第37話 幸運の女神
クレアのサブサブクラスも決まり、宿に戻った俺はベッドに身を投げる。
そして天井を見上げて呟いた。
「さて、次だが……」
取り敢えず、最初のステップは超えた。
次の目標はレベル210にするか、死霊の剣を作る為の素材集めだ。
レベルを210にすれば、
2に上がったらどうなるの?
簡単な事さ。
接収できる‟下僕が2体に増える”だけ。
以上!
因みに、レベルの上限は4だ。
230で3に上がり、250で4になる。
弱体化しているとはいえ、魔物4体分のステータスが吸収できる訳だから、その強烈さは言わなくとも分かるだろう。
ビバ!最強クラス!
片や死霊の剣の効果だが――
支配下にある死霊のステータスが50%アップ。
筋力の50%分だけ、自身の全ステータスが上がる。
――という物。
効果は二つしかないが、どちらもシンプルに強力だった。
当然上がった分の配下のステータスは、吸収時にも反映される。
重要度で言うなら、剣に若干軍配が上がる感じだな。
ただレベル上げと違って、こっちは本格的な戦闘が必要になって来る。
Sランクの魔宝玉の入手経路は――
フィールドやダンジョン系の、大型ボスからの入手。
迷宮と呼ばれる特殊なダンジョンの、150階層以降の宝箱。
迷宮200階層以降の、階層ボスのドロップ。
――以上の三つとなる。
この中だと、大型ボスからの入手は選択肢から消える。
現状では、どう考えても討伐不能だからだ。
一応剣無しでも、弱めの奴ならレベル230――下僕の3体吸収で倒せなくもないが……他に入手経路が無いならともかく、もっと楽な方法があるからなぁ。
残り二つだが――
迷宮の宝箱からからの入手は、超低確率となっている。
正直、こっちは出たらラッキー程度で期待はかなり薄い。
本命は199階層以降の、エリアボスのドロップだ。
こいつも結構強いが、流石に大型ボス程ではないからな。
下準備をキッチリ整えれば、十分倒せる範囲と言えるだろう。
「ただ、ゲームとは違うんだよなぁ」
ゲームならダメージを受けてもHPが減るだけで、痛みなんかは感じない。
そのため、常に集中して最高のパフォーマンスで戦う事が出来た。
だが、現実だとそう言う訳にもいかない。
痛みや疲労は、確実に此方の動きを鈍らせてしまう。
そうなって来ると、勝てる戦いを落とす可能性も出て来る。
そしてこの世界における死は――ゲームオーバーだ。
「ゲームで倒せるレベルだからって、このレベルで挑むのはやっぱ無謀だよな」
出来れば余裕が欲しい。
「クレアが参加するならその心配は無いんだが……まあ、それはちょっとな」
クレアの事を、俺は戦力に数えていなかった。
護衛さんの事もある。
だがそれを抜きにしても、箱入り育ちの彼女をリスクの高い実戦に投入するという行為自体に、俺にはためらいがあった。
アホの子とは言え、いいとこのお嬢さんを命懸けで戦わせるのは気が引けるんだよなぁ……。
「ま、210に上げるのが先か。流石にスキルレベルが2になれば、負ける心配は無いだろうし」
何事も安全第一だ。
さあ、レベル上げ頑張るぞ!。
そんなプランを考えていたのだが、その晩、護衛さんがやって来て――
「報酬だ」
彼は俺に革袋を手渡した。
「なんです?これ?」
「お前に必要な物だ」
必要な物?
心の中で疑問符を浮かべながらも、俺は手渡された革袋をの口を開けて中を確認する。
「――っ!?」
そこには、仄かに紫色に輝くSランクの宝玉が入っていた。
それも、死霊術師の剣の製作に必要な数以上に。
「うほほぅ!闇の牙さん愛してるぅ!」
「気持ち悪い事をいうな」
思わずテンションが上がってちょっとした冗談を言ったら、心底気持ち悪いといった感じの視線を向けられてしまった。
どうやら彼は照れ屋さんの様だ。
「貴様に無茶を言うつもりはないが、それだけの報酬を用意したのだ。それ相応の働きを期待してるぞ」
働きってのは、勿論クレアに対する行動全般の事だろう。
まあ心配しなくとも、彼女に大怪我をさせる様な真似はしない。
手伝わせるにしても、基本安全な雑魚戦ぐらいだ。
「あ、出来たらもっといっぱい色々貰えると有難いんですけど」
「調子に乗るな」
折角なのでと追加を頼んだら、すげなく断られてしまった。
護衛さんはもう用は無いと言わんばかりに、そのまま出て行ってしまう。
「しっかし、あれだな……」
最初クレアの事は、面倒くさい疫病神と考えていた。
それがどうだ?
結果的にレベリング速度は早まり、Sランクの魔宝玉まであっさり手に入ってしまった。
完全に予想外の展開である。
――こういうのを、幸運の女神と言うのかもしれない。
「いや、流石にクレアをそう呼びたくはないな」
厨二病の女神なんて嫌すぎる。
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