第14話 魔法の威力

 遂に魔法の実技の授業だ。

 いいとこの坊ちゃんは家庭教師でもいたのだろうか、ドヤ顔で難なく発動させているのが腹立たしい。

 まずは火の魔法を発動させるのだがほとんどの人間はそう簡単に出来ないでいた。その中一際目立つ高身長のおっさんが1人、ゴローも苦戦していた。


“うーん、きっかけがほしいな、訳がわからんし手から火が出るというのが未だに信じられないし”


 超能力でとんでもないことをしてるくせに何を言ってんだとツッコミを入れたくはなるが、信じてないというのが発動できない原因だ。


「全てはイメージです、頭の中で出来るだけ鮮明に思い描いて下さい」


 先生の言葉も雑と言えば雑だがそれしか言い様がないのだろう。


“イメージねえ、超能力とやることは同じか”


 ゴローが思いついたのはテレビのニュースで見た火事の映像だった、その瞬間手から物凄い火柱が立ち上がり。


 キャー!うわあああ!熱いー!


 周りにいた他の生徒が逃げ出すくらいの熱気を帯びた火柱にゴロー自身も慌てふためく。


「あちちちちちち!」


 咄嗟に超能力でその火柱を空中へと放り投げてしまった。


“ヤバい!熱くて遂使ってしまった!バレてないかな ”


「ゴローさんあなた本当に初めて?」


「え?はい、そうですけど…………」


「あの火力にも驚きましたけど、放つことはまだ教えてないのに何故出来るんです?」


“う!そっちか、確かにその火をどうやって対象に当てるとかはまだ何も教わってないからな ”


「咄嗟にやったことなので自分でもよくわからないです」


「そうですか………………」


 納得はしていないようだが授業の続きもあるためそれ以上のことは聞いてこなかった。

 そしてどうやって当てるのか?初級ではそれを単に投げるだけらしい。肩が弱いのとコントロールがない人間にはまず当てることはできないだろう。


“まさかの手投げかよ、そうなるとさっきの空中に放り投げたのがおかしいってのは理解できた”


 イメージで放つことが出来るようになるにはそれなりの年月が必要らしいのだが、ゴローは初日にそれをやってしまった。ゴローからしてみれば超能力のイメージトレーニングをずっとしていて、それを実践レベルで既に活用しているわけだから魔法に置き換わっただけで大して難しくはないのだが。


“この炎を圧縮して超能力で放てば銃の代わりとしても使えるな、相性によってそれを水にしてもいいし”


「急げ!北の門だ!」


 学校からの帰り道そんなことを考えていた時に騎士らしい格好をした人間が慌ただしくそう話しているのが聞こえた。

 村で足りない物を補充しようと街を歩いていたゴローだったが、野次馬根性で北の門へと見物へ向かう。


「あそこだ!クソ空中では手が出せん!ワイバーン隊はまだか!」


 よく見ると空に羽の生えた生き物が飛んでいた。ゲームでよく見るガーゴイルによく似ていたので魔族なのだろう。

 3匹しかいなかったので偵察に来たのか、それにしても王都にそれだけの数で来るなど人間は舐められてるなと感じた。


“そういや北の街は魔族に制圧されてたな、もう王都付近まで侵攻してきたのか? ”


 その内城の方からワイバーン隊らしきものが飛んできたがガーゴイル達に慌てている様子はない、むしろ薄ら笑いを浮かべ馬鹿にしているようにも見えた。


「あれは魔法で撃ち落とせないの?」


 近くにいた冒険者らしき人に聞いてみた。


「あんな遠くのは無理だよ、撃っても簡単に避けられちまう弓でも同じだな」


「そうなんですか」


“ん?魔法ってそんなに弾速遅いのか?俺が使えばコンマ何秒で届くけど、見せないほうがいいな ”


 しかし、まだ学校があるのに今魔族に王都が攻められるのは都合が悪いので隠れた場所からゴローはそのガーゴイル達を消すことにした。


「クソ!ワイバーンだと小回りが効かないから攻撃が当たらん!」


 難しい顔をして騎士と思われるものがそう話していた。


「サイコ・コンプレッション」


 物陰に隠れたゴローがそう言い放つと、ガーゴイル3匹は空中で突然肉塊と化し地へと落下していった。

 超能力も言葉を放ちながらだと威力が上がることもわかった。言わなくても発動するが威力がかなり違うし、調整は手を使うことで細かく出来ることもわかった。

 日本語でもいいが、どうせならと英語で放つ。


「え?誰がやったんだ?しかも3匹をあっという間に………………」


 ザワザワザワザワ


 騎士団や野次馬たちがざわついている間にその場を立ち去る。


“まあ、魔族さんには悪いけど学校終わるまで待ってね ”


 その時、冒険者と思われる女性1人とすれ違った。その女性は立ち止まり一言。


「え?五郎?まさかね」


 ゴローはそれには気づかずに必要な物を買い込んで村へと帰っていった。

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