第16話 スイカ・プリンスメロン

 七月中旬。茎も葉も茶色く変色し、くたっとへたばっている。これ以上おいていても玉の成長は見込めなさそうだ。思い切ってカラス徐けネットを全て外してみる。

 ネットに絡みついた蔓をぶちぶちと切っていき、玉の頭にのっけていた目隠し用の雑草を取り除いていく。すると――見事にスーパーで売られているような大玉がゴロゴロと出てきた。よし! これは上出来だ。

 結果発表。途中で割れたり腐ってしまったものもあったが、スイカは3株で大玉6個・小ぶり2個の収穫。プリンスメロンは3株で15個の収穫だ。試行錯誤の一年目でろくな管理も出来なかったが、終わりは上々か?

 さて、家のたらいに氷漬けし、風呂上がりに念願の丸かぶりだ。……うーむ、冷たくて舌触りはいい。が、何か物足りない。スイカは甘味と熟し。水分は多いが、カブトムシを引き寄せるようなあの独特の甘さに欠ける。おまけに皮2㎝もの厚さが赤くない。白いままだ。

 プリンスメロンにおいては、メロン風味のゴリゴリたくあんを食べているようなものであった。


 後日、嫁の母ちゃんにお裾分けした感想が講話へと変わった。

「スイカは全然甘くないよ、土作りがなっていない。鷄糞や生ゴミ堆肥だけじゃなく骨粉や魚粉、化成肥料も考えなきゃ」

 ダメ出しは続く。

「メロンの取り頃はねぇ、甘い匂いがしてきた時。そういう時はヘタが蔓から勝手に取れているもんだよ」

 予想はしていたが、気分は急降下。見た目はいっぱしの出来栄えだったが、中身は惨憺たるものだったということか。

 しかし、最後にこう続けた。

「土もあるし、気温もあるし、天候もある。苗の良し悪しだって勿論ある。農業とは毎年みな一年生と言うこっちゃ」

 さすが母ちゃん、課題は見えてきた。来年は産直市場にでも持ち込めるような超高級品を作ってやろう。


写真掲載中

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