第13話 スイカ・プリンスメロン

「いやぁ、大変なことになってしもうたよ。いかれぽんちとはこのことや」

 鶏卵サイズの実を確認してから二週間後、畑のパトロールに訪れると師匠ががっかりした様子でやって来た。聞けばスイカと同じウリ科のメロンも作っていたが、突然全部枯れてしまったという。

「ほら、こんな状況や」と連れて行かれた師匠の畑には、20個そこそこの茶色に変色したソフトボール大のプリンスメロンがごろごろと転がっている。

「今年はいい出来栄えやと思っていたんやがなぁ」

 残念な表情が途絶えない師匠に「何故ですか?」と遠慮がちに問うてみた。

「いや、俺にもわからん。長年やっていてもこういうことは初めてや。害虫や病気ではなく、恐らくメロン自身が自分で自分を殺してしまったんやろう」

 そういう現象もありか! 気温・雨量、日照その他もろもろ、数式では図れないダイナミックさが農業にはある。


 一方、愚生のスイカ畑を見回すとバレーボールくらいの大きさに成長している実もある。見事、後手後手にまわっている。なまくら根性が原因で、先週のパトロールを怠ったのが悪かった。

 遅ればせながら追肥を急ぐ。鶏糞を株間の所々にひと握り撒いてみる。本来の追肥は実が着き始めた頃がベストのようだが、前回来た時に多分に見落としていたようだ。仕方がない。

 大きくなっている実は地面に直接触れた状態だと病害虫に蝕まれてしまうので、刈り取った雑草で「まくら」をし、日光が満遍なく当たるよう転がし「玉直し」もやってみた。

 これ位の大きさになると、カラスにばれれば味見に来る。被せてあるネットの下にも雑草を散らせて本格的に隠してみた。

 さあ、あとは蔓と実の接合部「巻きひげ」と呼ばれる部分が枯れてきたらいよいよ収穫だ!


写真掲載中

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