第12話 近代都市
今日もせっせと石灰を採掘しているゴロー。なんのためかというとセメントを作り鉄筋コンクリートの建物を造るためだ。わざわざこの世界の建物に合わせる必要はない、将来的にここを攻められることも考えた結果だ。
10人ほど連れて来て手伝ってもらいながらゴローは村へとピストン輸送、あとは村で灰汁を精製してもらう。
コンクリートというのは古代ローマでも使われていたもので材料は簡単に集まる。とにかく大変なのは量なのでしばらくはこの作業だ。
畑の方は元々亜人は自給自足なので心配はしていない、種と種芋さえ用意しておけば言わずともやってくれている。
その作業もしつつゴローはあちこちの奴隷商を襲い亜人たちを解放し村へと招き、その規模を徐々に大きくしていた。
忽然と現れ忽然と消え、主要な人間は消えてもらっているため街では未だに犯人が掴めないでいた。
「くそ!糸口さえ掴めん!一体誰の仕業なのだ!」
そう叫んでいるのはこの事件の担当となった第5騎士団長のキースだ。
「護衛と監視にあたっている騎士まで消えるとは、相手は相当な手練なのか」
「消えた者たちも決して弱い訳ではありませんからね、その者が全く抵抗出来なかっとなると…………」
その話すのは副団長のアルスデット、キースと共にこの事件の解明に従事していた。
「争った跡さえなく証拠となる物も残さず、あれだけの亜人を誰にも気付かれずに連れ出すなど人間技ではない」
「その通り、人間の仕業ではないのでは?」
「ふむ、そうなると魔族か?亜人を連れ出して何をする気なのか」
「亜人も我々人族より身体能力が高いので戦力と見れば可能性も無きにしも非ずと言ったところでしょうか」
「しかし、戦力ならば魔物を飼い慣らしたほうが良い気もするが………………その線も思慮の余地があるな」
しかし、いくら考えても予測でしかなく手がかりさえ見つからない現状は変わらず、それから何度も事件は起こっていた。
3ヶ月ほど経った頃、村は拡大を続けコンクリートの打ちっぱなしのような建物が何十軒と見られるようになった。広大な畑も実をつけ十分な食料も確保できたようで、冬の支度も着々と備えつつあった。
「あとは衣服が問題だな」
ゴローが危惧していたのは冬を乗り越えるための衣服だ。村人も1000人を越えた今となっては街で調達するには無理があった。
「みんなは冬の服はどうしてたの?」
ゴローが住民に聞いてみると。
「獣を狩ってその毛皮を加工して着ていました」
「なるほど毛皮かあ、魔物でもいいの?」
「毛の生えた魔物なら使えますね、私たちでは狩れませんが」
“ マタギとか熊の毛皮とかかぶってたな、よし熊狩ろう熊”
毛深い熊となれば寒い地域に行かなければならない、なので以前行ったことのある北の大森林近くまで転移することにした。
「おお、懐かしいな」
空を飛びながらザランの街を上空から観察する。
「あら?なんか城壁は崩れてるし建物も破壊されてるけど…………」
更に近づいてみると。
「どう見ても落ちてるな、また魔族が攻めて来てたのか」
ザランの街は魔族に占領されていたようで、街中に人間の姿はなく魔族と思われる人外の者が溢れていた。
「ありゃりゃ、結局耐えられなかったのか俺見つかったらまずいな、さっさと狩って帰ろ」
ゴローはそのまま北の大森林へと向かい身の丈6mはあろう熊の魔物を10頭ほど狩り村へと帰還した。
村人が目を点にして熊の亡骸を見つめているのも気にせずゴローは。
「これで足りるかな?足りなければまだ狩ってくるけど」
「えっと、そうですね…………加工しないとなんとも言えませんが」
「足りなかったら狩りに行けばいいか、肉は食べればいいしね、美味しいのかな?」
「どうでしょう?こんな強い魔物食べたことないので」
村人総出で解体作業に取りかかったが大まかな力作業はゴローがこなし、細かい部分は村人に任せた。村人もゴローの超能力にいちいち驚かなくなっていた。
それから更に2ヶ月もすると空気冷たく感じる季節になってきた。十分な住居に食料、毛皮も村人全員に行き渡る数を確保し冬支度の準備は出来たようだ。
この時代の冬は現代と違い乗り越えるのは命懸けだ。作物も育たず飢えと寒さで死に至るなんてことは普通のことだ。
しかしこの村は違う、密閉性の高い鉄筋コンクリート造りの家に十分な食料、寒さを凌ぐための毛皮に暖房器具。一酸化炭素中毒と火事の危険もあるため暖炉ではなく薪ストーブを制作し各建物に備え付けてある、勿論煙突付きで。
しかしやることは尽きない、人が増えれば当然悪さをする者もいるので衛兵も必要、留守中に攻められても耐えれるように兵士も必要だ。
魔族と人間を戦わせて両方の勢力を削る戦略も考え実行しないといけない。その間にここの勢力を大きくし第3の勢力としての地位を確立する。そこまでしたら後は任せて自分はアパート経営でもしながら家賃収入でスローライフという考えではあったが。
「はあ、道のりは長いな」
ゴローはため息混じりにそうは言ったが内心は楽しんでいるようであった。
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