第二話 『いつの時代にも、嫌な姑は居るもので......』


 一か月というのは、短いようで結構長かった。

 最初の頃は、家の家具の置き場に四苦八苦したり、二人用のクイーンサイズのベットを買って嬉しいやら恥ずかしいやら、とまあ色々あった。

 まあ、この一か月にあったことは追々話そうかな。

 でもやっぱり、一か月もそんな生活をしていれば、当然慣れが出てくる。

 別に、今の生活を次第に慣れていくことは良いことだとは思うよ。

 我が家での生活も慣れたことで、慎二と私はこれまでの様に会社に復帰したし、ご近所さんとももう普通に話せる様になった。

 傍から見れば、順調な新婚生活。

 でも違う。

 もっとこう、刺激が欲しい。

 新婚生活と言えば、ご飯の時は「あ~ん」をし合ったり、裸エプロンで夫を迎えたり、夜にはほら、色々やったりするものでしょう?

 でも、全然そんなこと起きない。

 早過ぎるけど、倦怠期とでも言えばいいのかな。

 慎二は残業三昧で帰宅時間が遅いし、我が家は夫婦が共働きしているからなかなか家の家事に手が回らない。

 一応、私が早く帰って洗濯とか皿洗いとかはしているけれど、そんなことをしているから慎二となかなか二人っきりの時間が取りにくい。

 不可抗力なところが大きいけれど、どうにかならないかな。


「はぁぁ~~。」


 私は思わずため息をこぼしてしまう。

 せっかくの新婚生活だというのにこんな状態だったら、誰だって落ち込むに決まってる。

 私は、誰にも向けることが出来ない苛立ちを抱えながら、会社から誰も居ない我が家に帰っていくのだった。



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..............................


..............



ピ~ンポ~ン


「はーい、今行きます!」


 呼び鈴がなった為、私は一旦夜ご飯を作るのを中断して玄関に向かった。

 ドアを開けると、そこには義母である夏須さんが立っていた。


「あ、お久しぶりです、夏須さん。」

「お久しぶり、美香さん。」


 そう言って、夏須さんは家の中に入って来た。


(この人、あんまり得意じゃないんだよなぁ。)


 姑があまり好きになれない人は少なからず居るだろう。

 それも、相手が若干古臭い考え方の人なら尚更だ。


「美香さん、今は夜ご飯を作っていたの?」

「はい、そうですけど。」

「ふ~ん。」


 すると突然、夏須さんが煮込んでる途中のコーンスープをすくって、味見した。


「ちょ、夏須さん、」

「これ、ちょっと濃いんじゃないかしら? 少なくとも、慎二ちゃんはもう少し甘めが好みなんだけど。」


 そのまま、夏須さんは私のコーンスープのダメな点を挙げ続けた。

 というか、早く要件を言って欲しい。

 もしかしてこの人、私の料理に文句を言いにきただけだったりして。

 これがあり得ない話じゃ無いってところがキツイ。


「分かった?」

「はい、今後は気を付けます。」


 私がそう言うと、夏須さんはスタスタと洗面所の方へと向かった。


(本当に、ササッと要件だけ済ませて帰ってぇ~~。)


 内心そんなことを思いつつも、私は夏須さんについて行く。


「ちょっと、何よこの洗濯物の量は!」


 夏須さんが指さす先には、三日分程溜まった洗濯かごがあった。

 別に、三日間もサボっていたって訳じゃない。

 ただ、私と慎二は平日は共に出勤している為、着る服だ大体はスーツだからそこまで洗濯物は溜まらないってだけだ。

 明日くらいにまとめて洗えばいいかな、と思ってただけだ。


「洗濯なんて、溜まらせる前に終わらせておくのが基本でしょう。」


 今度は、洗濯物がを片付けてなかったことに対する叱責が始まった。

 こんな感じで、夏須さんは定期的に我が家に訪れてはこうやってダメ出しを始めるのだ。

 別に、料理だってちょっとくらい味が濃たったってそこまで問題無いし、洗濯物だって然りだ。

 私は、数十分にも及ぶ夏須さんの説教を聞き流した。

 

「全く、これだから最近の若い女は。」


 そう言いながら、夏須さんは帰って行った。

 本当に、結婚って大変だ。

 姑の相手もしないといけないし、結婚式場の手配だって必要だし、家事だってやる量が二倍になるし。


「はぁぁ~~、なんか何にもやる気が起きないや。」


 私は、本日二回目の大きなため息を吐いたのだった。



~あとがき~


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