第6話 約束。
王都に行くとなるとどうしても必要なものが出てくる。
それはナハトが従兄弟の兄貴から貰ったシャゼットでナハトに聞くと実家に置いてきたと言う。
物凄く嫌だったが、ナハトの成長で最大効果を狙うとどうしてもシャゼットは外せない。
凄く嫌で別の道も考えたが今すぐどうにかできる訳でもないのでミチトは諦めると「シャゼットを取ってこよう」と言い、メロを待たせてナハトを実家まで連れて行ったシャゼットを取ってこさせる。
突然帰ってきたナハトに驚いた両親は更にミチトまでいると聞くと驚いて家の外に飛び出してくる。ちなみにうるさいのは御免なのでメロの母マロにはさっさと眠ってもらった。
母エスカは顔を真っ赤にして「ミチト!8年振りじゃない!」と再会を喜ぶ。
以前改竄術で変な執着や損得の気持ちを殺してしまったので一般的な母親がするような顔をして再会を喜ぶ母に努めて普通の表情で「ご無沙汰しています」と返すミチト。
義父ミトレが「今日はどうしたんだい?」と聞けばキチンと「ナハトの最終試験で見事王都行きが決まったのでお祝いに顔を出して腰を治したりしました」と説明をして「ナハト、皆を待たせてるからザッと近況を話すんだ」と指示を出す。
ナハトは身振り手振りで両親にこの一年の話をする。
立派になった事にミトレとエスカは泣いて喜んだ。
「お兄さん!剣取ってきます」
ナハトが家に入るとエスカは「前に会った孫はもう9歳ね?」と言う。「妻に似て笑顔の眩しい子になりました」とミチトが返してミトレは「他の奥さんとの子供もいるんだよね?前に兄貴がキャスパー領であった時に赤い髪の奥さんは身重だと言っていたよ」と聞く。
「はい。結局4人の妻との間に9人の子供に恵まれました」
「9人?それは賑やかでいいね」
そう言ったミトレは村での暮らしが寂しいのかも知れない。少し感慨深い顔をしている。
「もし今度…ナハトが勲章を授かれる日には家族で会えないかい?」
「え?」
突然の申し出に何と返事をするべきか悩んだミチトだったが母が縋るように「ミチト、お願い。お母さんも皆さんや孫達に挨拶がしたいわ」と言う。
ミチト自身、親やこの村に居た人間達への遺恨は消えていない。
極力会いたくない。その気持ちは変わっていない。
だが父になって子を持った事と、かなりの年月が過ぎたことで大分考え方は柔らかくなっていた。
「…はい。じゃあナハトに頑張るように言ってください」
そう言うと、母も義父も嬉しそうな顔をする。
その顔がまた色々と考えさせる顔で心苦しくなる。
エスカはシャゼットを取ってきたナハトに頑張るように言う。
普段以上の熱量にナハトが「どうしたのお母さん?」と驚くと、「ナハトが勲章を貰えるようになったらミチトが家族でお祝いに来てくれる事になったのよ。孫達に会いたいから頑張ってね」と説明をする。
この言葉にナハトは「頑張るよ!」と燃え上がり、ミトレが「頑張るんだぞ」と声をかけた。
「よし、皆を待たせてるから行こう」
「はい!」
ミチトは親に別れを告げるとナハトを連れてカラーガに戻る。
その後はナハトの卒団式が行われてミチトとメロは来賓席でそれを見守る。
2人は口で話さずに伝心術で会話をする。
「パパ、怒ってる?」
「いや、メロのお祝いだから平気だよ」
「そう?でもなんか怒ってるよね?」
「メロを見る男共の目が気にくわない」
チラチラとメロを見てくる男共の目が気に食わなくてミチトの機嫌は悪くなる。
「えぇ?そっち?」
「当然だよ。全員蹴散らしてから帰ろうかな」
本心に思えたしやるとなったら徹底的に痛めつけるイメージが出来ていたメロは「もう」と呆れると「この後はどうするの?」と聞く。
「一度ナハトを第三騎士団に連れて行くよ。イイヒートさんに指導方針を伝えないとね」
狙い通りとは言え、ミチトが自分から王都に行く気になってくれたことにメロは嬉しい気持ちになっていた。
「ありがとうパパ。メロはナハトとパパを見られて大満足だよぉ」
「15歳のお誕生日だからね。おめでとうメロ」
ここでサンクタからミチトとメロにナハトへ一言貰えないかと言われる。
メロが最初に立ち上がると「ナハト、卒団おめでとう。今度は王都で頑張ってね。私の耳にも頑張っているかとか入るし、仕事で会う事もあるから頑張るナハトに会える事を楽しみにしてるね」と声をかける。
メロが着席をするとミチトは立ち上がって「ナハト、おめでとう。約束を守って俺の名を出さずに強くなった事は見事だ。だがその強さは1人の力で手に入れたものではない。団員の皆さんに感謝を忘れるな。俺の弟だと言う事はまだ隠し続けるんだ。キチンとナハト自身が認められた時にまた会おう」と言った。
サンクタからカラーガ騎士団にナハトとミチトの関係は他言無用の守秘義務を命じられて卒団式は終わる。
昼食をカラーガ邸で貰ったミチトは午後にナハトとメロ、サンクタも行きたいと言うのでサンクタ一家を連れて王都に顔を出す。
サンクタ達はモバテ達に最低限の挨拶を済ませるとイシホの所に顔を出しに行く。
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