第2話

 かたまりが止まっている枝の木からオススメ引っ越し先の方向を示す向きに構かまえたスタンスでおしりを振りつつ歩きながらおどる。おしりフリフリで歩く長さがオススメ先までの距離(をあらわす)。それから、おしりを振るのをやめて、おどりはじめたスタートのところに半円を描くようにもどる。このとき、はやくもどるほどオススメ先をよいと感じているらしい。こんな感じでグルっと一回りするダンスを気がすむまで何回も繰り返すのだ。


 はたして、気がすんだつもりでダンスをやめ、ちょっと休けいをしたものの、まだおどりたいの気持ちが残っていたら、すなわち、オススメ先のアピールダンスをおどり足りないと感じていたら、再び、オススメ先に行く。行って改めて、新しい巣にふさわしいと思えば、かたまりにもどって、再ダンス!見物しているはたらきバチたちも、ずっと見物しているわけではない。ダンスに、いいね!を感じたら、そのダンスのオススメ引っ越し先に行く。そして、オススメ先を自分の手足で調べ、新しい巣にふさわしいと思えば、かたまりにもどって、ダンス!

 だから、オススメ引っ越し先がよい場所であれば、その場所について伝えるダンスでエリアが、いっぱいになる。


 みっちゃんはたらきバチは落ち着いて考える。

 みっちゃんのおうちは、間違いなくよい場所。ならば、目立つダンスさえおどれば、たくさんのハチがみっちゃんのおうちへ調べに行くはず。そのハチさんたちがかたまりにもどって、みっちゃんのおうちを伝えるダンスをおどるから、もっとたくさんのハチがみっちゃんのおうちへ。同じように、もっとたくさんはもっともっとたくさんになるはず。そこまで考えるとみっちゃんはたらきバチのやる気は今、あふれんばかりに。ダンスができるスペースをみつけ、おどりはじめる。


 みっちゃんのおうちの方向が分かるスタンスをとって、おうちまでの距離を伝えるおしりフリフリ。他のオススメ先ダンスのフリフリより大きく小刻みに振ったから見物のはたらきバチがどんどん集まってくる。集まりすぎて動きづらくなったけど、なんとか走るようにスタートしたところにもどってダンスを繰り返す。一回りの時間を少しでも短くして、たくさんの回数を繰り返す作戦。繰り返した分だけ、みっちゃんのおうちの場所をよりたくさんのはたらきバチさんに伝えることもできる!

 家の中は春も夏も秋も冬も過ごしやすい温度や湿度になってて、食べものや水もいっぱいで便利な部屋がいくつもあったことなど思い浮かべながら、みっちゃんはたらきバチは繰り返し繰り返し、クルクル回るダンスをおどり続ける。


 百回近く(以上)繰り返したか(繰り返しているだろう)、かたまりからオススメ先に向かっていろんな方向に出かけるはたらきバチたちの中にみっちゃんのおうちへ向かって飛ぶはたらきバチさんも順調に増えてる。まだまだ、おどる気持ちも体力も十分あったが、みっちゃんのおうちを見たくなってきたこともあって、ダンスを中断してプチ休けいするみっちゃんはたらきバチ。 

 少し気になったのが近くの他のはたらきバチさんでみっちゃんのおうちをオススメするダンスをおどっている気配がないこと。調べることに夢中でまだ一匹も、もどってきていないのか、近くでおどっているハチさんがいないのか、どちらかかなって、あまり気にしないで、みっちゃんのおうちへ向かう。


 途中で、かたまりにもどる何匹かのハチとすれ違う。先にもどるあのハチさんたちがみっちゃんのおうちをアピールするダンスをすることを期待しながら飛んでいたら、あっという間についた気分。さっきと同じようにベランダに入って、窓から家の中を見る。

 女の子がいつもより熱心にお手伝いをしてて、ヒトの子どものなのに、まるではたらきバチのようだって思えたけど、どうしていつもより熱心って分かったのだろうか不思議。そんなことは、どうでもいい。やっぱり、この家はよい場所だ。オススメダンスをおどりたい気持ちが益々強くなる。

 みっちゃんはたらきバチは急いでかたまりにもどって、ダンスができるスペースを探す。 探しながら、他のはたらきバチさんによるみっちゃんのおうちのオススメダンスの雰囲気が相変わらず、まるでないことが気になる。でも、さっきも思ったけど、たまたま、近くでおどってないだけだろうと考え、気にしないで、というより気にしないようにして改めてダンスをおどりはじめる。


 ある場所について伝えるダンスでエリアがいっぱいになるというダンスバトルの決着はダンスの出来で決まるワケではない。オススメ引っ越し先の良し悪しで決まる。引っ越し先を探すそれぞれのはたらきバチさんが自分でよいと感じたオススメ先のダンスをおどる。

 一匹のはたらきバチがダンスをやめても、他のはたらきバチがダンスをはじめれば、あるオススメ先をアピールするダンスは終わらない。

 一匹のはたらきバチがダンスをやめても、二匹以上のはたらきバチがダンスをはじめれば、あるオススメ先をアピールするダンスは増える。

 増えればたくさんになって、たくさんがもっとたくさんになって、一つの場所伝えるダンスだけでエリアがいっぱいになり、引っ越し先は決定する。


 みっちゃんはたらきバチのダンスを見た多くのハチがみっちゃんの家へ調べに出かけたが、もどってきたはたらきバチさんたちのほとんどがおどらなかった。数匹のハチさんはダンスをおどったのだけれども十回も繰り返さない程度。それは調べたところがあんまりだったことを示す。

 見に行って調べたオススメ引っ越し先がヒト用だったから、しょうがないけど。(つづく)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る