第7話 紹介。

久しぶりに会うモバテは「ミチト君、お疲れさん。メロさんから聞いたんだな?」と言って笑うと、ミチトは呆れ顔で「まったく、俺の見てないところでそんな事してるなんて思いませんでしたよ」と返す。


「もっと王都に顔を出してくれていれば良いんだよ。ミチト君が居てくれるだけで王都が引き締まるんだぜ?」

「嫌ですよ。なんかトラブルが舞い込んだら困ります。それに俺なんか居たって何にもなりませ…」

話を途中で止めたミチトは「シイ!シヅ!ヨミ!巡回が甘い!路地二つ先で強盗!相手の姿を送るから捕まえろ!」と叫ぶと「だから俺なんて王都に来ても何もないし、いい事無いんですよ」と言うと、モバテは「…今だってやったじゃないか」と言って笑う。


「まあいいや。とりあえずアプラクサスさんとシックさんも呼べばいいのかな?おーい、アプラクサスさーん、シックさーん。モバテさんの所に居ますから来てください。後はイイヒートさんとシヤも来てよ」


アプラクサス達は、仕事の手を止めてすぐに来ると後からエーライも「呼んでよ」と言ってくる。そして皆メロとの仲をアピールしてきて「またお茶にご招待させてくれ」と言いミチトの目が三角になる。


むすくれた顔で「俺の娘」と牽制するとシックが「サルバン嬢の許可は貰ってるよ?」と無断ではない事をアピールする。ミチトはアクィが「貴い者としてありがたくお誘いお受けします」と言っている姿を想像して忌々しそうに「アクィ!!」と怒る。


アプラクサスが話を終わらせるために「まあいいではないですか」と言うとメロに「メロさん、彼は合格でしたか?」と聞く。メロはニコニコと「はい。無事にカラーガで99人抜きをしました」と報告する。


「99?最初のご予定では50…」

「折角なので増やしました」


サルバン式の考え方に「折角?意味がわからない」とアプラクサスが思っていると、そこにシヤとイイヒートが駆け込んでくる。2人は息を切らせながら「スティエットさん!」「マスター!」と久しぶりに会うミチトとの再会を喜ぶ。


「やあ、元気?今日はお願いがあったんだよ」

「なんでしょうか!言ってください!」

「俺も手伝うよ。でも夜はシーナのお風呂とご飯があるから夜はやだな」


ここでミチトはナハトを指して「俺の弟、ナハトです。今度第三騎士団に入るから先に挨拶をさせたかったんだ」と言う。

「弟!?」

「スティエットさんにはご兄弟が?」


頷いたミチトが「ナハト、自己紹介をするんだ」と言うと「はい」と返事をしたナハトは姿勢を正すと「ナハト・レイカー、16歳です。第三騎士団でお世話になります。よろしくお願いします」と挨拶をした。


ここでシヤが「レイカー?マスターはスティエットだ」と疑問に思ってくれたのでミチトは親が違う事、人生で今日が4回目の付き合いだと説明をする。


「俺の弟とは名乗らせないし、名乗って何かのトラブルになると困るからシヤとイイヒートさんにナハトをお願いしたいんだ」

2人はミチトからのお願いが嬉しく「わかりました!」「うん。任せて」と言って喜んでお願いを受ける。


ここでサルバン仕込みの脳筋思考でイイヒートがナハトの実力を気にする。

中堅までを相手に99人抜きした実力とカラーガの訓練内容を聞いて「んー…サルバンの午前中の訓練メニューか…。わかりました」と言う。


「後はまあ俺が悪いんだけど大人になって練習するように四つ腕魔神の剣をあげたらそれで練習して身体滅茶苦茶だったから騎士団でシャゼットとロングソードを仕込んでくれないかな?あ、シャゼットの刃は作り置きを渡すからさ」


ミチトはナハトに交換用の刃を渡して「これを渡すから使うんだ」と言う。


「後はこちらの方々の顔と名前を覚えて」と言って4人の名前を教える。

ナハトはうろ覚えの国王や重鎮達にたまげたがキチンと騎士団仕込みの挨拶を見せた。


平和が続くと兵達の練度や気迫のようなものがどうしても薄れ下がってしまうがナハトはしっかりとした身のこなしで高評価を得ていて、シックが「ふむ。こんな立派な好青年だとモテてしまうかもしれないね」と感想を述べる。それを聞いたミチトが「そうそう、第三騎士団に1人追加でよろしくお願いします」と言った。


「1人追加?」

「構いませんがどなたですか?」


「ナハトの彼女です。カラーガの騎士団で彼女が出来てて、王都で変な虫が付くならと思ってサンクタさんの許可は貰ってナハトと王都に来る事になりました」

「それは良かったです。すぐに手配をしておきますね」


アプラクサスが兵を呼んで追加の指示を出し終えるとミチトはナハトの横に立って「すみません。弟をよろしくお願いします」と言う。ナハトはその声に合わせて「頑張ります!よろしくお願いします」とお辞儀をした。


メロは着席したままで「ナハトが言うこと聞かなかったら私がビシバシしごきに来るから言ってくださいね!」とアプラクサスに言い、横で聞いているシヤとイイヒートが「…メロの訓練は怖すぎる」「うん。スティエットさんとサルバンが合わさった感じなんだよな」と話す。


「前にレオが走り込みでメロに追いかけ回されて死にかけてた」

「延々と追いかけてきて遅くなると術で狙われながら追い回されるってアメジストさんが教えてくれた奴だな」


この説明にナハトが青くなっているとメロは「うふふ。ナハト、サボったら文字通り雷を落とすからね」と笑顔で言い、ナハトはなんとか虚勢を張るように「お…おぅ」と返事をした。


話の切れ目でミチトがすかさず「話が終わりなら俺達はカラーガにナハト達を送って帰りますよ。おーい、サンクタさーん、帰りますよー」と動き出す。


そんなミチトの肩に手を置いて「待て」と言うモバテ。

嫌な予感に「え?」とミチトが言うと、そのままメロを見て「メロさん、15歳のお祝いにお食事のご招待をさせてくれないか?」と聞くと、メロは「んー…、パパが同伴してくれたらお招き頂きます」と品のある笑顔で返事をする。


嫌な展開にミチトが「メロ!?」と聞き返そうとするがメロは気にせずに「後はそんなに大人数は困るのでここに居るメンバーとサンクタ様達でもよろしければでしょうか?」と言う。


「大人数が困るのか?」

「はい。ナハトも連れて行きたいのですがここで周りに見られるのも困ります。あくまでイイヒートさん達は皆さんの護衛として、ナハトはサンクタ様の護衛としてが嬉しいです」


この説明にアプラクサスが「成る程、メロさんはお祝いの席に彼も同席して欲しいのですね?」と聞き、エーライも「では後は友次第と言うことかな?」と言う。


そのやり取りにミチトが困惑している間にシヤが「マスター、シーシーも呼んでいい?ヨンゴとシーナも大きくなったから会って」と言う。


「…メロぉぉぉ…、やり方がエグくない?」

「そう?メロはパパとナハトとご一緒出来て幸せだよぉ」

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