第7話 金が無い
レベリングを初めて1月。
現在、レベルは67まで上がっている。
ステータスは――
【ユーリ】
クラス:死霊術師
Lv :15→67
HP :60/60→112/112
MP :151/151→255/255
筋力 :82→108
魔力 :112→167
敏捷性:75→101
・スキル
死霊術【1→4】
死との親和【―】
ステータスは左側がレベル15の時の数値で、矢印の先が67まで上がった現状の物だ。
見ての遠り、魔力やMPの伸びは悪くないが、半面、筋力や敏捷性の上昇はかなり酷い物となっている
スキルに関しては、初期からあるパッシブスキルの死霊術と、死との親和の2つだけ。
次にスキルを覚えるのは、レベルが200超えてからになる。
先は長い。
死霊術の横の数字はレベルで、この数字だけアンデッドを使役する事が出来る。
死との親和の方はレベルがないので棒線表記だ。
「うん!弱い!」
今の俺の強さは、駆け出しの戦闘系とどっこいか、もしくはそれよりも低い位だ。
魔力はそこまで低くないのでせめて攻撃魔法でも使えてれば良かったんだが、死霊術師はその手の魔法を一切習得する事が出来なかった。
使えるのはアンデッド化と、それ用の回復や耐性付与の魔法位だ。
一応高レベルになるとちょっとしたデバフも使える様にはなるが、それも実践レベルで大活躍する様な物ではない。
「救済が来てなかったら、本当にどうしようもないゴミだよな。このクラス」
……ま、その弱さが一部の廃人に刺さって嗜好プレイに繋がっていた訳だが。
もちろん俺もその口だ。
装備の揃ったセカンドキャラとは言え、何だかんだでアップデート前にカンストレベルである200まで上げていたからな。
「しかし……」
俺はお金の入った革袋を見て、小さく溜息をついた。
移動とこの一月の生活費。
それに装備や細々した物の購入で、残金はかなり少なくなっている。
このままだと、後1~2週間で手持ちの底が付いてしまうだろう。
「100まで駆け抜けたかったが、このままじゃ金が持たんな」
死霊術師の高速レベリングは経験値効率こそいいが、逆に金銭効率はほぼ最低――というか0だ。
自分のアンデッドを狩っても、一銭にもならないのだから当然である。
「レベルが上がったお陰で多少は強くなってるし、クエストでも受けるとするか」
働かざるもの食うべからずという言葉もある。
幸い冒険者登録は既に済ませてあるので、其方で仕事を受ける事にしよう。
「何か楽な
冒険者ギルドの仕事内容はゲームなどでよくある、収集や魔物退治がメインだ。
後は護衛や物の運送なんかもある。
「すいません、クエストを受けたいんですがー」
今いるゴータ村は小さな村だが、一応冒険者ギルドは存在していた。
雑貨屋と合体している上に、しかもメインは雑貨屋の方だったりするが。
ま、田舎だしあるだけましって感じだ。
「あいよー」
受付の女性がカウンターへとやって来る。
50代位の太ったおばちゃんだ。
ゲームなんかだと、美人の受付嬢がセオリーなんだが……
ま、此処は現実の世界だから仕方がない。
このおばちゃんだって、2~30年前ならきっと綺麗だった筈だ。
多分。
「ん、あんた冒険者だったんかい?」
「ええ、まあ」
雑貨屋で色々と買い物をしているので、一応おばちゃんとは顔見知りではあった。
まあ小さな村だし、そうでなくとも他所者には敏感だ。
だから雑貨屋を利用していなくとも、俺の噂位は仕入れていただろうが。
「ふむ。ランクはFで――」
俺の冒険者証をおばちゃんに提示する。
登録してから仕事を一切受けていないので、当然ランクは最低のFだ。
ランクに関してはお馴染みのアレで、FからSSSまであり。
SSSが最高ランクになっている。
SSSランクの不遇職ってのも面白そうなので、育成がある程度終わったら目指してみるのも良いかもしれない。
「死霊術師ねぇ。珍しいクラスではあるけど……」
俺のクラスを確認した途端、おばちゃんの視線が残念な物を見る感じに変わる。
まあこの反応も仕方がない事だ。
トップクラスの戦闘不遇職。
それがこの世界における、死霊術師の認識だからな。
「残念だけど、死霊術師単独で受けられる様な依頼ってのはないわね」
他の職ならありそうな口ぶりである。
いやまあ、実際あるのだろう。
この村周りは、死霊の森方面を除けば、大したレベルの魔物はいない訳だからな。
だがそんな低レベルな依頼ですらも、死霊術師は敬遠されてしまう。
正に不遇クラス極まれりである。
とは言え、ここで引き下がるわけにはいかない。
こっちは生活費がかかってる訳だからな。
そこで俺は早々に切り札を切る。
自分のレベルという、切り札を。
「一応レベルは67なんですが、駄目ですか?」
「67ぁ?あんたが67だって?そりゃ何の冗談だい」
通常、67もあればそこそこ優秀な冒険者として判断されるレベルだ。
そんなレベルを、成人したてのFランク冒険者が口にしたって、説得力は皆無だ。
だからおばちゃんも、俺の言葉を端から疑ってかかる。
だが――
「信じられないんでしたら、レベルを確認してみてください。それなら俺のレベルが分る筈です」
ギルドにはレベルとクラスの分かる、簡易鑑定用のマジックアイテムが置いてある。
クエスト次第では、ランク以外にもレベル制限があったりするためだ。
「まあ見ろってんなら見るけどね……」
おばちゃんは渋々といった感じに、水晶型のマジックアイテムで俺のレベルを確認する。
そしてその数字を見て、カッと目を見開いた。
「――っ!?あらやだ!本当に67もあるじゃないの!アンタ、見た目の割にやるじゃないの!」
受付のおばちゃんが何故かバンバンと俺の肩を叩いて来る。
意味不明だし、結構痛いんで止めて貰えませんかね?
「これだけレベルが高ければ、クエストを任せても大丈夫そうね」
まあ何はともあれ、話が進んだので良しとしよう。
おばちゃんはカウンターの下をごそごそとまさぐり、手にした紙の束をその上に置いて広げる。
「結構な量がありますね」
「まあね。この辺りにやって来る冒険者なんて殆どいないから、依頼が溜まり放題なのよ。まあ流石に緊急性のある物は皆無だけど」
溜まっていたにもかかわらず、それでも仕事を見積もって貰えない。
これぞ死霊術師クオリティ。
ま、流石にゲームじゃそんな事は無かったんだがな。
現実となると、その扱いの悪さが浮き彫りになる。
「これでお願いします」
俺はカウンターに置かれた物に軽く目を通し、一つの依頼書を手に取る。
それはゴブリンの居る平原の地面に埋まっている、特殊なキノコを採って来るという物だった。
戦闘メインじゃない上に、報酬金額もかなりいいのでこれに決まりだ。
因みに、ゲームでは見た事のないクエストである。
現実限定か。
もしくは最新アップデートで増えた新規の低レベルクエストで、ただ俺が把握していないだけなのか。
ま、其の辺りはどうでもいいだろう。
重要なのは、これが俺向きの美味しいクエストだという事だけだ。
「周囲にはゴブリンしかいないけど、探しだすのが大変なクエストよ。それでいいの?」
最初に狩ったゴブリンは、四つん這いになって地中の何かを夢中で食べていた。
俺の予想だと、多分それがこのクエストのキノコだ。
だからゴブリン利用すれば、クエストを簡単に終わらせる事が出来る筈。
どうやって利用するのか?
勿論、使役しているアンデッドを使う。
ステータスこそ下がってはいるが、生前の機能は基本的にそのままだからな。
使役したアンデッドでも、キノコ探索は出来るはずだ。
「ええ、これでお願いします」
ま、予想が外れてたら必死に穴を掘りまくって何とかするとしよう。
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