第22話 スペシャルなゲスト
「お、いるいる」
俺は崖っぷちに立ち、下を覗き込む。
高さは20メートル程だろうか。
覗き込んだ先には、巨大な赤い蟻がうろついている。
キラーアント。
レベル92の強力な魔物だ。
この崖の下は洞窟になっており、そこはキラーアントの巣窟となっていた。
此処で何をするのか?
勿論……崖打ちだ。
俺は指輪にしまっていたアンデッドオークを召喚する。
既に6匹全てをオークに変えており、出て来た
死霊の指輪にはアンデッドを収納できる機能がある。
その際、僕にアイテムを所持させているとそれらもそのまま収納する事が出来た。
そのため、ちょっとしたインベントリ代わりにする事も可能だ。
「よっこらしょっと」
俺は石を受け取る。
あ、そうそう。
今日のこの狩には、クレアは同行していない。
休みって事にしてあるので、彼女は街できっとなんかやっているだろう。
じゃあソロ?
ぶっぶー。
違いまーす。
実は本日の狩には……な、な、な、なんと!
超スペシャルなゲストが!
その名も闇の牙(仮)さん!
ま、要は例の護衛の男だ。
クレアと行動を共にするに当たって、彼には色々と協力をお願いしてある。
何せレベル上げの予定が死ぬ程ずれこむ訳だからな。
相手も迷惑をかけているのが分かっているから、二つ返事で引き受けてくれている。
そしてその一つが、今日の狩である。
彼の仕事は二つ。
一つは、崖に辿り着くまでの護衛。
此処まで来るのに、レベル70前後の魔物の生息地が抜ける必要があった。
当然俺がソロで抜けられる様な場所じゃないので、寄って来た魔物は全て、闇の牙を名乗る護衛さんに始末して貰っている。
「喰らえ!」
俺は石を頭上に掲げ、勢いよく崖下に見える魔物の一匹に向けて投げ付けた。
キラーアントは火力が高い魔物だ。
さらに外皮が鎧の役割をしているため、その防御力もかなり高い。
一応HPが低いという欠点はあるが、普通に挑んだら、今の俺じゃとても勝ち目のない魔物と言っていいだろう。
が、崖打ちなら別。
50キロ近くもあるデカい石を、20メートルも上から全力で叩きつけるのだ。
一発入れば、それだけでかなりのダメージが入る。
「ぎゅえっ!」
俺の投げた石が、キラーアントの体に直撃する。
その衝撃は凄まじく、魔物は思いっきり地面に叩きつけられる様な形で倒れた。
だが倒すにまでは至っていない様だ。
大ダメージで動けなくなっている相手に、もう一発投げれば止めを刺す事は出来るだろう。
だがここへは、別に経験値を稼ぐためにやってきた訳ではない。
そう、今日の目的は下僕のアップデートだ。
「お願いします」
俺はもう一つの仕事を、闇の牙(仮)に頼む。
彼は無言で崖から飛び降り、そして音もなく着地する。
周囲の魔物が急に頭上から降って来た闖入者に気づいて襲い掛かろうと動き出す。
だがそれよりも早く、彼は瀕死のキラーアントにナイフで止めを刺し――
その優に100キロは超えるであろう巨体を、軽く肩に担ぎ上げた。
そしてそのまま彼は崖に向かって高く跳躍し、キラーアントを担いだまま壁面を片手無しででひょいひょいと昇って来る。
正に忍者の様な動きだ。
まあ実際の忍者は、絶対こんな真似できないだろうが。
「もう完全に人間の動きじゃねぇよな」
レベル一体いくつなんだろうか?
分かっている事は、戦ったら瞬殺されるぐらいに差があるという事ぐらいだ。
「ありがとうございます」
俺は下僕の一体を処理して空きを作り、闇の牙(仮)が崖の上に運んできてくれたキラーアントに死霊化をかける。
「よし!キラーアントゲットだ!」
現レベルの僕の枠は6。
そして持ってきた石も6つ。
この調子で、6体全部キラーアントへと変更させて貰うとしよう。
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