第18話 シャルロットの初恋

「私パーティーを抜けさせてもらうわ!」


 バルカン王都にあるギルドの一角でアレックス達にシャルロットがそう叫ぶ。

 戸惑うアレックスが。


「え?魔王軍も攻めてきて大変な時に何を言うんだシャルロット」


 アレックスはAランクでイケメン、当然のようにモテるし色んな女性と関係もありシャルロットも自分に気があると思っている。そのシャルロットが自分から去るなどありえないと。


「魔王軍のことはもう心配ないわ、ニアの街も他の街も撤退したという話だし」


「え!なんで?そんなの初耳だが」


「とにかくしばらくは魔王軍のことは心配しないでよくなったの」


「だからって抜ける必要ないだろ、今まで通り一緒にやっていけばいいじゃないか」


「私はやりたいことが出来たから」


「それはなんだい?いきなり抜けるなんて納得出来ない」


 シャルロットはかなりの美形だ、アレックスは今までずっと口説いているが全く落ちる気配はなく今更逃したくないので必死に引き止める。


「まさか男なのか?」


「え?そうね、そうかもしれないわね」


「まさか!俺よりもいいって言うのか?」


 呆れ顔のシャルロットは。


「この際ハッキリ言うけど私はアレックスのことはなんとも思っていないわ、パーティーメンバーというだけよ」


「な!何故だ?」


「あなたあちこちで女性と関係を持ってるでしょ?しかもパーティーメンバーにまで手を出すし、私はそういう人とは一緒になろうとは思わないわ」


 アレックスは黙ってしまった。アレックスは臨時で入って来たパーティーメンバーにも手を出しているし固定メンバーであるミリアとも関係を持っている。


「君はそれでいいのか?その、俺と離れても…………」


「パーティーを抜けるのは悪いとは思うけどアレックスに特別な感情があるわけではないわ」


「その男はどんなやつなんだ?それくらい教えてくれてもいいだろ」


「歳は33だけどとっても紳士的な人よ、一言で説明出来ないくらいの人…………私初めてなの男性にそんな感情を持つの」


「33?一回りも歳上のおっさんじゃないか!」


「見たこともないくせに失礼な人ね!」


 あまり怒ったことのないシャルロットにアレックスは少したじろぐが、どうにかしてシャルロットを引き止めたい。


「その男に会わせてくれないか?どうにも納得出来ない」


「なんでそこまでしないといけないわけ?あなたにそこまで言われる筋合いはないはずよ」


 そこまで言うとシャルロットはその場を去ってしまう。呆然とするアレックスに対してミリアは少し怪訝そうな顔で。


「ふられましたね、基本冒険者は自由な職業ですから抜けたいというのなら止めることは出来ませんし早急に別のメンバーを補充したほうがよろしいのでは?」


「少し黙っててくれ!」


 アレックスは諦めきれない、どうにかしてシャルロットを引き止めたいとストーカー気味になっていく。


 シャルロットもシャルロットでゴローの村に行きたいということは全く話していない。この日はその事を話すために学校前でゴローを待ち伏せするシャルロット、そしてその物陰からシャルロットを見つめるアレックス。


 シャルロットが手を振る先にゴローがいたがアレックスの位置からでは顔まではわからなかった。


「くそ!本当に男がいたのか、身長は高いな。あんなおっさんに取られるなど俺のプライドが許さん」


 そうとは知らずにシャルロットは無邪気にゴローの手を取り喋っている。


「俺にもあんな顔見せたこともないのに、一体どんなやつなんだ」


 アレックスの狂気はこの時から始まっていた、正攻法がだめなら無理矢理手篭めにしようとさえ思っていた。そしてシャルロットはゴローと腕を組んで歩き出す、アレックスの嫉妬を増長させているとも知らずに。


 ゴローのほうもいきなり村に移住させるのは問題があるとしてシャルロットの要望は保留にしてあった。亜人の村に人間を住まわせていいのかどうか判断出来なかった。ゴローが言えば反対する者はいないだろうが、人間に対する憎悪を持つ者は多い。1度村で意見を聞いてからということになったのでシャルロットはいつもの宿へと戻っていった。


 しばらくしてシャルロットの部屋の扉をノックする音がする。


 コンコンコン


「え?こんな時間に?」


 扉に近づくシャルロット。


「誰?こんな時間に」


「俺だ、シャルロット開けてくれ」


「アレックス?こんな時間になんの用?」


 宿屋の主はアレックス率いるパーティーのことは知っている、なのでメンバーであるシャルロットの部屋の鍵を渡してしまっていた。


 ガチャ


 部屋の鍵を開けて中へ入るアレックス。


「ちょっと!アレックス何を!ムグ!」


 アレックスはシャルロットの口を塞ぎ部屋の鍵を閉める。


「俺とお前の仲だ、お前も悪い気はしないだろ?」


「んー!ん!」


 そのままベッドへと押し倒されるシャルロット、アレックスはその上にのしかかって体を重ねてきた。


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