第13話 魔法

「魔法を覚えよう!」


 そう思い立ったのは超能力に混ぜれば色々と戦闘の幅を広げられないかという思いつきだった。とりあえず覚えておいて損はないということだが、問題はどこで覚えられるんだ?という疑問だ。


「誰か魔法使えない?」


 住民に聞いてみるが誰もわからないらしい。エルフは風を中心に魔法が使えるらしいが解放した亜人にエルフはいなかった、売れ筋商品らしくすぐ売れてしまうのだそうだ。


「ギルドで聞くしかないか」


 ゴローはギルドへと向かうことにした。超能力のほうの扱いは大体把握できたがレパートリーが少ない、その内相性の悪い相手も出てくるだろう。

 特に魔人は超能力に似た力を持つらしいので用心に越したことはない。


「魔法ですか?初級程度であれば魔法書で取得は可能ですが、適正がないと初級すら覚えられません」


「適正はどうやってわかるんですか?」


「お調べできますが料金がかかりますよ」


「それじゃお願いします」


「はい、かしこまりました」


 2階にある一室で魔法使いらしき職員が出迎えてくれた。名前はマリン、20くらいに見える若く可愛らしい女性だ。


「ではこの水晶玉に手をあてて下さい」


 言われるがまま水晶玉に手をあてると光出した。


「ゴローさんはレベル47でしたか?」


「そうみたいですね」


「魔法力は並ですが、何か不思議な光りかたをするのは何故でしょう?」


 どうやら人とは何かが違うらしいがゴローにはわかるはずもないし、馬鹿正直に超能力のことを言う訳もなく。


「さあ?魔法自体知らないので」


「適正のほうは初級であれば火、風、水、土、雷の基本魔法は全て覚えることは出来そうですね」


「ふむふむ、基本というと違う魔法もあると?」


「治癒などは聖職者でないとまず無理ですね、支援魔法は魔法書のみで覚えられます」


「ふむふむ」


 治癒は神の加護がないとかどうとか言っていたが胡散臭いことこの上ない。自分は無神論者なので神の存在など信じないし、利権絡みで教会でしか覚えられないようにしているとしか思えなかった。


「ありがとうございます、で?魔法書はどこで買えますか?」


「いえ、一般には出回っていませんし教えてもらわないと使えませんよ」


「あれ?そうなんですね、どこで教えてもらえるんですか?」


「魔法学校初等科へ行かないといけません」


「えー!学校?」


 まさかこの歳で学校とは予想していなかった。


「学校と言っても初等科であれば早い人であれば半年で卒業できます」


“ギルドの説明も雑だな、魔法書だけで覚えられるって学校で教わっての話か。これも利権が絡んでそうだな、魔法ってのがどんなもんか知らないけど。

 でも覚えて村の人達に教えられれば防衛にも役立つし仕方ない”


「どうしますか?手続きはこちらで出来ますけど」


「はあ、それでお願いします」


 そんな訳で学校に行くことになってしまったゴロー。村がまだ人間に発見されていないうちに済まそうと思いもあり、1週間後にはもう入学いう流れとなった。



 そして1週間後。


「まさか学校に行くとはね」


「ゴロー学校頑張ってね!」


 ジャスミンの激励に応えるゴロー。


「留守の間に危ないことしないようにね、お昼にまた戻ってくるから」


「うん!いってらっしゃい〜」


 初等科学校に制服はない、中等科から本格的になるらしい。初等科は毎日のように入学する人と卒業する人がいるらしく、そこまで難しくはないようだ。


“とりあえず覚えてみないことには応用もへったくれもないしね ”


 そんなこんなで学校通いの生活が始まる。


「おいおい、子供ばっかじゃん。俺だけだよ大人、しかもおっさんって」


 初等科と言ってもそれなりに金を取られた。そこそこの家柄や商人でなければきついだろう、ましてや亜人がそれだけの金を用意出来るはずもない。


“亜人達が誰も魔法使えないのは金の問題もあるだろうけど、差別があるんじゃ学校にも通わせてはくれないだろうな ”


 学科の授業は眠くて仕方がなかった。契約がどうのこうの言ってるけど 誰とするのか今日は言わないようだ。ダラダラと意味があるのかないのかわからないことを話し続けていた。


“こりゃしばらく学科のみっぽいな、あんまり早く卒業されると金にならないから? ”


 初等科学校では入学金とは別に月ごとに支払わないといけない。


 退屈だ。


 無駄な時間と感じつつも通い続けるゴロー、そして1ヶ月後にやっと実技が始まる。


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