第83話 制作順
転移アイテム製作の為のエネルギーは、1週間程で溜まる。
その速度から、戦争の激しさが伺われた。
制作したアイテムは
見た目はショボいが、れっきとした転移アイテムである。
「この
夫婦石は使いきりのアイテムなので、一度使うと石は砕けてしまう。
大きさは雌石の方が雄石より一回り程大きいが、それで握りこぶし程度なので、持ち運ぶのに支障の出ないサイズとなっている。
これを護衛さんの恩人に持たせてさえおけば、いつでも駆け付ける事が出来るだろう。
俺は用意した夫婦石2セットを、護衛さんに渡す。
もう1セットは、駆け付けた際、どうしようもない状況だった場合の脱出用だ。
転移は発動半径2メートルの範囲タイプなので、護衛さんだけでなく恩人も一緒に脱出する事が可能となっている。
「感謝する」
「いえいえ、お気に……いや、お気にしてください!」
良い風を装う事などしない。
俺は常に自分に正直真っすぐだ!
「分かっている。借りは必ず返す」
「期待してまーす」
「……」
あ、押し黙った。
相変わらず硬い人だぜ。
「石を渡す為、私は数日ここから離れる。その間、お嬢様の事を頼んだぞ」
「心配しなくても、今のクレアなら自分の身は自分で守れますよ」
そもそも、迷宮でルーチンワークするだけだからな。
危険な事など何もない。
「ふ、そうだな。では行って来る」
そう言うと護衛さんは、部屋の窓から出ていった。
相変わらず忍者みたいな人だ。
「さて、次は頭装備の見通すモノクルで決定として……」
この街でなら、戦争の影響でガンガン死のエネルギーが集まって来る。
お蔭で装備やアイテムを作り放題だ。
いやまあ、人の死を喜ぶみたいであれだが……
「ローブと靴はボスドロップの方がいいよな……」
その二つはデスクラフトで制作するより、
各迷宮の200階層にあるワープクリスタルから飛ぶ事の出来る、上位ダンジョンだ。
全50階層からなるダンジョンの難易度は、迷宮と一線を画す。
何せ出て来る魔物のレベルは、全部200オーバーだからな。
当然階層ボスも、ドラゴンなんかとは比べ物にならないほど強い。
まあ今の俺なら20階層のボス位までなら狩れるとは思うが、
1階層のスタート地点と、50階層の最終ボス部屋の直前のみだ。
途中の出入りが出来ない以上、踏破できなければ歩いて引き返す羽目になる。
それだとひたすら効率が悪いので、49階層まで突破できるようになってから
因みに、50階層のボスの名は冥竜帝。
レジェンド装備を落とす、いわゆる極限ボスである。
こいつが一番最初のターゲットな訳だが、当然今の俺では手が出ない。
最低でも、レベルはカンストさせないと。
「まあ……
冥竜帝はともかく、それまでのボスは別に俺一人で倒す必要はない。
クレアを強化しておけば、周回もしやすくなる事だろう。
「そういや、アイシスもバトルドレスが欲しいとかほざいてたな」
バトルドレス。
上下一体型の装備で、一言でいうならチャイナドレスっぽい装備だ。
装備できるのは女性のみで、高い属性耐性を持ち、筋力と敏捷性が大きく上がる武闘家・武僧用の装備になっている。
これと対となる装備として、男性専用のバトルスーツ――拳法着みたいなのもあるが……
まあそれはどうでもいいか。
「一回サクッと断ったが、
武僧はかなりの高火力が期待出来るからな。
ボス連中はかなりタフなので、火力は高ければ高い程楽に周回できるという物。
ただアイシスを連れて行くとなると、聖なる剣の魔宝玉集めが疎かになりかねないという問題が出て来るのだが……
ま、レベルさえ上がれば彼女抜きでもどうにでもなるか。
どうせすぐに向かう訳でなし。
周回を始める頃には、他の聖なる剣の面子のレベルもそこそこ上がっている事だろう。
「取り敢えず。モノクル。クレア用のガントレット。アイシス用のバトルドレスの順で作るとするか」
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