13.いつか必ず
翌朝、叶依と伸尋、それからリュートは東京へ飛んだ。海輝や冬樹、それから珠里亜ではなく、海帆と史の家へ行った。
これまでに会った友人たちには簡単な説明しかしなかったのに、彼らにはかなり詳しい説明をした。
叶依と伸尋は地球を離れるときにみんなの記憶を消したが、何故か一部が残っていた。それを知ったのは景子から招待状を受け取ったときだった。
彼女の記憶が残っていることが信じられずにアルラに質問すると、どんな魔法でも本心に逆らえないと聞いた。記憶を消そうとしても、本当は消したくない人からは消えないらしい。
そのことを考えていると、パーティーのついでにライブをしようと思った。叶依のことを忘れている人はまだ多いから、準備は全部ステラ・ルークスで。
二人だけではダメだから冬樹も呼ぼう。
「でも家行ったら珠里亜にバレそう……」
ライブの時には記憶はあっても、発表前に知られたくなかった。
まず海輝には惑星での滞在を延長してもらい、叶依が冬樹を迎えに行くことにした。
「でもそれやったら珠里亜わかるんちゃん?」
「ううん。珠里亜と子供には起きんように魔法かけたし、冬樹もちょっといじってドアとかすり抜けさせた。だから伸尋の家に行っても誰にも見られんと向こう行けてん」
そしてステラ・ルークスに戻ってPASTUREが揃い、曲の練習をしたりして、八月にナンプに行った。
「えっ、じゃあホームページとかCMで宣伝してたのは?」
「あれも全部魔法。みんなの記憶戻して勝手にいじった」
自分が普通の人間なのでそんなことが可能なのかかなり疑問だったが、史も海帆も、叶依の言葉を信じるしかなかった。
「ふーん。これからどうするん?」
史はいつの間にか自分のところにいたリュートを見ながら伸尋に聞いた。
「まだしばらく今のままやけど、そのうちみんな呼んだりして……」
「私もたまにこっち来るで。もう昨日みたいなことはないけど。なぁ海帆、さっきから気になっててんけど」
叶依が何を言っているのか、その場の全員がすぐに理解した。
前に水晶で見たときとは海帆の様子が少し違っていた。
「……女の子やって」
「おー! あ、うち男の子と珠里亜んとこ両方で……バランス良いな」
「そういう問題なんか?」
伸尋は突っ込みながら笑っていた。
「ははは。結婚式はどうすんの?」
「生まれてからしようとは言ってんやけど……おまえら来れるか?」
「おう。来るに決まってるやん。絶対呼べよ」
ずっと遊んでいたリュートが叶依のところにやってきた。
「リュート眠いんかな?」
叶依が抱き上げると、リュートは欠伸をした。
「そろそろ行くか」
「うん……それじゃ……行くわ」
「もう向こう帰るんか?」
「ううん。珠里亜のところ寄ってから。多分冬樹が話してるからすぐ終わるし」
別れ際、今度は伸尋が史にあの紙を渡した。
既に眠ってしまったリュートは叶依の服をつかんで離さなかった。
また必ず会いに来ることを約束し、伸尋は史の家のドアを閉めた。
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