第5話 Aランクパーティー
本日、五郎がEランクに昇格しギルドで手続きを行っている時。
ザワザワ
いかにも高価な武器と防具を装備したパーティーがギルドに入ってきた。男が2人と女が2人の4人パーティーだ。
“ なんだろ?まあ誰だろうと俺には関係ないし、さっさと宿に行って祝杯をあげよう”
魔法使いらしい服装の女と一瞬目が合ったがとくに気にせずギルドを後にした。
ビルドが受付で
「あ!くそ、五郎のやつ帰っちまったか、まあ明日でいいか」
何やら目立ちたくない五郎にとっては碌でもない用事なのは明白だ。
五郎の方はというと、宿屋の食堂でささやかながら普段は飲まない、いや飲めない酒と食事を楽しんでいた。
「ぷはー!うまい!武器と防具買わないといけないから普段は飲めないけど今日くらいはいいでしょ、ゴクゴク」
そうは思っていても小銭を取り出し確認している。相変わらず生活はカツカツで余裕などまるでない。
食事を済まし部屋に入り色々考えようとはするが、とにかく金がないと何も始まらない。
「Eランクなら稼げるんだろうか?魔物相手なら遠慮なく力を試せるんだけどな」
さっさと寝た。
翌日も朝早くからギルドへと向かいクエストボードを眺めていると。
「おはよう五郎!」
声をかけてきたのはビルドだ、いやな予感しかしない。
「おはようございます、何か用ですか?」
「お前鑑定してないからレベルもスキルも何も知らないだろ?」
「鑑定?必要なんですか?」
「普通は新規の時にやるもんなんだが、あの時は驚いて忘れてたんだ」
受付脇にある水晶玉で何やらわかるらしい、まあこれもド定番だけど。そこからわかったのことは。
「レベルが1って…………戦ったことないんですね」
「薬草採取しかしてませんしね」
「キラビットにも遭遇しなかったんですか?」
キラビットは目つきの悪いうさぎのような魔物の名前だ。
「なんですかそれ?」
「まあ、いいでしょう、それより魔力が表示されないのはなんでかしら?あなた魔法は使える?」
「いえ、むしろ見たこともないです」
「見たことないってどういうことかしら?どういう生活を………………まあそれもいいでしょう。スキルもなしっと…………」
面倒になったらしく対応が雑だ。記入が終わった頃にまたビルドに声をかけられる。
「終わったか?どれどれ…………レベル1?」
記入された紙を見てビルドが驚いた顔でこちらを向く。
「お前ザコすら倒したことないのか?」
「戦闘すらビルドさんが初めてですよ」
「てことは戦闘経験0のレベル1に俺は負けたってことか………………ハハハハ」
“ うわぁ、まずいなこれは。カードほしさにあまり考えないでやったからなあ。ビルドさんって試験官するくらいだから弱いわけじゃないだろうし”
「えっと鑑定は終わりですよね!では薬草採取行くんで失礼します!」
ピュー!
「あ!おい!まだ用事が………………って速いな」
またも重力が軽いことも忘れてすっ飛んでいく五郎。そういうのが目立ってるとも知らずに。
「ふう、詮索されると色々ボロが出そうださしさっさと退散だ」
五郎にキラビットが襲ってこないのも五郎が強者だと感じているからで、他の低レベルの魔物も五郎を避けている。
プチプチプチプチ
「薬草採取は楽しいな〜」
近くの街道に1つのパーティーが通りかかる、昨日見たAランクパーティーだった。その装備を見れば格が違うのは一目瞭然だ。
「戦闘かあ、ランクも上がったしそういうクエスト受けれるようになるのかな、あれ?」
そのAランクパーティーは道をそれてこちらに向かってくる。周りを見ても自分しかいない、明らかに五郎を目指している。
「え?なんで?」
五郎の元までくるとパーティーリーダーらしき若いイケメンくんが声をかけてきた。
「あんたが五郎かい?」
“ ムッ!年上に対して失礼な言い方、ってこっちだとタメ語使えって言われてたっけ。これが普通なんだろうな。それなら……”
「そうだけど?何か用でも?」
何やら4人全員で品定めをするような目つきで見られ
「あんた本当にビルドさん倒したのか?」
「倒してはいないかな?武器を壊しただけだし」
「それでもビルドさんに負けを認めさせたんだよなあ…………うーん、全然そうは見えない」
「ところで君の名前は?」
「ああ、悪い悪い俺の名前はアレックス、この蒼の流星ってパーティーリーダーをやってる」
「私はウィザードのシャルロットよ」
「俺は重騎士のガリアードだ!ガハハ」
「私は神官のミリアと申します」
“ ガリアード以外は若いな、どう見ても10代でシャルロットとミリアは高校生くらいか”
「えっと、それで用事は?」
「ビルドさんに頼まれて手合わせしてくれってな」
「はあ?君はAランクだろ?なんで俺が?」
「俺もそう思うけどビルドさんの頼みだから断れない」
ビルドは古参の元Aランク冒険者であり、このアレックスの面倒も見たことがある。ビルドは、負けたのは自分の力が思っていたよりも衰えているからなのかわからなかった。なのでアレックスにも戦わせて五郎の力量を計ろうとしていた。
シャルロットが
「あなた剣士って聞いたけど、本当に剣士なの?」
「え!ええ、そうだけど、何か?」
「ふーん、魔力とはちょっと違う不思議な力を感じるのよね、しかも強大な」
「そんなの勘違いだよ!アハハ」
“ ひえー!この子勘がいいのか?超能力のことバレてる訳じゃなさそうだけど、さっさと手合わせして終わらせた方がいいかな”
「ビルドさんの頼みなら仕方ない、ギルド戻る?」
「ここで軽くでいいけど…………剣は?」
「持ってない」
「クエスト受けてんのに剣装備してないのか?」
「持ってないんだよ、金がないから、今貯金してるとこ」
「はあ………………予備持ってないしギルド行くか」
そうしてギルドへ向かう一行。
更に目立つことになろうとは、この時は思いもしなかった五郎。
そして遠くから足音が近づいていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます