第11話 親バカの暴走。
ミチトは一瞬で親バカの顔になると「メロと地下喫茶に行ける男は俺に勝てる男だけだよ!最低でもメロに勝てないとダメだよ!」と騒ぎ始める。
この言葉にモバテ達が呆れる中、シヤが「イイヒート、メロに勝てるか?」と聞く。
「奪術剣の使用許可と寸止めのルールが無いと無理だな、シヤは?」
「腕の一本は覚悟しないとダメだから戦いたくない。多分男で勝てるのはクラシくら…クラシも肉弾戦が弱いからダメだな」
そう言って少し悩んだ後で2人の結論は「つまり居ないんじゃないのか?」となった。
イシホが地下喫茶や親バカ発言を誤魔化すようにシヤとシーシーに「シーナちゃんもヨンゴ君も大きくなったからそろそろ?」と聞く。
このそろそろは次の子供と言う意味でシヤは「ああ、シーシーがいいと言ってくれたらシローとヨンシーも迎え入れたい。だがシーシーは軽すぎるから産バアに双子は無理だと怒られる」と言いながらローストビーフを皿に盛り「シーシー、沢山食べるんだ」と言う。シーシーは「軽くないよ!2人産んだらお腹のお肉取れなくて困ってるよ!」と言ってローストビーフをシヤの皿に返していく。
シヤはシーシーの脇腹を見て「あの肉は触ると安心する。さあ食べるんだ」と言うと間に座らせているシーナとヨンゴに「シーナも食べてるか?ヨンゴはパンが好きだから食べるんだぞ」と言ってドンドン取り分けている。
見事に話がそれたミチトが「シヤ、今度料理作るからトウテに帰っておいでよ」と誘うとシヤは「わかったマスター。でもお願いがあったんだ」と言う。
「お願い?」
「うん。マスターが中々王都に来ないから頼めない」
「えぇ…。ロキさんに言ってくれれば来るよ。嫌だけど」
モバテが「嫌なのかよ。もっと来いって。別荘には来てるみたいだけどおもちゃ取りにだしな」と突っ込む。
シヤは子供達を見た後で「マスター、シーシーにシローとヨンシーを産んでもらいたくても手が足りない。俺が仕事に行っている間にシーシー1人で4人を育てるのは無理だ。俺も仕事休みたい」と言う。
「育児の為の休暇?」
「それ」
「イイヒートさんとかグローキさんとかアプラクサスさん達に言えば?」
「マスターの許可がないと言いにくい」
「ええぇぇぇ!?マジで?」
「後はシーシーも働きたいから日中子供を見てくれる孤児院みたいなところが欲しい。何とかして」
頼みごとは至極真っ当で子供が欲しいし働きにも行きたい。そして安心して子供を育てたい観点からも誰かに見てもらいたいと言うのも間違っていない。ミチト自身は自分で育児をしたいからと器用貧乏と言いながら育児と仕事を自分のペースでやっているだけにシヤの悩みはよくわかる。
だがイメージがつかないミチトは「何とかって…」と言いながら横に座るシックに「シックさん?」と聞く。
「ふむ。保育所とかだったかな?確かニー・イハオはそこら辺が進んでいたはずだよ。聞いてみよう。日中のみ見れるようにすればいいかなシヤ君?」
「はい。助かります。そうしたらシーシーも働けるしシーナとヨンゴも沢山の経験ができる」
ここでシックはわざとらしく「だが困ったね、急には職員がねぇ」と言ってため息をつく。
「…ハイドナウト孤児院とサルバン孤児院とトウテの孤児院で子供好きの職員候補を探せと?」
ジト目のミチトが言うとシックは嬉しそうに「話が早くて助かるよミチト君」と言って笑った。
シックの横でアプラクサスも「本当助かります。アンチ領の不届き者も視察事務所でミチト君が豪腕を奮ってくれてますしね」と言うとシックが「ミチト君、次はリミールだったよね!頼むよ!」と声をかける。
このやり取りに肩を落としたミチトが「ほら…これが嫌だから王都に来たくないんだよ。王都に来ると大変なんだよメロ」と言うとメロは「メロは今のパパが好きだなぁ。勿論トウテのパパも好きだけど王都のパパを見てるとメロには彼氏なんていらないって思えるよ」と言って注がれたノンアルコールの葡萄ジュースを飲む。
一瞬固まったミチトが「…彼氏?早くない?」と探るように聞く。
「でも、ほらぁ、パパがだらしないと他の男の人が格好良く見えちゃうかも知れないし〜。ビシバシ仕事をする男の人とか見てて格好良い!とか」
メロの返答に「マジか?」と言って愕然とするミチトにイシホが「まあ確かにウシローノ君には父にはない優しさを感じたり父のような志の高さを見て惹かれました」と言い、アプラクサスも「確かにカメリアとシナバーに嫌われないように家での態度には気をつけるようになりましたよ」と続ける。
その言葉にもう一度固まるミチト。
数秒して「おいおいおい、マジか?マジか!?」と慌てだす。
窓ガラスがビリビリと震え、小さな地震が家屋を揺らす。
かつて海底都市でリナが妊娠していた関係で倒れた際に規模はもっと大規模だったが似た状況になっていた。
前にも似たようなことは何回かあったが、想定外の反応にメロが「パパ?」と声をかける。
「俺トゥモが生まれた辺りからトウテと視察事務所の往復がメインでたまにお邪魔してる領地の干ばつの対処とか洪水の対処しかしてないぞ?それってベリルなんか彼氏作っちゃうって奴か!?」
そう言って1人慌てるミチトにモバテが「ベリルさんってライブさんとの娘さんだろ?確かまだ3歳だろうに…」と呆れてる。
「んー…ベリルにはパパは格好いいよねって話してるけど「うん。沢山遊んでくれる」だから仕事してるイメージは無いかもね」
メロの言葉に愕然としたミチトが「シックさん、仕事…ありますよね?アプラクサスさん?モバテさんも、10人の子連れでできる奴を用意してください」と言い、笑いを堪えるシック達は「勿論だとも!」と言う。
「友よ、じゃあ効果的な仕事を用意しよう。ひとまずはジャックス領の北とフォームの南を繋ぐ道路の拡張工事から始めてもらって、嫌かもしれないが城で受勲式だ。まだ小さい子には分からなくてもジェード君達くらいなら正装をして受勲式で皆から讃えられるミチト君の姿を見れば惚れ惚れするだろう!」
イメージをしたのだろう。
ミチトはすぐに「じゃあ明日朝から始めて終わらせてきますから受勲式は明後日にしてください」と真剣な表情で言う。
今日はツッコミ役になったモバテが「…明日中にジャックスからフォームまでつなげる気かよ…」と呆れながら聞くと「行きにファットマウンテン寄って鉱石もらって道路広げて敷き詰めるだけですよね?イブ達にも頼めば皆で半日ですけど1人で子供達と行くから1日です」と工程をイメージしたミチトが説明をする。
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