第17話 闘神からの受勲。

頭目達は取り調べの結果、エグゼ・バグの息子、シリィ・バグがバグ領の再起を願って人攫いに依頼をすると言う一世一代の大勝負に出ていた。

シリィの言い分は「傭兵部隊を作ってパグ領の主産業にしたい」と言うものだったが、そんな言い訳が通用する訳なく親子二代にわたって特権剥奪となった。



10日後。

今回の功績でクラシと第三騎士団でヤミアール領の戦闘に参加した兵士達は勲章を送られる事になった。


その場にはミチトが参列していて、皆は闘神の弟子であるクラシとスレイブ達第三騎士団の活躍という事でミチトは出席したと思っていた。


来賓席にはフォーム家のリーハイ・フォーム、カラーガの一家、ヤミアール家からはイクチ・ヤミアール、クラシの盟友でトウテがあるディヴァントの領主であるロウアンとローサ、そして見覚えのない初老の平民夫婦が着飾ってメロ達スティエット家と座っていた。


「余の名はエーライ・トーシュ・マイード。この度は国の危機を未然に防いてくれた事に感謝をする」

その言葉から始まった受勲式には全ての騎士団と平民達が集まった中で行われた。


エーライが事のあらましを民達に説明した後で授与が行われる。

エーライの「クラシ・ヤミアール。闘神の弟子としての仕事ぶり、見事であった。妻子と共にこれからも宜しく頼む」の言葉にクラシは「ありがたく存じます。このクラシ、粉骨砕身国に尽くし師に恥じぬように努めて参ります」と返事をする。


堂々とした姿に昔の面影はなく、ヤミアール家の恥さらしと勝手なことを言われていた事を知るものはわずかとなっていたし、誰も信じないだろう。


「ふむ。では闘神よ、其方の手から弟子にこのハイドナウト勲章を授けるといい。このハイドナウト勲章は国の子供達に尽力をしたハイドナウト・キャスパーの名を貰い子供達の為に悪を討った者たちに授けたい」


ミチトは少し呆れながら「俺ですか…」と言って前に出ると「クラシ君、見てたよ。見事だった。今度は四つ腕魔神の装備に勝てる術を考えよう」と言いながらクラシの服に勲章を着ける。クラシが「ありがとうございます」と言うと観衆が沸いた。



「副団長、イイヒート・ドデモ。団長が王都を警備している間、見事に団を率いて負傷者を出す事なく賊の制圧を成し遂げた事は見事の一言。更なる躍進に期待する」

「はっ!ありがたき幸せに御座います!」


「イイヒートさん、お疲れ様。アメジスト達と見ていたよ。洞窟内の狭い場所での戦闘も見事にやり切っていたね。あの壁面を無視して切り裂いた剣は流石だったよ」

「ありがとうございます!」



「第一部隊長、シヤ・トウテ。闘神の2番弟子の実力、見事であった。人質を優先に守った姿は闘神に見せてもらった。見事であった。近々第三子と第四子が生まれると聞く。楽しみにしているぞ」

「はい。ありがとうございます」


「シヤ、よくやった。今度はもう少し皆にも仕事を振れるようにしてシーシーの側にいれるようにね」

「うん。ありがとうマスター」



通常はここで終わるのだがエーライは終わらなかった。


「クラシ・ヤミアール、イイヒート・ドデモ、シヤ・トウテからの推薦があった。そして闘神から働きを見せてもらった」

突然の事に皆がざわめく中、エーライが「第一部隊ナハト・レイカー、前に」と言う。


「え!?」と言いながら聞き間違いだろうと思っているナハトにシヤが「ナハト、来るんだ」と言う。

シヤに呼ばれてナハトは周りを見ながら前に出る。


エーライがナハトを自身の前に立たせると「ナハト・レイカー、未だ十代にも関わらずクラシ・ヤミアールを守り抜いた剣技は見事の一言」と言った後で「そして今ならば名乗れるな?」と聞いた。


「は!…え…ですが…」と言って困惑するナハトを無視してエーライは「友よ、勲章を渡してやるといい」と言った。


「ええ」と言ったミチトが勲章を持ってナハトの前に来る。


「ナハト、良くやった。見ていたよ。キチンと俺の名を使わずにここまで来れた。結果を残せたのはお前の力と周りの皆のお陰だ。その事を忘れずに更に邁進するんだ」

「と…闘神様」


「別にもう隠す必要はない」

ミチトの言葉にシイ達が不思議そうにざわめく。


ざわめく自身のスレイブ達にミチトは「ナハト・レイカーは俺の弟。そして俺の名を使わずに身一つでここまできた戦士だ。第三騎士団の皆、隠していてごめん。でもナハトを支えてくれてありがとう」と言った。


「お…お兄さん…まだ僕は…」

「そう思うならもっと強くなれ。俺たちは認めたからここに家族で来た。ミトレさん達にも来てもらった。凱旋の日にメロがナハトに手を振った」


ナハトがミチトの弟と判明すると貴族連中は元より平民達も沸きに沸いた。

エーライが手をかざすと観衆が鎮まりミチトが言葉を続けた。


「ナハト。これからも国の為に人々の為に力を振るえ、そしてお前を支えてくれた女性にも感謝をしろ」

ミチトはナハトの胸に勲章を着けるとわざとナノカの前に転移をして「こっちにきて」とナハトの横に連れて行く。


「ナハトをありがとう」

「闘神様…」


「これからは俺の弟としてナハトは大変な目にも遭ってしまう。支えてあげてくれないかな?」

「はい!頑張ります」

ここで盛大な拍手が起こり皆がナハトを祝福した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る