第18話 祝宴。

この件で正直ガクブルなのはシヅ達で良くも悪くもナハトを可愛がっていた。

式典後の食事会までの間にシヅがミチトの前に出て「ま…マスター…。あの…見てた?」と聞く。


ミチトには怒った感じもなく「え?どれだろう?」と言って人差し指を天に向けてクルクルと回しながら「ナハトに無理矢理女湯を覗きに行こうと巻き込んだ事?」と聞く。

シヅは「え!?それを見てたの!?」と言って一歩後ずさる。


「あれ?それじゃないなら…ナノカの部屋にナハトをダシに使って乗り込もうとした事?」

「ふぎゃ!?それも!?」


「あれ?それじゃないとナハトのお給料を借りてオーバイが居るのに女の子のいるお店に持ってくプレゼント買いに行ってお金返してない事?」

「…全部見られてた!?」

シヅは崩れ落ちて「終わった…」と呟いている。


「全部って言うならシヅの奢りで行った食べ放題のお店で、奢りなんだからって言って吐くまで食べさせたこととかかな?」

「…あー…、それです。それを言いたかったです」


ミチトはニコニコと笑いながら「まあ仲良さそうで良かったよ。ありがとうシヅ」と言う。


「しかもシヅって俺と相性いいのかな?俺がたまたま見た日に限ってやらかしてるよね。それで、お金返すの?」

「え!?うん!すぐ返すよ!」


「なんであれナハトと仲良くしてくれてありがとう」

「え…うん。でもアイツ強くて挫けないからキツいことばかりしたかも…。マスターは兄貴だから許せないよね?」

心配そうにミチトを見るシヅ。


「バカだなぁ。俺からしたらシヅ達も大事な家族だよ。家族のアレコレにいちいち口なんて挟まないよ。でもまあお金はよくないかな」

「本当?」


「ああ本当だよ」

「じゃあ俺、ナハトに謝って金返すね」


ナハトは昼食前にミトレとエスカの前で勲章を見せた。

ミトレとエスカは泣いて喜ぶとミチトに「ありがとう」と言う。


「別に俺は何もしてません。ナハトの実力です」

「いや、君の存在がナハトを一人前にしてくれたんだよ」

ミトレはやはり今もミチトとは親子ではないのだろう。頭を下げてお礼を言う。

その後でエスカは「ミチト、家族を紹介して?」と言った。


ミチトは落とし所としてある程度覚悟もしていたし考えも持っていたので「…わかりました」と返事をした。


「メロ、先においで」

「うん、パパ」


ドレス姿のメロを横に立たせて「母さん、この子はメロだ」と言う。

エスカは不思議そうにメロを見て「メロ?あの行方不明のメロ?」と聞き返す。


「うん。メロは4歳までの記憶がほとんどない。その事もあってマロが育てられないからウチで引き取った。マロの記憶にメロも俺も居ない。思い出させてもロクなことがないから言わないで」

「ええ、わかったわ。メロはこんなに大きく綺麗になって、もう18歳ね」


「パパのお母さん?私を覚えているんですか?」

「ええ、こんなに小さかったのにね。ミチト、メロを幸せにしてあげてね」

「わかってます」


ミチトはリナから呼ぶ。

「1番目の奥さんのリナさん、それとタシア、シア、コード、来て。この3人がリナさんとの子です」


「まぁ!タシア君は11年前にあった子ね!大きくなって立派な腕ね!こっちの子はお母さん似の美人さん!あらこっちの子は小さい時のミチトソックリ!」

テンション高く喜ぶエスカを見て驚く子供達にミチトは「この人は俺のお母さん、タシア達にはお婆さんだ」と説明をする。


「お婆さん!?こんにちは!タシアです!」

「シアです!」

「コードです!」

子供達が挨拶をした所でミチトは「ナハト、来るんだ」と言ってナハトを呼ぶ。


「タシア、この子はナハト、俺の弟、タシア達の叔父さんにあたる」

「叔父さん?」

「さっき勲章貰った人だ」

「凄い人!」


子供達がナハトと話している間にミチトは「次」と言ってアクィとアクィとの子供達を呼ぶ。


「2番目の妻のアクィと、ラミィ、フユィ、トゥモです。」

「あら!義理兄さんの言っていた赤い髪の妊婦さんね」


「ええ」

「まあ、美人さん揃いね。皆お母さん似の赤い髪が素敵よ」

「お婆様、ラミィ・スティエットです」

「フユィです」

「トゥモです」


「凄くピシッとしてお行儀がいいわ。お婆ちゃんは平民だからここにいるのもドキドキだけど3人は怖くない?」

「平気ですわ」

「うん。怖くないよ」

「平気」


「ふふ。この後のご飯の時、助けてくれる?」

「ええ、貴い者としてお助けしますわ」

「フユィもやります!」

エスカは子供達にありがとうと喜ぶ。

その子供達はナハトにも挨拶をして、ナハトは騎士団員だからか倍懐かれていた。


「ライブ、いいよね?ジェードとベリルもだよ」

「うん…」

ライブはバツの悪い顔で来る。

それは11年前にエスカを説得≒恫喝した事を気にしていて、当時はミチトの妻の立場で正しいと思ったがジェードとベリルの母の立場で考えるとやり過ぎた感が否めない。


エスカはライブを見て「あ!会えて嬉しいわ!ずっと謝りたかったのよ!ファルのお葬式の場もバタバタだったから謝れなくて気にしてたの!」と声をかける。

驚いて「え?」と言ったライブに「お葬式の為にファルの像を作ってくれた時に私がグチグチ言ってしまった事よ!」とエスカは言う。


「え…私もごめんなさい。言いすぎました。家の壁蹴って雷落として火の玉見せてアイスランスを浮かべて怒ってごめんなさい」

この説明に横に居たベリルとジェードは「ママ…そんな事してたの?」「別に驚かないけどやり過ぎじゃないかな?」と言うだけだった。


その言葉にライブが「え!?ショックとかは?」と慌てて聞くと2人の子供は「ないよ」「だっていつもと変わらないよ」と言う。

まさかのリアクションに「あれ?嘘?」とライブが言えば、「本当」「いつも通りだよね」と言って普通にしている。


このやり取りにエスカは「うふふ。素敵ね。私は家族の目、周りの目が気になって心のままに振る舞えないから羨ましいわ、緑の髪が綺麗なお子さんを紹介して」と言った。

ライブは少し嬉しそうに微笑んで「…はい。この子がジェード、ミチ…夫との子です。こっちの女の子がベリルです」と紹介をすると、ジェードとベリルは「こんにちは!」「こんにちは」と元気よく挨拶をした。


「はい。こんにちは。ジェード君は切れ長の目がお母さん似で美人さんね。ベリルちゃんはミチトに似たのね。ミチトは女の子なら可愛らしかったのね」


ライブ達はアクィ達と合流する形でナハトと話す。

ナハトは剣の使い方についてアクィとライブから指南を受けて、タシアやジェードから「訓練してよ」「剣の腕見てよ」とせがまれる。


「あなたの剣を見たけどシャゼットの長さ不足ね。膂力に自信はあるわね?ミチトに長い刃を頼みなさい、そうしたら一度私が相手をしてあげるわ」

「ナハト、アンタの剣はお利口さんの剣だから一度相手してあげるよ。私に参ったって言わせたらモバテさんの奢りで地下喫茶に招待してあげるよ」

訓練の提案にナハトは「ありがとうございます!頑張ります!」と言う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る