第16話 フェリオと伝説のお宝たち 2
「危険よ」
明るい声に不敵な笑みを浮べているフェリオにカーリーは信じられないと見る。
「普通はそうでしょうけど、オレも宝探しを生業としていた時期があって、その、そんな超が付く伝説級のお宝に遭えるなんて感激というか」
フェリオもどう説明していいか分からない。
「ハスラムさんもいるし、あなた、カーリーさんもいっしょなんでしょう?」
ならばそう怖くない。
「フェリオ、あなたは聖魔剣を手に入れたら何かしたいこがある?」
偉大な宝が手に入るかもという時にされる当たり前な質問をカーリーからされた。
夢がかなうかもしれない宝だ。
「あの剣って、国をどうとか大陸制覇できるとか、大きな夢がかなうって聞いているけど、面倒くさそうなので見ることができたら幸せ程度かな」
はっきりいって欲しいとか、手に入れて何かをするとかは、全く興味はなかった。
ただそんなすごい存在を実際に見てみたいが夢だった。
「オレもオリビエもだけど、自分たちの手に負えないものを欲しいとか思わないようにしているから。そりゃあ、心の底から欲しいものがあって、それに相応しい力がないと分かったら努力はするけど、あくまでも欲しいと感じたものに関してなので」
だよなぁとオリビエを見る。
こくこくと首を何度も上下しているオリビエがいた。
傭兵をしていて色々見てきた。
自分が責任持って管理できない力を得て幸せになった者はほとんどいなかった。
周りに迷惑をかけたり、自滅したりと。
そんなのは嫌だと切実に思うほどに。
「うん、力不足で周りに迷惑かけるからな。もしそんなもの手に入ったら、ハスラムにあげる」
「いらない」
思いっきり迷惑そうな顔で、即座に断るハスラムだった。
「でもさ、ハスラムレベルだったら大陸制覇とかできるんじゃあないの?」
その後のこともちゃんとできるだろう。
「興味がない。ごたごたはない方ほうがいい」
平穏が一番だ。
「あの剣は力を使えるものの元に辿り着いてこそ真実の力を発揮すらしい。あれが聖魔剣だったら、その相手を探さなくてはならないというか、導かれるんだろうな」
ハスラムは、ただ落とし物を届けるぐらいの気持ちだったが、そうはいかないようになってきていた。
「早く探して押し付けたいよ。いい奴だったらだけど」
オリビエの本音だ。
早くおさばしたい。
持っていることがバレたらどうなるか?
襲撃だらけの生活になるかもしれない。
聖魔剣より格段価値が低い紅竜の瞳でさえこうだ。
だがとなる、渡すべき相手がどう転んでも悪でしかなかったら。
渡したくはないが、持ったままでもいられない。
オリビエは大きなため息をつく。
これが本物なら本当にやっかいな物を手に入れてしまったと。
「あのさ、フェリオ」
渡すべき相手のことを今考えても仕方ないので目先の不安を解消することにした。
手に現れる短剣が聖魔剣かもという可能性を考えるようになってからずっと悩んできたことだった。
「オレがそれを持っていたとしたら、その、いいのかオレといても?」
さっきの反応はいっしょに動いてくれるというものだった。だが、そうなったら、どんなやっかい事が関わってくるか分からない。
危険度は何千倍にはね上がる。
コンビを組むなんてとんでもないと考えるのが普通だ。
「ああ、オレ見たい!」
フェリオの心はそれしかなかった。
「宝探しの冒険者冥利につきるんだぞ!」
伝説の宝でも最上級いや、最高峰だ。
「分かんないや。けどありがとう。オマエってやっぱり大物だ」
価値観の違いなのだろう。
「伝説の宝なんてな、そうそう見れるものじゃあないんだぞ。それに今回のパーティはそこに辿り着くことができる実力がある」
宝があるか分からないが、それを見たい得たいという気持ちでだけで地図片手に冒険に出ていた。
今回の宝のレベルは、あるなしを見極める前段階、辿り着く前に全滅や撤退が当然な宝なのだ。
「すごく、楽しみ」
いつも冷静な印象のフェリオが、悪戯をこれからするようなわくわくした少年に見える。
本当に嬉しそう様子にオリビエは、素直に喜ぶことにした。
オリビエにとってフェリオは、仲間でもありよき理解者だった。
ハスラムの次に信頼できる存在だった。
「よかった。じゃあ今日はもう寝ましょうね」
カーリーは、なんだかいい感じに流れていると安心した。
「夢見なかった」
オリビエの朝起きて一番の言葉がこれだった。
「そうか」
ハスラムも久しぶりに安眠できた。
青い石を手にしたからか。
「今までどんな夢見てたいんだ」
ハスラムと二人神妙な感じで話しているので、フェリオは訊いた。
「うーん、きれいなお兄さんの夢」
「はぁ?」
男の夢だと!
ちらりとハスラムを見る。
いい気はしてないはずだと。
「夢の中で頼み事をされたらしいんだ。その内容があやふやでね」
うんざりげにハスラムが答えた。
「はっきりすれば、こちらも手の打ちようがあるんだけど」
夢で得た青い石もこれから問題になってくるだろう。
何をすべきかがはっきりと分からない状況だった。
「ハスラムさんが納得しているのならいいですけど」
いえない時はそれでいい。深追いする気はないと。
おしえてくれる時がくれば、そうなるだろう。
「飽きた」
「真面目にやれ!」
これでもかというほど今日も襲撃者は現れる。
少人数で組まれていた集団がほとんどだったので撃破するのはそう苦ではないが、疲れる。
「体力削いでから本命出現って作戦かなぁ」
倒した者たちの大半はごろつきとはいわないが、あまり素行がいいと判断できる者たちではなかった。
「今度は黒ずくめか」
フェリオには新たな襲撃者のグループだ。
「きっとあいつら暗躍集団だよ」
オリビエも二回目の遭遇だった。
「けどさ、暑くないのかなぁ」
見ているだけでもうんざりとなる。
灼熱の砂漠の中ではないが、気候は乾季だ。暑い。
「暑いに決まっているだろう」
この状況でまた脳天気なことを言うと呆れる。
戦ったことがあるようだが、かなりの手練れの集まりだと動きや気迫でフェリオは察した。
「油断したらケガするぞ」
「分かっているって」
四人を円陣に囲んでくる。
一定の距離で睨み合いが続く。
先に進みたい。時間がもったいない。
どこかに突破口があるはずだと見ていれば、別の襲撃者たちが現れた。
「増えた!」
「こいつらもか?」
「あっちよりは涼しそうだ」
などと軽口をたたいていると、乱入してきた連中が黒ずくめに瞬時に全滅させられていた。
「やっぱ強いな」
「オレたちは、逃げるぞ」
感心しているオリビエの腕をフェリオは掴み、できた隙間から出た。
少しでも体力温存をしておきたい。攻撃される前に駆け出していた。
「追ってこないね」
かなりの距離走った。
黒ずくめもごろつきの襲撃者も現れない。
「入口の場所を知られるのが嫌だから、襲撃者を全滅させてからと思ったんだけど」
カーリーは周りを注意深く見る。
「この先にあるの」
砂漠地帯への入口、地面は砂が大半という場所から砂だらけの方向を指さしていた。
砂だらけの道なき道をしばらく歩いていると、大岩がゴロゴロと転がる場所に出た。
ここの岩は、古代戦争時に中央神殿の一部が魔術攻撃をされてここまで飛んできたといわれている。
大型の岩が多く、乱雑に落ちている場所をしばらく進むとカーリーは一つの大岩の前に止まった。
「いい。覚悟を決めてね」
ふっと小さく息をはき正面の岩に手を付ける。
小声で詩のようなものを歌っていた。
「あれ?」
ぽっかりと黒い穴が置かれている手の周りから広がっていた。
大人一人が立って入れる大きさになった時、せかすような声がした。
「さあ入れるわよ」
早くと手招きされる。
三人は急ぎ入り、最後に入ったカーリーは入口を閉じた。
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