理想の夫婦?

 翌朝、セイコはショウジより早めに起床して、台所に向き合っていた。


 そして、次々と食器に出来上がった料理を盛り付けていき、テーブルに運んでいく。


 テーブルの上にはゆるやかに湯気が立っている白米が盛りつけられている茶碗、同じく湯気が昇っている、小さな長方形の豆腐がいくつも入ったわかめ味噌汁、味噌煮のさばの切り身、沢庵たくわんとキュウリの漬物つけものが並べられた。


 それから、冷蔵庫の中から昨晩の残り物を取り出したら、電子レンジの中に入れる。

 備わっているボタンを指で押すと、鈍い動作音が周囲に響き渡っていく。


 数分経つと、電子レンジは電子音を鳴らし、温め終えたことを知らせてくれた。


 一方、ショウジは身なりを整え終え、作り立て料理の前の椅子に腰を掛ける。


「おっ、今日、さばの味噌煮じゃーん」


「うん、よく味わってね」


 セイコは電子レンジの中から昨晩の残り物を取り出し、ショウジの対面のテーブル端に並べていく。


 箸で挟んだ白米を口に運びながら呟くショウジ。


「毎回、俺が食べなかったのを食べさせてしまって悪いね」


「あっ、大丈夫大丈夫! いつものことだから!」


「そうか? ならいいんだけど……」


(本当は同じものを一緒に食べたいんだけどなぁ)


 ショウジは鯖の味噌煮を箸でつつきながらセイコに視線を向ける。


「そういえば、今日からセイコ仕事休みなんだっけ?」


「五日間だけだけどねぇ」


「何かする予定でもあるの?」


 セイコは芋の煮物を箸で挟みながら口を開く。


「うーん……。家の中で仕事関係の事するかも」


「仕事熱心だねぇ。ゴロゴロしちゃえばいいのに」


「少しでも食べ物稼いでおきたいからねー」


「体壊さないでよ?」


「大丈夫大丈夫! ……多分」


「本当かよ」


 ショウジは乾いた笑みを作り、味噌汁を口の中に流し込んでいった。

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