第23話 新武器

さて、新装備を紹介したいと思う。


これからレベリングに使う予定であるキラーアントは、外骨格が鎧の役割をしているので、防御力がかなり高い。

関節部分が比較的ましとは言え、俺はともかく、クレアは黒曜石の短剣以外ではダメージが真面に通らないのは目に見えていた。


そこで新装備である。


そう!

ステータスが足りないなら装備で補えばいいのだ!


俺は剣を手に取り、鞘から引き抜く。

その刀身は鮮やかな青色をしており、陽光がきらめいて美しい。


これはハイミスリルソードと呼ばれる物だ。

魔法金属と呼ばれるミスリルをBランクの宝玉を用いて加工した物で、通常のミスリルソードよりずっと高い攻撃力を有している。


そのお値段はプライスレス。


冗談抜きで店なんかでは売っておらず、これのワンランク下の武器であるミスリルソードですら市場には殆ど流通していないレベルだ。

それ位高価な武器となっている。


どうやって手に入れたのか?


言うまでもなく、例の闇の牙と名乗る護衛さんに手配して貰った物だ。

レベル上げ用に。


「その剣の名は?」


俺がニューウエポンを繁々見つめていると、クレアが下らない事を聞いてくる。

こいつは、武器に名があって然るべきと考えている様だ。

流石厨二である。


ま、適当に合わせてやるか。

顧客満足度アップって奴だ。


「この剣か……ハイミスソだ」


「ハイミスソ……少し名前としては不自然に感じるわね」


適当に考えた名前だからな。

どうせ俺がこの剣の名を呼ぶ事などないので、名前が自然か不自然かなどこの際どうでもいい。


「ふふ、つまり何か秘密が隠されている訳ね。その剣の名には……」


「ふ、気づいたか」


これまた適当に合わせ、俺はクレアにハイミスリル製のダガーを差し出した。

勿論これも護衛さんが用意してくれた物だ。

今の俺じゃ、絶対入手できないし。


「これは……」


「レベル上げ用の、クレアの新たな相棒だ。使ってくれ」


「ダリ―とガリーはどうするの?」


「そいつらは十分頑張ってくれた。もう休ませてやろう」


「そう……そうね……安らかに眠りなさい。ダリー、ガリー」


クレアがしんみりとした表情――実際はフードで顔が見えないので只の予想――で、俺が適当に買って来たダガー2本にお別れを告げる。


レベル100まで共に頑張ってくれた相棒だ。

感慨深いものがあるのだろう。

俺にもその気持ちは分かる。


等とは微塵も思わない。


所詮は急造レベルアップのお供でしかないからな。

回収したら、武器屋に中古で叩き売るのみだ。


「いつまでも別れを惜しんでいる訳にはいかないわね。新たな出会い……この子達の名を聞かせて貰おうかしら」


「ハイダーと、ミスガーだ」


こっちは聞かれると思っていたので、先に考えておいた。

勿論適当に。


「……ひょっとして、適当に考えてない?名前」


「ふ……闇のインスピレーションだ!」


「そう……闇のインスピレーションならしょうがないわね」


クレアの至極まっとうな疑問を、俺は一言で黙らせる。

これから何かある度、この魔法のワードで乗り越えていくとしよう。


「さて、それじゃレベリングだ!」


俺はキラーアントを死霊の指輪から召喚する。

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