第13話 子供達が知った事。

アクィとフユィは長湯なので先にのぼせたメンバーが外に出てシックとジャックスが用意した軽食やお茶を楽しんでいる時にシックが「タシア君、君はもう9歳だから少し難しい話をしてもいいかい?」と言い始める。


「なんですか?」

「闘神であるミチト君に頼みたい事とかがあっても難しくてね、タシア君の意見なんかを聞きたかったんだ」


「僕の意見ですか?」

「ああ、今日のミチト君の偉業を目にしてどう思ったかな?」


「僕のお父さんは凄いと思いました」

「うん。でもなんでもミチト君に頼むのは良くないよね?皆働かなくなってしまう」


「うん。そうかも。でも困った人が居てお父さんにしかやれないなら仕方ないかな」

「ありがとう。でもミチト君は何より家族が大事だからあまりトウテからは出ないんだよ」


「だから僕達はお父さんの働くところを見てないの?」

「そうだね。夜とかタシア君達がローサ殿の所でマナーなんかを学んでいる間に働いてくれていたんだよ」


初めて聞く事実にタシアは「知らなかったです」と言い、何も話していない事にシックが「やっぱりね」と言う。


「じゃあ今度は僕達が居てもお父さんじゃなきゃダメな日は行ってもらっても平気です!」

「うん。ありがとう」


「シックさん…、それって仕事増えますよね?」

「まあ治水とか道路作りとかラージポットのように街に水道を作るとかはお願いしたいかな?まあ後はできたら怪我人や病人のケアなんかも…」

次々と出てくるお願いにミチトは「マジか…」と言う。


こんな会話の後でタシアはリナからミチトが凄いから歓迎を受けた事、そして決して調子に乗って威張ってはいけない事を教わる。

そして「お父さんだって疲れちゃうからなんでもお父さんになっちゃだめなんだよ?」と言われるとタシアは「僕もお父さんみたいになりたい!僕がお父さんの分まで人を守りたい」と言ってリナもミチト達も嬉しい気持ちになった。


アクィとフユィが風呂に満足をしてから王都に移動をする。

王都に家族全員で降り立つのは初めてかも知れず、どこを歩いてもミチトは「闘神様!」と声をかけられて、警備の第三騎士団達は「マスター!」と手を振ってくる。


子供達はミチトを見て益々尊敬の眼差しで見るし、普段のミチトなら「やだ…もう帰る」と言うのに、この日は言わずに「第三騎士団はシヤ達の友達だよ」と説明までしている。


リナ達は「おお…、子供って凄いな」と思いながら後ろを歩く。

北部料理の店に着くと「シックさんもご一緒しません?」と聞くミチト。

シックが喜びに震えながら「おお…いいのかい?」と聞き「まあ別に、シックさんさえ良ければ、ねえラミィ?」とミチトが言うとラミィが「シックおじ様もどうぞ是非いらしてください」と言う。ここてイブとの息子のロゼが「アプラクサスおじさんは?」と聞く。

案外アプラクサスは子供人気が高く、子供達から呼ぼうよと声がかかることもある。


ミチトが「じゃあ呼ぶかな」と言うとアクィが「ミチト、モバテ様もお呼びしなさいよ」と注意をし、リナが「うん。寂しくていじけるよ」と教える。


ミチトが呆れ顔で「マジか」と言うとイブが「マジですよー」と笑う。

アクィが纏めるように「まったく、そこら辺がミチトらしいと言うか、タシアも似ちゃったしお父様譲りね」と言って笑った。


呼ばれたモバテとアプラクサスは馬車をすっ飛ばしてやってくる。

アプラクサスはカメリアとシナバーも連れて来ていて子供達の中には大きくなって会うのは初だからと「こんばんは、カメリア・アンチです」「私はシナバー・アンチです。久しぶり」と挨拶をする。


ここでロゼが「お父さんってお友達いっぱいだね。トウテの人達とロウアンおじちゃん達だけじゃないんだね」と言い皆が笑う。


ミチトは「え?そう見えてた?」とロゼに聞くとタシアが「ロゼ、お父さんは僕達と居るのを1番にしてくれてたからそう見えるだけで皆で孤児院とかロウアンおじさんのお家でお勉強してる時に仕事に行ってるんだってさ」と先ほど仕入れた話を説明する。


ロゼは不思議そうに「知らなかった。お父さんはいつも家でのんびりしてる人だと思ってた」と言うとメロが「パパは凄いんだよ。仕事してるのも隠しちゃうんだよ」と教える。

その横でラミィが「メロ姉様が言うなら信じるわ!」と言ってニコニコとしている。


子供達の話に再び「マジか」と言ったミチトが「……ってストップ。フラ!ライ!その先で倒れてる人がいる!すぐに治癒院に運ぶんだ!無理そうなら俺を呼べ!」と言った後で「…ってマジか、仕事してないと思われてたのか…、まあ言うほどしてないよなぁ視察事務所の人助けはイメージしにくいよなぁ」と少し困った顔をして言った。


食後は外に出るとミチトの術人間達が出待ちをしていた。

「マスター!ご無沙汰です!」

「あれ?イイーヨさんとアガットだ」


「俺も居ますよ」

「イイダーロさんとドリータンさん」


子供達は皆ミチトに遊びに来て欲しい、訓練してほしい。今度任務に一緒に行こうと言う。

その姿にタシアも「お父さんって凄いんだね」と顔を真っ赤にして感動していた。


そんなミチトがリナに笑われたのは、徒歩で別荘に着いた時にタシアから「あれ?別荘って王都なの?」と言われた事で、「ミチト、貴重な経験はさせてあげないとね」と言われてしまった。


2日目の道路づくりも順調に終わり、アプラクサスの願いで王都でもう一晩夜を明かす。

そして3日目は全員が城で正装をする。

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