第10話 アップデート

サブクラス『剣士』はレベルアップ時に筋力と敏捷性が上昇する。

そして、剣術マスタリーというスキルを習得する事が出来た。


その効果は剣を装備中、筋力と敏捷性に15%のボーナスが付くという物だ。

更にレベルが上がる度に3%づつ効果が上昇していき、MAXのレベル5で最大30%までボーナスは伸びる。


「サブクラス習得後なら、ホブゴブリンクラスは楽勝だな」


ホブゴブリン。

ゴブリンの上位種で体が一回り程大きく、そのステータスはゴブリンの1,5倍程になるが、流石にレベル100でサブクラスを得た俺の敵ではなかった。


「全部をホブゴブリンに入れ替えたら、次はビッグトードだな」


現在は、絶賛しもべの入れ替え中である。


金策が終わり、ゴータ村を出た俺は、その隣の町周辺で下僕のアップデートを行っていた。

レベル100からは経験値の必要量が一気に上がるため、ゴブリンでのレベリングはキツイからだ。


理想は経験値多めのリザードマン着地なのだが、現状勝てるかは微妙だ。

なので、まずはワンランク下のオークで我慢しようと考えていた。


下僕のアップデートなどせず、一気にオークを狙えばいいんじゃないかだって?


此処はゲームみたい世界ではあるが、現実だ。

死ねばそこでゲームオーバー。

そう考えると、安全マージンは大目に取らないと不味いのだ。

ゲーム感覚で行くと、あっという間にあの世行になりかねない。


だから多少効率が落ちても、リスクの高い行動は極力排除する様に俺は立ち回る。

100までのレベル上げに、最後までゴブリンを使ったのもそのためだ。


安全万歳!


俺はアンデッドゴブリンの一体を経験値に変え、死霊術で新たに下僕にしたホブゴブリンのステータスを確認する。


種族 :ホブゴブリン(アンデッド)

Lv :18→118

HP :151/151→50/50

MP :0/0→0/0

筋力 :96→32

魔力 :3→1

敏捷性:102→34


スキル


噛みつき+【1】

引っかき+【1】


ステータスはゴブリンよりはマシだが、アンデッド化した後の数字は相変わらず酷い物である。

スキルの引っかき+と噛みつき+は、それぞれの行動に攻撃力がプラスされるパッシブスキルだ。

これがあるため、ステータス以上にゴブリンとホブゴブリンの強さの差は大きい。

スキルの有無は偉大だ。


もしレベル15の時にこいつに挑んでいたら、俺は間違いなく返り討ちあっていた事だろう。


「よし、入れ替え完了」


しもべを全てホブゴブリンに変える。

計6体ホブゴブリンを狩ったが、経験値はほとんど増えていない。

何故なら、レベルに大きな開きがある為だ。


この仕様のせいで、基本超格下狩りを強いられるこの世界の死霊術師は、殆どレベルがあげられない。

酷い話である。


因みに、死霊の指輪が無かった場合、俺は崖撃ちを使用してレベルを上げるつもりだった。


崖打ちとは、相手の侵入できない位置から遠距離攻撃を当てて嵌め倒す事を言う。

ネットゲームなんかで、遠距離職が良く使うこすい手法だ。

まあヘブンスオンラインでは崖撃ちは禁止されていたが――誰かに見られて通報されるとペナルティを受ける――ここはゲームじゃないので気にする必要はない。


え?

お前は弓も魔法も使えないのに、どうやって崖撃ちするのかだって?


弓も魔法も別に使う必要はないぞ。

用は攻撃できればいいのだ。


魔物の好む匂い球というアイテムを、昇り降りが不可能な崖下に落とし、おびき寄せる。

そして魔物が寄ってきたら、上から両手で抱えるサイズの大きめな石を落とす。

こうすれば高低差の落下ダメージ補正も相まって、非力な死霊術師でも結構な強さの魔物を狩る事が出来た。


この狩り方の欠点をあげるなら、狩れる数がそれ程多くないという点だろう。

いくら魔物を引き付けるアイテムを使っても、そうポンポン寄ってきてくれる訳じゃないからな。


場所を微妙に変えながらやって、1時間で4から5匹狩れればいい方だ。

そのため、時間当たりの取得経験値量はそこまで出鱈目に凄いって訳ではなかった。

まあだがそれでも、死霊術師が普通に狩りをするよりも遥かに効率はいい。


因みに、ゲーム時代のレベル100までの俺のレベリングは、固定ダメージのあるレア武器を装備して、高価な回復薬を消費しつつという頭の悪い狩り方をしていた。

所謂、廃パワーって奴だ。


「んじゃ、次はこのホブゴブリン共をビッグトードにアップデートだ」


俺は次の獲物を求め、狩場を変える。

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