第22話 イイヒートの本気。

1人になったイイヒートが「レイカー!まだか!」と声をかけるとナハトは「行きます!」と言って立ち上がる。


「メロ、回復ありがとう。ナノカ、行ってくるね」

そう言って飛び出したナハトとイイヒートの組み合わせは悪くない。

だが副団長になったイイヒートの癖だろう。

自分が率先すればいいところでどうしてもナハトに譲る為にジリ貧になる。


暫く相手をした後でミチトは「とりあえずイイヒートさんは排除するかな」と言うとイブが「お疲れ様です〜」と言う。


イイヒートが「えぇ!?」と言っている間に一気に距離を詰めたミチトの蹴りで盛大に吹き飛ぶイイヒート。


ナハトが振り返れずに「イイヒートさん!」と呼びかける中、ミチトが「さあナハト、また一人ぼっちだね」と言って剣を構えなおす。


「甘ーい!」

「そこは俺たちでしょ!」

そう言って現れたのはイイーヨとイイダーロだった。


「そろそろだと思ったけど出てきたか」

「ナハト!マスターの弟だったのな」

「どうりですげぇ根性してる訳だ!行くぞ!」


イイーヨとイイダーロがライブに呼ばれて訓練場に現れると我先に切り掛かってくる。

「ナハト!隙を埋めろ!」

「任せるからな!」

「はい!」


ミチトとナハト達が斬り合っている中、訓練場を見て「情けないなぁ」と言ったのはアメジストでどういうことかと言うとアクィがヤァホィとアメジストをトウテまで迎えに行っていた。


ヤァホィは飛び降りる訓練の為に呼ばれたシーシーとシーナとヨンゴに「大きくなったねぇ」と目尻を下げて遊んでいる。

シーシーも「ヤァホィさん。久しぶりだね。あの話…もう少ししたら受けたいな」と言う。


あの話というのはシヤが後進を育てたら第三騎士団を退団をしてトウテでヤァホィと一緒に道具屋を学んで跡を継ぐ話だった。


「うん。大きな家を用意しておくから6人で住むんだよ」

「6?7じゃないの?」

シーシーがシヤとシーナとヨンゴ、そしてお腹を指差して最後にヤァホィを見る。

ヤァホィは嬉しさに目を細めはするがすぐに「僕は邪魔なお爺さんだから日中お店で会うだけでいいんだよ」と言う。

シーシーは家族の顔で「やだよ」と言ってツンとすると「ふふ。ありがとう。じゃあシヤ君と話し合ってね」と言った。



蹴り飛ばされて訓練場を転がったイイヒートに「生きてる?」と覗き込んだのはイイヒートが想いを寄せるアメジスト。

すぐに気が付いたイイヒートは「あ…アメジストさん!」と言って飛び起きる。


「なんで攻めないの?あのナハトって子よりイイヒートさんが攻め込めばマスターに一撃入れられたと思うよ?」

「いや…癖と言うかどうしてもレイカーに道を譲ってしまいます」


「…ムカつく〜。マスターに一撃入れられたらメロが地下喫茶に連れて行ってくれるって言ってたのになぁ」

アメジストは過去の経験から男性が怖い。

だがイイヒートの熱意には応えたいと思っていて、地下喫茶の話を聞いてなんとか行ってもいいかなと思っていた。

イイヒート自身は焦ってもいい事は無いとシヤ達が結婚と出産をしても何もせずに自身達のペースに任せていた。


そのアメジストのまさかの発言にイイヒートは「え!?アメジストさん!?」と聞き返す。

アメジストはニヤっと笑うと「別にマスターに一撃入れたら行ってあげてもいいよ」と言った。


目の色を変えたイイヒートが「本当ですか!?じゃあ今すぐ入れてきます!」と言って立ち上がると、嬉しそうな目をしたアメジストが「待ちなよ!回復してあげるって」と言って微笑んだ。



少し離れた所で今のやり取りを見ていたメロとナノカ。

「ねえ、メロさん?」

「メロでいいよ。どうしたのナノカ?」


「あの…………、イイヒートさんが闘神様に一撃入れるって…」

恐る恐る話すナノカにニコニコ笑顔で「んー…、まあああなったイイヒートさんならパパに一撃くらい入れるんじゃないかな?」と答えるメロ。


こんな話の間にナハトだけが再びミチトに蹴り飛ばされてメロの前に来る。

メロは笑顔で嬉しそうに「待っててナハト、今治してあげるね〜」と声をかける。

ナハトは身体を震わせながら「頼むメロ…、今辞めたくない…何か掴めそうなんだ」と必死になっていた。



ここで治ったイイヒートが動く。


「シヤぁぁっ!来ぉおぉい!俺とお前とレイカーでスティエットさんに一太刀入れてご褒美を貰うぞぉぉぉっ!!」


剣を持ったシヤがイイヒートに近づいて「どうしたイイヒート?何故そんなに張り切っている?」と聞く。


「アメジストさんが、俺の女神がスティエットさんに一撃入れられたら地下喫茶への同伴を承諾くださることになったんだ!」

「そうか…よかったな」


「だからお前も参加しろ!手が足りない!」

「いや、俺は家でシーシーと2人きりになれる。地下喫茶の必要はない」

シヤは今もヤァホィと楽しそうに話すシーシーを見ながら「地下喫茶の必要はない」と言う。


「バカヤロウぅぅっ!友達のためにひと肌脱ごうと言う心意気は無いのか!」

ここでようやくイイヒートの真意を理解したシヤが「なんだ…助けて欲しいのか?」と聞く。


「そうだよバカヤロウ!なんだと思ったんだよ!」

「イイヒートが俺を誘っていると思った」


「ぬぅわぁぁぁっ!バカヤロウ!いいから行くぞ!」

そう言ったイイヒートはナハトの方を見て「レイカーっ!まだか!メロさんに血が吹き出すくらいのヒールを浴びせて貰って今すぐに立ち上がれぇぇっ!!」と叫んでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る