第19話 最強のお婆ちゃん。

ミチトはナハト達の姿を見終えてから「イブ、ロゼ。おいで」と言う。

横にイブとロゼが来ると「母さん、4番目の奥さんのイブとイブとの子供のロゼです」と紹介をした。

イブはアイリスになって「ミチトさんの妻のイブです」と挨拶をするとロゼはたまに出てくるこの母に目を丸くしながら慌てて「ロゼです」と挨拶をした。


「ロゼ君は優しい顔が素敵ね。でもミチトみたいに芯の強そうな顔。イブさんもいつも慎重に周りを見てるけど、もう安心していいわよ」

この言葉の後でエスカは「私はもうミチトの敵にはならないわ」と言った。


イブは驚いて「え?」と聞き返すとエスカは「ふふ。親子だから効きが悪いのかしら?それともミチトが遠慮したのかしら?そうじゃなければ主人とナハトのおかげかしら?ナハトにミチトのことがバレてミチトに手を出された後から目が覚めた感覚で、更に変な執着もなくなったのよ」と言って笑う。


「ま…まさか…」

「ミチトさんの改竄術が…効かない?」

「効いてるわよ。大丈夫。でも今度は10年なんて待たせないで何かあったら顔を出して」


唖然としたミチトは「…わかりました」と言い、イブは「敵いませんね」と思ったままを口にした。そのまま顔を見合わせて参ったという表情をするミチトとイブを見てロゼが「お父さん?お母さん?どうしたの?」と聞くとイブが「ロゼ、またまた最強のお婆ちゃんが追加されましたよー」と言って笑った。


ロゼは身じろいで「え!?ソリード婆ちゃんにティナ婆ちゃんにローサ婆ちゃんだけでも危険なのにさらに?」と言うと「ふふ。いい子にしないと大変ですよ〜」と言って脅されてしまった。



ミトレとエスカの紹介を妻達に任せてミチトはナハトをクラシの前に連れて行く。

「クラシ君、今いい?」

「はい」と言ったクラシは「レイカー、おめでとう」とナハトに声をかけるとナハトは「ありがとうございます」とお辞儀をする。


「ナハト、クラシ君とは特に仲良くするんだ」

「え?なんで?全員に良くしてもらってる」


ミチトの言葉が理解不能だったナハトに「違うよ。ズメサはフォーム領だけど治外法権なんだ。その領主はクラシ君だよ」と説明をするミチト。

領民のナハトは「え!?何それ?知らない」と慌てる。


「そうだね。知ってるのは王都の偉い皆さんとフォーム様とミチトさんだけだからね」

「将来、ミトレさん達の山暮らしが大変になったらズメサに降りるといい。その時はクラシ君に相談してね」

「…うん。わかりました」



その後の食宴はミチトにとっては大変で、ナハトと子供達の手前弱音は吐けないが嫌でたまらない。普段塩対応のアクィの横で「アクィ、助けて」と言い、アクィからは「仕方ないわね」と助けられる。ラミィとフユィは貴い者としてと立候補してミトレとエスカ係になっていた。


次々とナハトとミチトに挨拶に来る貴族達に辟易としながらも大半は名前と顔が一致していて「崖崩れで困っていて助けてほしい」「決壊しそうな川がある」などと言われて「モバテさん通してください」と返すと秒で「構わないぜ。ミチト君、よろしくな」と言われてしまい「マジかよ」と言う流れができる。


溜まっていく仕事に「イブもお手伝いしますよ」「私もやる!」「私だってやるわ」と3人の妻達が助けると言ってくれる。ミチトはアクィを見て「じゃあ全部アクィがやってよ」と言うと、当然アクィは目を三角にして「夫婦でしょ!一緒よ一緒!」と言った。


そんなミチトを見ながらメロはナハトとナノカの横で「ナハト、良かったね」と言う。

「メロ、ありがとう。メロが気にしてくれたからここまで来れたよ」

「そんなことないよぉ。でもメロからもお祝いがあるから楽しみにしててね」


「メロ?」

「内緒だよぉ〜」


メロはドレス姿なのに小走りでエーライの元に行くとエーライの書状を見せながら説明をして最後に「なんとかなります?」と聞く。

それを気にしたローサが近づいて「あらどうしたの?」「まあ、それは素敵ね」「でもミチトさんの機嫌を取り成すなら…」と口を出してメロも「それだね!ありがとうローサお婆様!」とやる。


宴も終盤。突然エーライが「ここで特別のお祝いを闘神の娘、メロ・スティエットが用意した。ナハト・レイカー、前に出ろ」と言う。

皆の注目が集まる中、メロはキチンとした身のこなしでナハトの前に立つと「ナハト、今日まで立場を明かさずに頑張って結果を出した事をお祝いしてコレを贈るね。お父様、お母様、リナお母様、ライブお母様、イブお母様も前に来てください」と言う。

ミチトはこう言う場のお父様呼びだけで既に渋い表情になり、アクィは「メロ立派」と感激しながら前に出る。


「ナハト、お祝いだよ」

そう言ってメロが贈ったのはロングソードのシャゼットたった。


「シャゼット…?でも長いね。刃だけじゃなくて柄も長い」

「ロングソードだからね。さっき言われてたよね?陛下にお願いしたから訓練場も借りられて、闘神と闘神の妻達に訓練つけて貰えるよ!」

急遽アクィの話を聞いてロングソードのシャゼットが欲しくなったメロは書状を見せながらエーライに取り寄せさせた上に訓練場の使用許可も得ていた。


メロも何だかんだと頭の中はサルバンなのでお祝い・ご褒美=訓練となる。

だがその気持ちのわからないミチトが「メロ?お祝い?今から?ナハトを?」と聞く。


「そうだよ!」と言ったメロが横に居たベリルに「ベリル、パパの戦う姿が見られるよ!」と言うとベリルが「やった!パパ勝ってね!」と言う。

可愛い娘の声援で親バカスイッチの入ったミチトは「余裕だよベリル!」とやる気になる。


「お父さん!僕も教わりたい!」

「僕も!」

そう言って集まる子供達を見て「仕方ない。やるか…。ナハト、その刃を貸して…」と言って右手に刃を持って左手に鉱石を出すと「俺の術で姿を変える」と言って刃を数枚作ると「あげる。刃のない奴が練習用。それ以外はいろんな鉱石で作った一点ものだから壊すなよ」と渡す。

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