<第2章 異変>
5.頼るあて
冬樹がいなくなってから、珠里亜はかなり凹んでいた。ここまで頑張って来れたのは全部冬樹のおかげだったのに、その冬樹が姿を消した。数日後には帰って来るだろうと思っていたが、三日経っても四日経っても、冬樹は帰ってこなかった。
「もう嫌やぁ。冬樹っちゃんどこ行ったんよぉ」
珠里亜は子供たちを連れて、唯一東京に残っていた友人、海帆の家に駆け込んでいた。史が丁度在宅だったので、子供たちは外で遊んでもらっていた。
「待ってたら帰ってくるやろ?」
「いつ帰ってくんのよぉ。どこ行ったか全然わからんし」
珠里亜は一向に泣きやまなかった。
ここまで珠里亜が泣くのを見たのは友人たちの中では海帆が最初かもしれない。
「携帯持って行ったんやったら国内やろ? 携帯繋がらんの?」
「かけても繋がれへん。もーどこにおるんよー」
「仕事ちゃうん?」
「知ーらーんー。何も聞いてない。あ、仕事やったらマネージャー知ってるかも」
と言って珠里亜は冬樹のマネージャー、満に電話をかけてみた。
けれど冬樹が泊まりがけで行くような仕事はないらしく、何も情報は得られなかった。
「じゃやっぱり旅行かな……もーなんで一人で行くんよ!」
「うーん……あ、珠里亜、海輝とか知ってんじゃない?」
「あー海輝ょん! そうやあいつや!」
珠里亜は早速海輝に電話をしてみたが、
「えー何よー、電波が届かない場所にいるか電源が入っていないためかかりませんって」
「そういえばあの人なかなか電話出てくれへんらしいで。前に叶依が言ってたけど。しょっちゅう電波ないとこにいるらしくてLINEしてもなかなか既読にならんとか」
「もー! また後で電話しよ……海輝ょんしょぼいわ」
叶依が聞いていれば確実に殴られそうなことばかり言って、珠里亜は海帆の家を出た。マンションの下の公園で史と遊んでいた子供たちを迎えに行くと、彼らは珠里亜の方に走り寄って来た。
「落ち着いたか?」
「落ち着いたけど……何もわからんかった」
自分が珠里亜と話をしていることが変な気がして史は小さく笑った。
史がいつも話をするのは珠里亜ではなかった。
「あいつおったらな……叶依おったら……魔法とかで探してくれそうやけど」
「ほんまやぁ……でも会われへんしな。ま、帰ってくるまで待つわ」
それから珠里亜は史にお礼を言って、子供たちにもお礼を言わせ、晩ご飯のおかずを何にしようか考えながらバスに乗った。
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