第23話 土の再生(石灰)と連作障害

 春3月。

 畑の畔に土筆が顔を出してきた。冬の寒風が大の苦手の愚生の血行も良くなって身体も快調だ。そろそろ次に植える作物の準備だ。


「ちょっと待て!」

 畑の師匠だ。どうやらその前に土の再生をしないといけないと言う。

 土の再生とは何だ!? 端的に言えば、酸性に傾いた土壌の中和とカルシウムの補給のことらしい。

 先ずは酸性土壌の中和。

 近年の酸性雨や便利な化成肥料の影響により、土が酸性に傾いてしまい必要な栄養素が流れ出てしまう現象らしい。逆にアルカリ性に寄ってもいけないが、通常では酸性に向かうとのこと。

 なので、栄養配分が最もよい状態で保たれるとされる弱酸性にもっていかなければならないとの仰せだ。

 次にカルシウムの補給。

 代表的な栄養素である窒素・リン酸・カリウムに次ぐカルシウム。これを土に投入しておいた方がよいとのこと。

 カルシウムは細胞壁の原料であり、新しい細胞が作られる成長点や根の先端で特に必要だというわけだ。カルシウムが不足すると葉・果実の先などの成長点が枯れたり腐ったりする、いわゆる先端障害が発生しやすい状況になるとのこと。


 酸性土壌の中和とカルシウムの補給。これらを同時に補えるのが、アルカリ物質である石灰や草木灰だ。食べたあとの牡蠣やアサリ、シジミの殻を細かく砕いて撒いてもよいが、普通は撒くほどの生ゴミは出ない。

 愚生の土作りの基本は鷄糞。畑の脇に積み重ねていた買い置きの鶏糞袋を見て師匠のひと言。

「鶏糞はメーカーによってまちまちだが、鶏卵が割れないよう殻を強くするため、餌の中に高配率で石灰分を配合している場合がある。それが結構ウンチにも出るんだ。だから土作りのベースを鶏糞でしているならば、石灰を撒く分量を控え目にしておいた方がいいかもな」

 栽培する作物にもよるが、通常の撒く分量は100g/㎡前後らしい。


「あとひとーつっ!」 師匠の講義は続く。

「連作障害を押さえること」

 連作障害とはなんぞや?

「立て続けに同じ場所で、同じ作物を作ると『成長不足や枯れてしまう』現象のことだ」

 キュウリ・サトイモ・トマト・スイカなどに発生しやすく、カボチャ・ニンニク・タマネギ・サツマイモなどに出難いという。

「根拠として、その作物を好む『病害虫が土の中に残留してしまう』こと。そして、作物自身が自分で自分を傷めるような物質を土の中に残す『自家中毒』。最後に、同じ場所で同じものを植え続けていると『栄養成分の偏り』が起こってしまう。この三つだ」

 う~む…なるほど。

「本日の講義はこれにて終了!」


 日頃の茶々を入れからかってくるだけの師匠ではなく、今日はたくましい先駆者の一面をみた。ひと口に菜園といっても奥が深い。愚生においてはまだまだ修行が必要のようだ。


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