罪悪感

 翌朝、セイコはショウジのために料理を作り、ショウジが食べる予定だった昨日の夕飯を電子レンジから取り出し、二人分の料理をテーブルの上に並べた。


 それから、身なりを整え終えたショウジと一緒に、セイコは朝食を取り始める。


 ショウジは卓上の蜜柑色みかんいろをした透き通った液体に漬かっている桃の切り身に視線を固定させた。


「おっ、桃? まさか、桃缶?」


 セイコは目の前に置かれたカレーライスが盛られた皿に、スプーンを突っ込まる。


「え、あ、うん! ショウジに喜んでもらいたいなーって思って、奮発ふんぱつしちゃった!」


「ん、どうして急に喜んでもらいたいと?」


(無駄遣いしてる罪悪感を埋め合わせたいから……なんて言えない)


 カレーライスを口に運んでいき、しばらく無言を貫くセイコ。


「……夫を喜ばせたいと思うのが嫁でしょ?」


「まぁ……そうだよな。でも、ダイエット中で断食してるセイコになんか申し訳ないような」


「ダイエットして家計に余裕ができたからショウジのご飯がちょっと豪華になっただけ! あはは」


「それならいいんだけど。……それより、そんなにカレーライス美味しい? 結構な勢いで減ってる」


「うん。まぁ、昨日の夜食べてないからね!」


「無理はしなくていいからね」


「体重も減って、ご飯もおいしく感じられて、一石二鳥だよ!」


 セイコはスプーンをカレーライスの皿と自分の口を素早く往復させていった。






 数時間が経ち、セイコは仕事を一旦止めて、眼前に、『心のマッサージ』の映像を表示させていった。


(今日は三十分行っちゃおう!)


 眉をひそめ、腕を組みながら天井を眺める。


(でも、さすがに豪遊しすぎなような……。いや、シルヴィアがわたしの事を待っている! わたしの手料理を待っている! 躊躇ちゅうちょしたらゆったり過ごす時間が無くなっちゃう。三十分で行こう! 予約予約!)


 セイコは眉尻と口角を上げながら目の前の宙を強めにつついていった。

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