第拾壱話『私の音色(うた)を聴け!』

 まず初めに謝っておきたい。僕はこの方の事をほとんど知らない。そんな状態で『紹介文』を書こうという愚行ぐこう。でも書きたくなったのだから仕方が無い。

 何故書きたくなったのか?それだけでいける気さえする。こちらの一方的な想いを書くのだから、今回もに近いかも知れない。


『ж 蜻蛉かげろう-kagerou-』

 フルート演奏者である。過去のアーカイブを少しのぞいてみると、少し昔には雑談と演奏を織り交ぜた配信もされていた様だが、基本CASTでフルートの音を奏でるのが彼女のSPOON活動らしい。

 僕が彼女を知ったのは、また話に上がる『劇団もどき』の初回公演である。終劇の後、メンバーの紹介があり、その中でしゃべっているフルートがいましたよね?と、いうくだりがあった。


「しゃべるフルート!?」


 と、興味こそ湧いたものの日々の生活に忙殺ぼうさつされてあまり詳しくは調べなかった。

 さらに恥の上塗りは続く。いずれ近いうちに劇団もどきの事は書こうと決めている。そこで気になった出演者を紹介していこうと思い、蜻蛉のターンで立ち止まる。


「そもそも、あの人って女性?」


 本当にそんな知識量しかなかった。アイコンもなんだか中性的(いや、分かるよ見れば<え、どこを?>)なので、流石にこれはいけないと思い、アーカイブをあさりにあさって、声を聴いてホッとした次第である。

 では何故彼女の事を書ける気になったのかと言えば、最新のCAST『Shape of You/Flute』とそのCASTへの想いをつづった本人のツイートに心打たれたからである。


 僕は、こうして書いてる訳だけが、きたい欲求が昔からある。文章を読むのは好きだが、所詮自分も漫画・アニメが好きな人間であるので、自分の小説を書く際には事を意識しているつもりである。

 同じ想いを彼女のCASTを聴いて思い知ったのだ。


 ボーカルがいる歌であれば、どうしても裏方に回るのが楽器のつとめ。裏方と言っても、せるところは勿論もちろんある。だが歌声が表舞台だというのは、周知の事であり、裏方に回る楽器はまさにごとし。

 だからとても言い得て妙な名前だと思っていたのだが、実は彼女、虫が好きで名前を蜻蛉とんぼ蜻蛉かげろうにしようか少々悩み、とんぼは可愛げがないかなあという理由で蜻蛉かげろうにしたそうなので、別に裏に回ろうとした訳ではなかった。


「歌う様にフルートを演奏したい」


 これが彼女の演者としての全てと言っても差し支えないと思う。あえて自分の歌声ではなく、フルートで歌をかなでる。フルートは演者の能力で主役もはれる楽器。ほぼ全ての演奏CASTがそれを雄弁ゆうべんに物語っている。音感ゼロの自分でさえ、彼女は事がわかる。

 そして最新作のShape of You/Fluteは、その意識を形にした今出来る集大成と、自身が語る通りの出来栄えとなっている。


 描きたいのに描けない僕と比べるのは、あまりに失礼な話だが、歌を音にして、聞き手の想像にゆだねるその手法に共感したのだ。

 そのセッションは、歌を超え、蜻蛉かげろうは、蜻蛉とんぼに姿を変えて、大きな羽を広げて誰よりも高い大空を舞う。


 蜻蛉の声が聴けるCASTは非常にまれだ。しかし配信中の彼女はとてもおしゃべりでかつ、驚く程、腰が低い。だからリスナー達に愛されているのだろう。


 さらに彼女は大変感受性が豊かであり『オトラジオ5#20』私の心に残る一曲のエピソードの中で、それがうかがい知れる。

 歌手『あたり孝介こうすけ』の『花』という曲のバックバンド奏者に選ばれた時の事だ。初回練習演奏の際に、ピアノ演奏とボーカルだけの冒頭を聴いた彼女は泣いてしまったそうだ。


 演奏家としての彼女の活躍、それはSPOONの中でも遺憾いかんなく

(いや、今書きながらCAST検索していましたよ・・だからしたって意味合いです)

 『Solaris』のラジオ番組『窓辺のベストフレンド』のテーマソング『Your Best Friend(FI)』もう終わってしまったのだが、朝の番組として実に爽やかな演奏で憂鬱な朝を素敵なものに変えてくれた。

 『エルサンク』主催の『アニスプライブ』の中では演奏なのに歌い手として『U』(竜とそばかすの姫)を『ふゆ』の素敵な定期と共に披露した。

(これ直前の『まねもとウルフ』までLIVEいたのよ。今、CASTひっくり返してようやく見つけて泣いてます。いいですか?1:21:00ですよ、皆さん)

 『ふわり』主催のCAST企画『すぷマガ』では『#401 えんというもの』でゲスト参加し、亡くしてしまった友人の話や、SPOONを通じて知り合った大切なご縁を語り、最後に『松任谷由実まつとうやゆみ』の『春よ、来い』を演奏して〆ている。

 自分の様な浅い蜻蛉ファンでもこれだけ見つかる位なので、こんなもんではすまないのであろう(いや、付け焼刃で本当にごめんなさい)


 最後にオトラジオの中で彼女が語った以下の言葉で〆たいと思う。


「私達、管楽器奏者は、歌手の様に言葉を紡ぎながら音楽を奏でる事は出来ません。やはり歌というものには、人に深い感銘を強い力があると私は思います。しかし楽器演奏が歌に劣るとは微塵も思いません。私達は言葉を繋がない分、さらに音楽に想いを乗せて演奏をするだけです」


 歌を心から愛しつつも、演奏家としてのプライドは決して曲げない。だからこれからも、彼女は歌を奏で続けるであろう。

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