第16話 ナハトの3年。
ナハトが王都にきてから約3年。
ナハトは潰れる事なくやり切った。
丁度その頃、クラシの実家、ヤミアール領に犯罪グループが出来ていて、クラシ率いる第三騎士団が出兵をした。
クラシは事前にイイヒートとシヤからナハトの素性を聞いていて、特別扱いはしないが気にはかけている。
犯罪グループは大規模な人攫いで、懲りずに再起を計ったキャスパー派が術人間を欲した為に代替わりで内政や治安がガタついていたヤミアール領を狙っていた。
久しぶりに実家に顔を出したクラシに領主になったイクチが「クラシ…済まない」と頭を下げる。クラシは「イクチ兄さんは気にしないで」と言って肩に手を置いて優しく微笑んだ。
かつてのクラシとは違い堂々と振る舞い「第三騎士団!準備をしてください!俺のスレイブ達も遅れるな!」と言うと地図を見ながら「広域遠視心眼術!犯罪グループは赤!」と言って犯罪グループを探すと「洞窟に居るのか…、ヤミアールの洞窟は元炭鉱でアリの巣みたいなモノだから一気に叩くしかないな」と言いながら作戦を練る。
クラシの作戦は小さな出入口は術で凍り付かせると数カ所の大きな出入口を騎士団や自身の術人間達で塞いで投降を促すものだった。
「広域伝心術!聞け!人攫いども!俺の名はクラシ・ヤミアール!我が兄が守るヤミアールの領土で行った蛮行を許すわけにはいかない!出入口は塞がせて貰った!今から出てこない場合には坑道を全て水没させる!ウォータープレジャー!」
クラシの術が放たれると奥からは「水責め!?」と小さく響く声が聞こえてくる。
「暗い坑道で死にたければ死ぬがいい!」
クラシの言葉に「バカヤロウ!人質が居るんだぞ!」と聞こえてくる。
「人質がいるから水責めで済んでいる。人質がいなければお前達はもう死んでいる!」
クラシは王都での教育で徹底出来る様になっていた。
そしてわざと人攫いにのみ伝心術で聞こえるように「まあ殺しちゃっても手遅れでしたって言おう」と言うと効果はてきめんで下っ端達は投降してきて捕まる。
そして人質のフリをした人攫いは第三騎士団の心眼術の前には通用せずに次々に捕まっていく。
「よし。イイヒートさん!第三騎士団を率いて中に攻め込んでください。レイカーは俺の護衛だ。俺は術使いだから剣が得意な兵士が残るんだ」
「了解!」
「はい!」
イイヒートは「ナハト、クラシさんを頼む」と言って中に入っていく。
ナハトは「はい!」と返事をしてイイヒートと一緒に中に入るシヤに「シヤさんもお気をつけて!」と声をかけた。
シヤは真剣な表情で「うん。早く終わらせて王都に帰らないとシーシーとシーナとヨンゴが待ってる」と言う。呆れ顔のイイヒートが「だからシーシーのお腹が大きいんだから辞退しろって言ったろ?」と言うのだがシヤは「ダメだ。人攫いは術人間を作る。それは倒す」と言って中に入っていった。
ナハトは3年の日々で皆に何があったかを知った。
そしてミチトの偉大さを痛感して更に訓練に励んだ。
一度サルバンに行かせてもらって王都の訓練が甘い事を知って更に自分を追い込んだ。
中からは「なら最速で制圧して王都に戻るぞ!」「異論はない!行くぞイイヒート!」と聞こえてきた後で人攫いの絶叫や剣同士が当たる音が聞こえてくる。
シヤ達が攻め込んで暫くすると坑道に穴を開けて現れた頭目がクラシに斬り込んできた。
ナハトがその剣を受け止めている間にクラシはサンダーフォールを放ったが頭目には直撃しなかった。
頭目は自慢げに「効くかよ!俺の剣と盾は四つ腕魔神の剣と盾だぜ!この若造をやったら次はお前だ!」と言いながら意気込んで襲いかかってきたがナハトにはあくびの出る相手だった。四つ腕魔神の剣は自分も使っていたので長さは完璧に把握していて紙一重で回避してしまう。
そもそも気迫も何もぬるい。
ミチトの前に立った時の恐怖を知ると何とも思わない。
そして大振りの剣を使う戦い方はサルバン家の当主スカロが特別に相手をしてくれたが、この男の比ではなかった。
ナハトは頭目の相手をしながら「クラシさん、生け捕りですか?」と聞くと世間話のように「やれる?剣と盾さえ弾いてくれればこっちでやるよ?」とクラシも返す。
ナハトは「余裕です」と言って踏み込むと男の肩にシャゼットを突き刺して刃をリロードする。
そして盾を使えないように肘にも刃を突き立ててから再度リロードをして頭目の喉元に剣を突きつけると「投降しろ」と言った。
肩と肘にシャゼットの刃が刺さったままの頭目は何も出来ずに投降を受け入れてこの戦いは終わった。
頭目を縛りあげて身動きを取れなくして転がすとクラシが「関節ばかり狙う剣は凄いね。どこで学んだの?」と話しかけてきた。
ナハトは「前にサルバンに行った時に当主の奥様が「身体、鈍るから付き合いなさい」と言って我流だけどといって剣技を仕込んでくれました」と説明をする。
「ああ、ヒノさんか…」
「ご存知なんですか?」
「トウテに居た時にね」
「トウテ…」
ミチトの住む街として聞き及んでいるトウテ。
まだ自分が近づくのは恐れ多い街、クラシがそこに居た事を聞いて色々と考えていると「行ってみたい?」と聞かれた。
「まあ闘神の街だから興味あるよね。今度シヤ達の帰郷について行けば?言ってあげるよ」
「え…、悪いです」
「そう?遠慮しないでも良いのに…ちょっと待っててね。広域伝心術!聞け!頭目は確保した!残りの連中も術で見えている!諦めて投降しろ!」
この言葉とクラシが見せた頭目の姿で手下達はすぐに投降をして攫われた人たちは無事に解放された。
ヤミアールから帰還したナハトに同行出来なかったナノカは泣いて手を振って迎える。
そして凱旋したシヤを待つのはシーシー達で、「シヤ!お帰り!」と声をかけ、トウテから来ていたアメジストが「イイヒートさん!お帰り!ちゃんと役に立った?」と言う。
シヤは「帰った。ただいま」と返事をして、イイヒートは目の色を変えて「アメジストさん!頑張りました!!」と返事をする。
そんな中、「クラシ!お帰り〜!」と呼ぶ可愛らしい女性を見て、ナハトが「クラシさん?」と聞くとクラシは手を振り返しながら「あの子は俺の奥さんだよ。腕に抱かれているのは息子のフォル。俺の師匠の師匠にあたる人の名前を貰ったんだ」と言った。
そして…。
「ナハト!お帰り!」
「メロ!?」
メロは目立つドレス姿で「全部見てたよ!格好良かったよー!」と言って声を大にして手を振る。
その姿にナハトは慌てた。
メロとは何の接点もないことになっていた。
それなのに王都の大通りで闘神の娘が声をかけてくる。
案の定シイ達が「メロさん?なんでナハトの事知ってんの?」と言い出しヨミが「ナハト、いいの?ナノカの顔が怖いよ」と言い「おおっ、修羅場だ!」とシヅが笑った。
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