第3話 🍠

 さては土作り開始だ。

はて? 作物って土に種をまいて水を遣りさえすれば、芽が出て成長するんじゃないの? と思っていたが、どうやらそんな簡単なことではなさそう。土にもいろいろあり、植物が育つ土でなければ駄目なようだ。

 パソコンを叩いて調べるに、植物の三大栄養素は窒素(N)、リン酸(P)、カリ(K)。これらが育てる植物に最適な割合で含まれていなければならない。ホームセンターで安く売られている建材用の安い土を使っても駄目なのだ。

 さて、同じくホームセンターの園芸コーナーでは、この栄養素を含んだ野菜栽培用の土が売られている。しかしこれは高い。20㎏で1000円はかかる。プランターでの栽培だったら充分なのだろうが、こと、そこそこの面積に撒くには途方もないカネがかかる。首切り寸前のサラリーマンにとっては予算オーバーの大赤字だ。

 では、どうすれば…。そうなんです。カネがなければ土も自作すればいい。


 窒素肥料の作り方はこうだ。

 窒素肥料は生ごみから作ることができる。前置きはさておき、作り方。

ホームセンターへコンポスト(蓋の出来るバケツの大型ものも)を買いに走る。

夕食を作る(朝食でも昼食でもかまわない)。

生ゴミが出る。

コンポストに放り込む(面倒臭いので、卵も殻も魚の骨も自然のものは全て一緒に)。

その上から米ぬかを適量振りかける(米ぬかは発酵促進作用がある)。

適度に混ぜる。

空気が入らないように蓋をきっちりする。

 おおかた夏場は2週間、冬は4週間たったら完成といったところか。漬物のにおいがしていたら完璧。生ごみが出たら継ぎ足していき、これの繰り返し。生ごみ物体は形状を変えずそのまま残っているが気にしない。土と混ぜたらいずれか溶ける。

 蓋をきっちりしなければならないのは、発酵菌は嫌気性細菌と呼ばれ、酸素を必要としない細菌だからだ(逆に酸素を入れてしまうと死滅する菌がある)。

 これで窒素肥料の完成だ。

 ただし、実際に捲くときはこの肥料は酸性であり作物の根を傷めるので、根に触れないような距離を空けて埋めるか、捲いてから2、3週間おいて撹拌してから作物を植え付ける。


 次にリン酸・カリの作り方

 愚生はその成分が効率よく含まれている化成肥料は使わない。なぜなら高い…からだ。いや、いずれかはこの便利な肥料を使うと思うが、今は20㎏100円程度で売られている鶏糞を使う。動物糞にも牛・豚肥料があるようだがコスパで鶏糞に決定。これだけ。


 さあ、そしていよいよ開墾だ。

 荒れ放題の雑草ぼうぼうを釜で刈り取り、地べたにスコップを入れていく。スコップを30㎝四方に入れ根を切断していくがひと苦労だ。人の腰の丈くらいに成長していた雑草の根は地下で相当に張っている。地道にワンステップずつ進めていく。

 ある程度の広さを掘り起こしたら、次は土の塊を鍬の背で細かく砕いていく。すると切断された雑草の根がわんさか出てくる。これも地道に根を取り除いていく。

 土の塊や草の根ごみなどが目立たなくなってきたら、本来はターゲット作物の栄養素配分の肥料を入れていくが、今まで雑草生え放しだった荒れ地。正確な施肥は後回にして、とりあえず下地肥料として窒素・リン酸・カリウムを5:5:5に施してみることにした。

 5:5:5ってどのくらいの広さにどの分量かって? 愚生にもわからない。今年はトライ&エラーの結果勝負だ。




 余談1:窒素(N)、リン酸(P)、カリ(K)について

◎窒素(N)…草木や生ごみ堆肥に多く含まれる成分。葉肥え(葉物野菜の生育)成分とも言われる。

◎リン酸(P)…動物糞堆肥(牛・豚・鶏)に多く含まれる成分。実肥え(結実野菜の生育)成分とも言われる。

◎カリウム(K)…動物糞堆肥(牛・豚・鶏)に多く含まれる成分。根肥え(根菜類の生育)成分とも言われる。

 栽培しようとする野菜によって、この割合を多くするか少なくするか、バランスを考えながら土を作っていきます。愚生は概ね苗を植え付ける1ヶ月くらい前に始めます。

 ちなみにサツマイモは栽培が簡単なようですので好きですが、生ごみ(窒素)1に対して、動物糞の中でも肥料効果が高いといわれる鶏糞(リン酸・カリ)4の割合で混ぜていきます。

 1対4ってどれくらい? なのですが、「1平方メートルあたり50グラム程度」などと指南書には書かれてあるのですが、難しいことはわかりません。結局、感覚で撒いていきます。そして結果を見て来年のためのフィードバックとします。

 ちなみに一つだけ気を付けているのは作る作物の要点。

 サツマイモは痩せた水はけの良い土を好みます(痩せた土から養分をどんどん吸収して、自身(実)が肥える)。それと、蔓ぼけ(葉っぱの部分ばかり茂って、実が肥えない)するのようなので、窒素成分は控えめにしていきます。


 余談2:「腐る と 発酵 の違い」について

 発酵とは何ぞや? と調べてみると「腐る」ことのようです。いや、厳密には違う。物が劣化して腐ってはどうしようもない、捨てるしかないといった現象が「腐る」。劣化してしまったけれど、これは人間にとって有用だ、というのが「発酵」のようです。大豆を発酵させて納豆、牛乳を発酵させてヨーグルトなどがよい例です。

 また、園芸用語で堆肥とよく出てくる言葉ですが、これは有機物(草木・生ごみ・動物糞など)が微生物の働きによって分解され、植物の生育に良い状態になった土のことです。


 余談3:有機肥料と化成肥料(化学肥料・無機肥料)について

 有機肥料といえば自然の原料を応用して食した身体に負担のかからないもの、化成肥料にといえば人工的に作られた身体に悪影響を及ぼす可能性のあるもの、と捉えがちですがそうではありません。野菜の生育に使う化成肥料というのは有機肥料と同じ、原料は全て自然由来のものです。だた、特定栄養成分を人工的に抽出してある、言わば人間でいうサプリみたいなものです。

 人間でも食事から不足している栄養分はサプリから採る人も多いと思います。しかし、不足分以上に摂取してしまうと身体に堆積して、どのような悪影響が発生するかわからない、といったイメージです。反して、食物から摂取する栄養成分は採り過ぎた場合、糞尿で過分は排出されるといいます。


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