゃ。
でも、でもね。ちょっとだけ良い気分だったなあ。
ほんのちょっとだけ、ね。
そんな風に勝也先生とのことを思い出していて、ちりこはボーッとしていた。
ちりこの子供は、幼稚園の年長さんの長男と年中さんの次男。
――アホ旦那が浮気して、私たちを捨てて若い女と同棲しようが再婚を夢見ようが、私がこの子たちを守るんだ。
就職活動が全然上手くいかなくて。
自分が何の取り柄もないすごいダメダメ人間なのかもと落ち込んでいたけれど、勝也先生に好きだって言ってもらえてちょっと自信がついた。
「あれ……? 私、ちょっとだけ心が楽になってる?」
勝也先生と話してから、張り詰めた心が癒されてることに気づいた。
……まだ彼のこと、全部は信じられないけれど。
そう――。私は心を許したわけじゃない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。