第14話 カーリーと禁断の地 2
「ありがとう。けど、ある石はまだ見せられないの。盗られたないように隠しているから」
襲撃の原因だった。
オリビエたちにはいってないが、紅竜の瞳という伝説の宝だと。
まさか伝説の宝が封印に使われているとは思わなかったし、それが勝手に付いてくるなど信じられなかった。
洞窟から脱出し、気付けば右手首中央にくっついていた。
最初は虫にでも刺されて腫れているかと思いきやだんだんと硬くなり石の形を成してきた時は驚くよりも気味悪かった。
聖魔剣を封印するアイテムの一つ。
後でこの石の正体を知ると、納得できた。
そして痛感した。紫の一族が作ったものは、不可思議だと。
「禁断の地だけど、スロールの近くの砂漠の地下洞窟にあるわ」
「そんなところにあったのか!」
謎とされていた。
禁断の地自体がいい伝えの一つ。実際に存在するかも謎だった。
だが、調べていたハスラムからすれば思わぬ場所だった。
聖魔剣の封印地が、紫の一族の国の中心地からそう遠くない場所だった。
そんな近くに封印されていたとは。
「じゃあ、フェリオを迎えに行ってからそこに行こうよ。あいつがいるだけで戦力何十倍だから」
「だな」
ハスラムも即座に賛成した。
「いいの? その人を巻き込んでも」
「信頼はできる。剣の腕はこの大陸でも上位だ」
「そうそう。それにあいつ伝説の宝を探すのが大好きなんだ。知識もいっぱいあるし、行くとなっても危険だって怖がらない。喜びでいっぱいになると思う」
「そうなの」
二人の信頼度はすごい。この二人だけでも相当な戦力だが、それ以上となるようだ。
「助かるかな」
仲間が増えてことを早くすすめることができる。
やってしまったことがことだけに一人でがんばっていた。
自責の念でつぶされそうな心が少し楽になったように感じた。
「来たか」
オリビエがうっとおしそうに唸る。
次なる目的が決まるやお邪魔者たちの登場となっていた。
「さっさと片づけけましょうか」
いつの間にか前方の道を塞ぐようにずらりと並び、こちらに近付いて来ていた。
「また別口だね。雷でビリビリって一気にやってよ」
「楽はいけないわ」
雷の術は効果が広範囲に及ぶことがある。
カーリーは冗談ぽくいい、周りを見る。
野次馬が少しいる。
「だよね」
同好の士の保護優先と素直に剣を引き抜き動くオリビエだった。
あの後数回襲撃に遭った。
難なく切り抜けたが、ちょっと疲れた。
「バードの村だ!」
村を守る塀と入口の門が見えてきたのでやっと休めるとオリビエは喜んだ。
「おーい!」
門に飛び込むように村に入ると、入口近くで待っていた者が声をかけてきた。
「遅かったな」
短い黒髪のきりっとした瞳の青年だ。
「フェリオ! ごめんね」
「いいけど、オマエまた拾い物ばかりしていたのか?」
遅くなる原因はこれしかない。フェリオの経験上の見解だった。
オリビエの目に見えるもの全てが興味の対象という癖のせいで、仕事の時もよく時間のロスをやっていた。
「あのなぁ」
ニッコリ笑顔がふてくされに変わる。
「ハスラムいるからあんまりできなかった」
「って、それでもやってたんだ」
全くとなるが笑いが出る。
「フェリオ、待たせたね」
ハスラムがカーリーと共に現れた。
「うわ! 美人」
途中で止まる。
背が高く、体つきで男性だと判断したからだ。
「へぇー、かっこいい子ね」
カーリーは、第一印象を口にした。
「カーリーっていうんだ。旅の途中で知り合ってね。それでちょっと一緒に行かなければならない用事ができたんだ」
もじもじしたオリビエの様子にフェリオはまた笑う。
「何やらかした?」
これもいつものことだった。
いつの間にか関係者になるというオリビエの特技。
「色々あった」
カーリーに勝手に着いて行ったら、別口のやっかい事がからんでこうなった。
詳しくはここでは説明できないとオリビエが困っていると、カーリーが代わりに謝ってくれた。
「ごめんね。私のやっかい事に巻き込んでしまったの」
「ああ、いいですよ。残りの休みは二人に付き合う気でいたので」
本当にすまなさそうなカーリーの態度に反対に気をつかってしまう。
オリビエと仲間になってからこういったことには慣れている。
しかしとなる。すごい美人もどき二人がいる。ものすごく目立つ。
男性の視線が痛かった。
「腹減った」
フェリオの了承を取れた安心感からオリビエは思い出した。
「お腹だろう」
ハスラムに頭をこずかれながら、食堂に向かう。
「我慢できないからから、先に行く」
ハスラムは、逃げるように走って行くオリビエを見ながら隣を歩いているフェリオに耳打ちをする。
「フェリオ、戦闘が多くなると思う」
「ええ、なんとなく分かります」
襲ってこそこないが、殺気を含んだ視線を三人と会ってからずっと感じていた。
「悪いな。穴埋めは今度するから」
「いいですよ。オレ、お二人といるの楽しいから」
本音だった。
「詳しくは、夜に」
こうも付け加えた。
食事をしながらこれからのルートの案をフェリオは出す。
「今からスロールには、正規ルートでは太陽がある間に着くのはきびしいですよ」
この村からの最短距離で行くとすれば、街道から外れた道しかない。
それは道の無い砂漠を突っ切ることになる。
そんなルートだが、同じような目的に使う旅人が何千人と踏みしめてできた道のようなものはあった。
すぐに砂に埋もれるという難点はあるが。
「今来た道を戻り、すぐの分岐点を通るのが正規ルートです。楽だけど時間がかかります」
「できれば、早く進みたいの」
襲撃に遭い皆に迷惑をかけることもだが、聖魔剣が運よくまだいるかもしれない間に片づけたい。
動いたとなれば、すぐに探し出すことができるか自信がない。
時間との勝負とカーリーは焦っていた。
「だったら、砂漠の道を使うことを進めます。それにスロール近くに冒険者が集まる宿がありますよ。ただ、冒険者でいっぱいだったら泊まれないけど」
そこならば日暮れまでにどうにか着くことができる。
この辺りはお宝が眠っているかもという場所が多かった。
ほとんどガセなのだが。
「古代帝国の首都に近いから崩壊前に隠したとかいうやつだよな」
地図が出回っているのをオリビエも知っていた。
「あ! そうだ、フェリオのお目当てに出会えたの?」
今回もその一枚を頼りに昔の仲間と来ていた。
「あったらオレここにはいないよ。出る時にいっただろう」
もし宝があれば、鑑定に魔法王国と呼ばれるセルン王国に向かっていた。
セルン王国は、昔のものや魔術がらみのものの鑑定は優れていた。この地の魔導協会の鑑定書があればどこにいっても高値で売れる。
「そうだったね。まあ、いると思ってたから、いやごめん」
ムッとするフェリオに機嫌を直せと、後で食べようと残しておいた果物を差し出すオリビエだった。
「無駄なことといいたいんだろう。いいか、オレたちは夢を追ってるんだからな」
見つかる方がおかしいお宝だが、それがあるかもという楽しみは持っていたい。
宝探しをしているフェリオもほぼないと分かりつつ挑戦していた。
まれに実在することもあるからだ。
「宝に詳しいんだ」
それも伝承となっているものに。
カーリーは、探るようにフェリオを見る。
これからのことに関わる。真実を知ったら驚くだろうなぁと。
「え! それほどでもないですよ。どっちかといえば、昔の仲間の方がね」
誘われるから同行することがこの頃だった。
「オリビエと組む前はこっちが専門だったけど」
ひょんなことからオリビエと知り合い、安定した収入のあるギルドを紹介された。
そう剣を持つ者全てが憧れるヘルダーの。
加入することは難しい所だった。
「ちゃんとしたギルドに加入できて嬉しいです」
ナナエギルドに加入する前は怪しいところで仕事をしていた。たまに犯罪まがいのことをさせられたこともあった。
「フェリオは、信頼できるし、腕もいいから安心だよ」
カーリーの心配が分かるハスラムは保証する。
「オーリーのお守ができているからなぁ」
冗談なような言葉に笑いも続く。
「どういう意味だよ」
聞き捨てならないとハスラムを睨む。
「そうだろう、オマエのミス黙ってくれているからな」
ギルドに報告しなければならないぎりぎりのもの限定だった。
「いや、それは」
マズいと黙る。
下手に口答えをしてつつかれたくないことを白状させられそうだった。
「ある意味口はかたい」
「ははは」
こんなハスラムの様子にフェリオは、笑いしか出なかった。
ハスラムが暗にこれからのことをいっていると理解したからだ。
本当に何をやらかしたんだ? と、オリビエと問い詰めたい気分を抑えて。
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