第14話 超レア武器

オークは豚の頭部を持つ、身長2メートル程の太った二足歩行の魔物だ。

手には槍が握られており、それを武器として扱う器用さを持ち合わせていた。

ステータスに関しては見た目通り筋力とHPが高く、敏捷性は低い。


「ぬううううう!!」


「ぶふぅぅぅぅ!!」


超接近戦。

パワーでは勝るオーク相手に、俺は敏捷性を生かして正面から真面に打ち合う。


しもべのビックトード6体には、中距離から長い舌で援護攻撃に専念させている。

この攻撃には弱い麻痺の効果があり、現在、低いオークの敏捷性が更に5%程下がっていた。

俺はこれを期待して、オーク討伐前にこいつらをしもべにしておいたのだ。


「隙あり!」


「ぎゅああああ!!」


隙を突いてオークの腹部に剣を突き立てる。

それが致命傷になり、オークは断末魔を上げてその場に崩れ落ちた。


「はぁ……はぁ……何とかなったな」


「ふふふ、また一つ伝説への階段を上ってしまったわね」


倒れているオークを前に、クレアが満足げに頷いていた。

多分レベルでも上がったのだろう。


俺はビックトードを一体処分し、代わりにオークを死霊術で下僕へと変える。


暗殺者のクレアが参加していたのに、なんで貢献度が50%超えているのかって?

それは彼女が糞弱かったからだ。


――クレアのレベルは、なんとたったの4だった。


普通、勉強や運動しているだけでもレベルは10近くまであがる物だ。

それが俺と同い年でレベル4とか、箱入り娘極まれりである。


まあだがそのお陰で、彼女に怪我をさせないという超重要ミッションを比較的楽にこなせた訳だが。


低レベル箱入りのお嬢様であるクレアの攻撃力では、オーク相手に真面に攻撃が通らない。

それは暗殺者のスキル補正を受けるバックアタックでも同じ事。

そのため、戦闘中オークは背後にいる彼女をガン無視してくれていた。


ま、目の前でガンガン攻め込んで来る俺を無視してまで、殆どダメージの通らない雑魚の相手なんてしないわな。


「我が双刀――ダークシスターズも勝利に打ち震えているわ」


クレアは両手にそれぞれ持つ黒い短剣をうっとりと眺め、厨二ごっこを堪能中である。

彼女の持つ短剣は、黒曜の短剣と呼ばれる物だ。

ダンジョンの深部の宝箱から低確率で出現する、所謂レア武器である。


その入手難度から超レア扱いされてはいるが――正直、武器としては微妙だった。


黒曜石系の武器は、素の攻撃力が1しかない。

代わりに魔力を込める事で、魔力の3分の1が攻撃力になる特殊仕様だ。

そして攻撃する度に、最大MPの1%を消費する。


これが微妙扱いされるのは――


前衛が使用するには、魔力が低くて大した攻撃力にならない。

魔法使い系が使うには、魔力を消費しすぎる。


という二つの問題があるからだった。


ぶっちゃけ前衛は強い武器を持った方が良いし。

魔法使いはこれでMPを1%も使って攻撃する位なら、魔法で攻撃した方がよっぽどダメージが出る。


そのため、魔法が全く効かない魔物相手に後衛が使うか――そもそもそんな狩場に魔法使いは行かないが。

魔法使い系がどうしても近接戦を強いられる状況で、苦肉の策として使う位の需要――その状況だと負け確だし、あんまり意味がない――しかなかった。


まあ少なくとも、前衛系がメイン武器として持つようなものではないという事だ。


この武器の存在もクレアの攻撃力の低さを助長してくれているので、俺としては有難くはあるが。


「あと4匹。気合を入れて頑張ろう」


クエストの必要最小数は5匹。

正面からプレッシャーをかけ続けないといけないので、お陰で一匹狩るだけでも死ぬ程疲れてしまう。


兎に角、気合を入れなければ。

ミスは許されない。

まだ死にたくはないからな。

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