第35話 こだわり

「御機嫌ね?」


「うんまあ、サブサブクラスが一つの目標だったからな」


とは言え、死霊術師はここがスタートラインに近い。


この後も――


素材を集めて死霊術師の剣の製作。

スキルを含めてのレベルアップ。

ボスを倒してレジェンド装備の入手。

レジェンドLランク魔宝玉を集めて、死霊装備のレジェンド化。


――と、まだまだやる事はたくさん残っている。


特にレジェンド系は、入手までにかなりの時間がかかる事になるだろう。

ボス討伐に必須となる大量のアルティメットエリクサーの用意には、相当な労力と時間がかかる事が目に見えている。


……何か別の手があればいいんだが、まあそんな物があれば苦労はしないか。


「そのサブサブクラスなんだけど……闇に潜むアサシンに、相応しいお勧めなんかあるかしら?」


「ん?決まってないのか?」


「バディの意見も取り入れる。私にはその器があるのよ」


どうやら決まっていない様だ。


まあゲームの様に、情報が詳細に公開されている訳でもなし。

しかもこの世界だと、レベル200に到達できる人間もそこまで多くは無い。


つまり、情報不足という訳だ。


一応選ぶ際にふわっとした内容は表示されるのだが、変更が効かない物だけに、それだけで選ぶのはリスクが高わな。

そう考えると、事前に可能な限り情報収集するのは当たり前の事だった。


「ふむ。まあ一番無難なのは山師ギャンブラーだな」


ギャンブラーは、暗殺者の鉄板のサブサブクラスだ。

これを選ぶと、クリティカルと完全回避のスキルが手に入る。

暗殺者は自前でその辺りを持ってはいるが、別途追加で確率が加算されるので問題ない。


後、このクラスはナイトの様な耐久クラスが取得する事もあった。


ギャンブラーの完全回避の発動率は10%と高くないので、普通なら防御能力として考えるには不安定だ。

だが高い耐久力で何発も攻撃を受ける前提のクラスなら、その期待値は収束されていく。

最終的にダメージや状態異常を10%防いでくれると考えれば、選択肢としてはそこまで悪くはないだろう。


それとレベルアップ時にHPが大きく上昇するのも、好まれる点となっている。


筋肉士ボディビルダーなんかも悪くはないな」


筋肉士ボディビルダーには、特にスキルの習得は無い。

その代わり、レベルアップ時にHPと筋力が大幅に上がる仕様になっている。

前衛の欲しいステータスがもりもり上がるので、かなり優秀なクラスと言っていいだろう。


山師ギャンブラー筋肉士ボディビルダー……。どうもパッとしないわね。特にボディビルダーの方は……私の魂が、闇の刃に相応しくないと囁いているわ」


ボディビルダーはどちらかと言えば、男性向けのあれだからな。

だいたい日本だと闇勢力のマッチョは弱いってのが相場だし、ある意味、クレアの魂の囁きは正しいと言えるだろう。


「そういや、クレアのステータスはどんなもんなんだ?」


普通は鉄板を選んでおけば、まあ間違いはない。

とは言え、クレアは特殊だ。

そう考えると彼女の場合は、他にも最適解があると言えるだろう。


ので、現状のクレアの能力を確認しておく。


「ふふ、聞きたい?本当ならバディ相手でも秘密にするべき所だけど、まあそこまで言うのなら特別に教えてあげるわ」


秘密も何も、今までも普通に答えてたじゃねぇか。

あと、軽く聞いただけでこいつの中ではそこまで扱いになるんだな。


――クレア・ヴェルヴェット。


クラス:暗殺者

Lv :150→200

HP :204/204→316/316

MP :1055/1055→2417/2417

筋力 :204→316

魔力 :881→2206

敏捷性:297→465


・スキル


隠密【10】

クリティカル【―】

完全回避【―】

バックアタック【5】

シャドウワープ【―】

分身【2】

闇魔術【5】


・ユニーク


大賢者【3】


――――大賢者【2→3】――――


MP +500→1500

魔力+500→1500


詠唱速度+100%→150%

魔法威力+100%→150%


魔法クールタイム-50%→ー75%

下級中級魔法の威力キャップ無視。

下級中級魔法全て使用可能。


(new)レベルアップ時、魔力とMPの成長が大幅に上昇→超上昇。


(new)上級攻撃魔法を全て使用可能。

(new)攻撃時、最大MPの1%回復。

(new)魔法中断時、続きからの詠唱を行える。

――――――――――――


「うーむ」


さらりと大賢者のレベルが上がっているな。

そのせいか、魔力とMPの数値がとんでもない事になっている。

他のステータスはまあ妥当な感じだ。


つか、上級魔法も全部使えるのか。

しかも攻撃時MP回復とかも付いてやがる。


あれ?

このステータスでMP回復在りって、ひょっとして黒曜石装備有用だったりする?

まあその事は一旦おいておこう。


新しく増えている完全回避は、レベル×0,1%の確率でダメージや状態異常を無効にするスキルとなっている。

レベル200時点での発生率は30%。

カンストまでいくと45%まで上がるので、かなり頼りになる。

打たれ弱いアサシンの、命綱的スキルと言っていい。


シャドウワープは影を通って相手の背後に回るスキルだ。

背面攻撃を得意とする暗殺者にとって、手っ取り早く後ろを取れる便利スキルになっている。


ま、使用制限時間クールタイムが若干長めだから連発は出来ないし、空を飛んでいたり、影のないゴースト系には不発するが。


「魔法使い的な戦いをする気は――」


「ないわ」


質問に対し、食い気味に返答が帰って来た。


「アサシンは闇に生きる者。背後からの一撃こそ至高。仮に魔法を使うとしても、それは……そう!取って置きの切り札としてよ!」


「あ、はい」


絶対普通に魔法使って戦った方が良いと思うんだが、まあ本人の意志が固いのなら仕方がない。

拘りってのはモチベーションに直結する物だし、結構重要だったりするからな。


とは言え、折角魔力が高いのだからそれを生かさないのは勿体ない。

魔法を使いつつ、背後から攻撃となると――


「じゃあ、魔法剣士エンチャンターってのはどうだ?」

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