第4話 始動
「ふう、疲れた」
宿を取り部屋のベットに座る五郎。
「さて色々あったけど状況整理をしよう」
まずは念力を試すと、ただ念じるより手をかざしながら念じるほうが微調整が出来ることがわかった。
「手でいじるイメージか、指でつまむとかの微調整も出来るし多分出力も上がる気がする」
このイメージの仕方は魔法とほぼ同じだ、魔法は契約と魔法陣が必要だが五郎には必要ない。無詠唱の魔法みたいなものだ。
「あとはどうやって生活するかだけどそれにはやっぱりお金だよな、どうやって稼ごうか。目立たず稼ぐ………………」
商売するにも元手が必要。知人も友人も親類もいない天涯孤独の身で頼る人もいない。
「やっぱり冒険者しかないか、しかもソロで。この力があればそこそこいけるだろうし他にあてはないし」
その他の超能力も試すと探知や透視なども出来るようだ。念話は相手がいないので試せないし信用のある人にしか教えられない。透視はエロいことに使えるが倫理上必要な時以外は使わない。ジロジロ見ていたら目立つだろう。
「武器も防具もないと目立つよなあ、受付の女性に止められそうだし、手持ちで買えるかなあ?とりあえず今日はもう寝よ。色々ありすぎて頭回らないし」
五郎はこの世界に来て初めてベットで眠った。
翌朝
「ふわぁ〜あ、知らない天井だ」
そんなベタなことを言いながらも出かける準備をする。と言っても荷物は何もないので服を着るだけだ。
「着替えも買わないとなあ、3日洗ってない服とかヤバい」
クンクン
服を嗅ぐといい感じの臭いが鼻についた。
「うぷ!さすがにキテるな、これで人混みの中行きたくない。臭いのも目立つし」
宿を出ると目の前がギルドだ、すでに大勢の冒険者が出入りしている。五郎のランクは最低のF、クエストもそのランクの1つ上のものしか受けられない。
ギルドの中へ入りクエストボードに受けれるクエストがないか探していると。
「お、来たな新人!」
声をかけてきたのはビルドだ、相変わらずでかい。
「おはようございます」
「だからその言葉使いやめろって、タメ語でいいんだよタメ語で」
「いやあ、いきなりだと話しづらいんで、そのうちそうしますよ」
「まあ、自分が良ければいいんだがな、それよりクエスト受けたいのか?」
「はい、初めてなんでよくわからないんですけどね」
「ならパーティーにしろ、俺が世話してやるぞ?」
「ダダ、ダメです!ソロで行きますソロで!」
「ん?ソロじゃ受けれるクエストなんてたかが知れてるぞ?」
「それでもソロがいいんです」
「人見知りするやつなのか?まあそれなら仕方ないが、Fランクでソロなら薬草採取やら街の雑用くらいだな」
「とりあえずそれでいいです、慣れてきたら考えます」
「そうか、惜しいなお前の実力ならCランクもこなせると思ったんだが」
「買いかぶりすぎですよ、戦闘なんかしたこともないんですから」
「それで俺を打ち負かしたのか…………自信なくすぜ」
それを聞いていた1人の冒険者。
「え!ビルドさんが負けた?誰に?」
「ああ、剣を真っ二つに斬られて終わりさ、折れたんじゃなく斬られたんだこの大型新人にな」
「ええ!剣を斬った?こいつが?」
ぎゃあ!目立つって!なんでそんな大袈裟に言うんだ。
「え、ええと、じゃあクエスト受けて来ますね、それじゃ」
逃げるようにその場を去ると。
「お、おい!行っちまった、まだ話があったんだが帰って来てから酒にでも誘うか」
「あれ、ビルドさんが奢るなんて雨が降るかな?」
「ギルドの給料は安いんだよ」
「しかし随分入れ込んでるみたいですね、あの新人に」
「あいつの実力はあんなもんじゃないはずだ、俺の感だがな」
目立ちたくない五郎だが、日を追う事に目立つ存在となっていくのを五郎はまだ知らない。
薬草採取のクエストを受け外に出てきた五郎だが。
「薬草がわからない!薬草1つ買っていくか」
出店で薬草を1つ買い採取場所へと移動する、街から1kmほどなのですぐだ。
「おお!一面の緑だ!風も気持ちいいな。さてさて初クエスト頑張りますか」
プチプチプチプチ
せっせと買ってきた薬草と照らし合わせながら採取していく。
「これは葉がギザギザだから薬草モドキだな」
受注書には見分け方が書いてあった。薬草はギザギザがなく滑らかな葉だ。
フンフフンフフーン♪
自然と鼻歌も出るほど充実しているようだ。この世界ではビクビク怯えることもなく、追手も来ないし煩わしいサラリーマン生活もない。自然と戯れ頑張った分だけ自分の収入になるのだ、スローライフの片鱗を味わう五郎。
「楽しいなあ、こういう生活でいいんだよ普通に目立たずスローライフ!」
プチプチプチプチ
「とりあえずこんなもんかな?いくらになるんだろ?」
薬草を10を1束として報酬は銅貨100枚、現代にすると千円ほどだ。こちらではパン1つが銅貨10枚なので大体それくらいだ。
薬草が100ほどなので10束で1万、日給1万ならバイトと同じくらいか。
「まあ、ランクが上がれば報酬のいいクエストも受けれるし、今はこれでいいや。しかもまだ昼をちょっと過ぎたくらいだし時給にしたら結構高いほうだ」
スキップしながら街へ戻りギルドへ報告する。昨日とは違う受付の女性が対応する。
「初クエストご苦労さまでした、あら随分丁寧に採取してくれたんですね、これなら満額出ますよ」
「減ることがあるんですか?」
「ええ、雑な方は傷だらけの物を持ち込むんですよ、使い物にならないのは報酬に反映されません」
そう言って銀貨1枚を差し出してきた。
銅貨1000で銀貨が1枚なので銀貨は1万単位だ。
「ありがとうございます」
“よし!現金ゲットだ!服買えるかな?手持ちの銅貨銀貨合わせて3万くらいあるけど全部使うわけにもいかないし ”
服屋に行くが意外と高い、上下で銀貨1枚ほどしたが必要経費ということで涙を飲む。
「贅沢は出来ないけどこれでいいんだ、明日も頑張ろ!」
そんな生活が2週間も過ぎた頃ランクが上がったが、そこから思いもよらぬ方向へ進むなど思いもしなかった五郎だった。
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