第41話 弓兵

俺はオーガを狩る為、以前護衛さんと訪れた平原へとやって来ていた。

今回はクレアとだ。


前来た時は護衛さんにオーガを狩ってもらい、安全を確保してからヒーリング・デスフラワーをパラライズソードで嵌め倒している。

だが今回はその逆だ。


俺がオーガとガチンコ勝負を行い。

クレアには、邪魔なヒーリング・デスフラワーの方を狩ってもらうつもりである。。

回復が飛んできたら面倒くさいからな。


「いた……」


双眼鏡でオーガを発見する。


「ちょっと緊張するな」


オーガのレベルは180だが、レベル200以下では最強のフィジカルを備えている。

そのためかなり強敵だ。

ハッキリ言って、ヒーリング・デスフラワーを無慈悲なる搾取テイクバイフォースで吸収した状態じゃ、死霊術師の剣を装備しても厳しい。


その状態で無理くり挑戦するのか?


んなわきゃねぇ。

ステータスが足りないなら、ヒーリング・デスフラワー以外を吸収すれば済むだけの話。

当然、その為の下僕も用意してある。


ブラッドウルフ。

体長四メートルを超す、巨体の狼だ

名前の由来は真っ赤な毛並みと、凶暴性を秘めた赤い瞳から来ている。


レベルは150と、正直そこまで高くはない。

だが完全な戦闘タイプなので、その筋力や敏捷性はかなり高めだ。

お陰で、こいつを狩るのにも少々苦労させられている。


ま、とにかくだ。

下僕化したブラッドウルフを吸収すれば、フィジカルお化けのオーガ相手にも十分対抗できる。


「クレア。作戦通り頼むぞ」


クレアにはまず、魔法剣でお供のヒーリング・デスフラワーを瞬殺してもらう。

回復魔法が横から飛んでくると、戦闘が無駄に長引くからな。

その後は、分身と魔法剣を発動した状態で待機して貰う。


――クレアに攻撃態勢で待機してもらうのは、万一の保険のためである。


今の俺のステータスは、ブラッドウルフ吸収と死霊術師の剣の効果で、オーガとほぼ互角と言った所だ。

そのまま戦えば、どちらに軍配が上がるか分からない。


だが此方には、八体の下僕からの回復魔法がある。

回復の有無は大きいので、この条件なら俺が負ける心配はかなり薄い。


とは言え、何が起こるか分からないのが世の中だからな。

だからクレアには、最悪の場合の保険を努めて貰うのだ。


「一つ確認していいかしら?」


クレアが急に背を向けたかと思うと――


「花を始末するのはいいけど――別に、オーガを倒してしまっても構わないのでしょ?」


――ドヤ顔で振り返った。

まあ実際はフードを目深にかぶっているので顔は見えていえないのだが、多分間違いない。


「クレア……ああ、遠慮は――ってなるか!いいから作戦通りしろ!」


ちょっと乗りそうになってしまったが、ちゃんと突っ込んでおく。


この世界の有名な伝奇小説の中に出て来る弓兵が、今クレアが口にしたのと似たようなセリフを口にするシーンがある。

今のは完全にそのパクリだ。


「そう、ならば期待に応えるとしましょう」


あ、こいつ。

ちゃんと突っ込んだのに、最後までやり切りやがった。

どんな鋼の精神してるんだよ。


まあ流石にごっこだけで、本当にオーガを倒したりはしないだろう。


さて、それじゃあオーガ退治と行きますか。

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