第55話

「すまない、ちょっと遅れた。資料を纏めるのに手間取ってね。」

おっその冴えない黒髪に黒縁メガネ、そしてめちゃくちゃ胡散臭い笑みはウィリップ•フォン•シュトラウトさんではないですか。

「遅いぞーウィリップ〜」

君はだらけすぎだ

「遅いよ〜」

俺もか

「なんでそんなだらけてるんだい?」

「なんでかね〜」

単純にウィリップさんが遅れたからでは?

「んじゃあ、行くかぁ」












ーーーーーーーーーーーーーー

ライン高山第3区域ネルト遺跡前、調査団キャンプ地






「遅いぞ、ラインハルト、ウィリップ」

ヤクザのような鋭い眼光に黒い鎧、椅子のそばに置いてある巨大な戦鎚。

.....強いなこの人。魔力量も相当なものか....

「悪いねゼレットさん、家にあった資料を纏めてて、遅れてしまってね、代わりに例の子を連れてきたから許してよ」

相変わらず誠意の感じられない目線だ...まぁ眼のせいかもだけど。めっちゃ細いし。

「例の子...噂の生き残りか。」

噂?あとこの人ゼレットさんって言うのか。

「はじめまして。シルキーといいます。よろしくお願いします」

「ゼレット・バーンアウトだ、よろしく。蚕妖精を見るのは生まれて初めてだ....他に生き残りは居るのか?」

「自分が知る限りは見たことありません。母は私が生まれた時には居なかったようで、今は私を拾ってくれた老夫婦と暮らしています。」


「そうか....悪かったな。すまない」


「いえ....もう済んだことですから...」

なんか空気が悪くなっちゃったなぁ...話の流れを変えよう。

「それで、見つかった蚕妖精の資料はどんな物なのでしょうか?」


「それはだな....」

古い木箱に入っていた一冊の書物を取り出した。


「これが今回見つかったのは蚕妖精の糸を用いた戦闘術についての資料だな。」


糸?

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