第7話 ドッキリ!




『みなさんこんあまー。ラブシャイン2期生の天抱まおで〜す。今日はみなさんにドッキリを仕掛けたいと思いまーす。』


眞緒は撮影スタジオの中で密かに撮影を開始した。


と言っても天抱まおにはまだ3Dモデルがないので、音声のみの録音となっている。


『仕掛人は私、社長、そして0期生の黒音カリン先輩です。カリン先輩が次々に声真似を披露してそのキャラを当てるゲームなんです。適当なタイミングでカリン先輩が私に声出しを振るので、そのタイミングで私が自己紹介をして【ドッキリ大成功!】という流れになります!』


眞緒はスタッフに混ざって待機していると、出演者の自己紹介が始まった。


「(あの人たちが私の同期...)」


続々と正体が明らかになる同期を眺めている間に、カリン先輩から企画の説明が始まった。


『今回の企画はとっても簡単!!2期生の皆さんには私が誰の声真似をしているのか当ててもらいます!!アニメキャラやゲームキャラ、後はVTuberの声真似などだね!』


『『『『いえーい!!!』』』』


『回答は手元のホワイトボードに書いてね!正解した方には10ポイント!不正解の場合は−5ポイントです!それでは第一問!!』


カリンの合図で全員が聞く体勢に入る。


『....お可愛いこと』


カリンのマイクが音を拾った。


あ、これ私も知ってる。


『私あのアニメ大好き!なんだか誤解が生まれそうなあのやりとりがすごく面白くて!』


カムイが興奮気味に話すと、トオルもそれに乗っかる。


『俺も見てるなあのアニメ。メイドというか付き人みたいなあの子が一番好きなキャラだ。』


『私もあのキャラ好きだぞ!ただあのアニメ、親の前で流してるとたまに場が凍りつくことがあるんだよね...』


めぐるがホワイトボードに答えを書きながら答えると、カリンが進行し始めた。


『さぁ!みんな回答が書けたみたいなので一斉にオープンしましょう!どうぞ!!』


クイズ番組のように回答が一斉に表示された。


『か○や様』

『か○や様』

『四宮か○や』

『か○や様』

『副会長』


『さぁ5人中3人が同じ回答で1人が大体同じだね。あと『副会長』と答えたレオちゃん!』


『間違いではないでしょう?あのキャラは確か生徒会副会長だったはずですわよ?』


カリンの問いかけにレオはなんでもなさそうに答える。


『5人とも正解!お見事!全員に10ポイント〜!!』



スタジオに正解の電子音が流れると、全員が『いえーい!』と歓声を上げる。


『さすが2期生の皆さん。ちなみに私の回答も『か○や様』でした。ところで、カリン先輩声真似うますぎません?アニメの声流してるのかと思いましたよ』


マイクで実況をしながらカリンの声真似のレベルの高さに驚愕していると、次の問題に入った。


『それでは第2問!次もアニメから出題します!』


全員がカリンの声に耳を澄ませる。


『40秒で支度しな』


カリンの口から出た年配の女性を模したこの言葉は、どうやら回答が分かれそうな雰囲気を出していた。


『私この言葉知らないぞ』


『え!?めぐるこの言葉知らないの!?すごく有名だよ!?』


『おぉ、クオリティが高すぎてすぐにわかったな』


めぐるが頭上に?を浮かべている横でカムイとトオルがスラスラと手元のホワイトボードに書いていく。


『そよのとレオはどうなの?わかったの!?』


めぐるが必死な様子で二人に聞くと、反応はまちまちだった。


『私はすぐにわかったわよ?むしろわからない方が..って感じでしたわ』


『えー?わたしはよくわかんなかったですよぉ?』


レオが腕を組んで何度も頷く横で、そよのがホワホワした雰囲気で首を横に振っていた。


『ジェネレーションギャップというやつかな?まぁ君たちが生まれる前の作品だもんね。有名ではあるけどわからなくてもしょうがないかな?』


カリンがそういうと正解発表に移る。正解は某アニメ映画の海賊おばちゃんだった。


眞緒は『最近の子はこの映画知らないんだぁ...』と驚きを隠せない。


『続いてはVTuberいきましょう!どのシーンか当ててください!』


『『『シーン!!!???』』』


名前だけでなくシーンを当てなくちゃいけないなんて、結構難しいな...


カリンは大きく息を吸うと、喉から声を出す。


『俺の吐息には催眠効果...』


『っ!?』


カリンの喉から出た声にトオルがビクッとする。


『俺の声には誰もが絶頂...』


『おい...いくら大先輩でも許さねぇぞ ...なんだそのチョイスは..?』


トオルが顔を真っ赤にしてカリンを睨みつけるが、カリンは全く気にせず続ける。


『俺だけのマイスウィートハニーのお出ましさ!!』


『やめろォォォォォォォォォォォォ!!!!!!』


カリンが満面の笑みで言い切ると、トオルが膝から崩れ落ちた。


レオが顎に手を当てて回答を口にする。


『今のはトオルが視聴者参加型で対戦ゲームで負けたら対戦者の望む罰ゲームを行うという企画をした時、ボコボコにされたトオルの罰ゲームとして『キャラ崩壊セリフを全力で読む』とリクエストされマシュマロで募集した結果、意味不明なセリフがきた時のやつですわね。私も聞いた時は鳥肌が立ちましたわ。』


『解説ありがとうレオちゃん。正解を当てたからみんな手元のやつは書かなくていいよ。レオちゃんに追加10ポイント!』


カリンが意気揚々と進行する中、トオルが再起不能になってしまうのが見えた。


(トオルさんには悪いけど、正直私も寒気がしたんだよなぁ...)


当時のコメント欄には視聴者からの『キッツ』でコメントが締められており、トオルが涙目になっていたのはここだけの話。



『それにしても...っふっ...』


『おい...笑うな...』


めぐるがそっぽを向いて体をプルプル震えていると、トオルがジロリと視線を向ける。


『トオルに全く似合わなかったよね!あはははははははははははは!!!!!』


『笑うなぁ!!似合わないことは自分が一番わかってるわぁ!!!』


『はいはい!トオルくんはおいといて次に行くよー!!』


爆笑し始めたカムイにトオルが顔を真っ赤にして食いかかるが、カリンは気にせず企画を進める。哀れなり、龍眼寺トオル。


『次は少し特殊なやつ出そうかな。』


カリンは喉の調子整えると、手元のマイクに顔を近づけた。


『レジギガガガガガガ ギガギガフンフン ガガガガガガガガ』


『あ、それよく動画見ますね』


『カリン先輩、もしかして映画出てました?』


『ふふん!私が得意な声真似の一つなのだよ!』


自慢げに胸を逸らすカリン。その様子を横目に全員がそれぞれ回答をホワイトボードに記入する。




その後もカリンは猫型ロボットや擬人化したパンが出てくる国民的アニメの声真似を始め、大ヒットヒーローアニメのボスキャラや主人公に受肉した邪悪キャラ、さらには「ようブラザー!!」という最近流行りのゲームでよく聞く声真似を披露して声真似大会を盛り上げた。


「はい、それでは一旦休憩入りまーす!」


「「「「「はーい」」」」」


『はい、皆さん休憩に入りました。この後、カリン先輩がスタッフとして潜伏する私に声真似を振る予定なので、そこで私は自分の挨拶をします。何人が私が本人だと気づくでしょうか?』


眞緒は場の状況を説明し演者が休憩しているところに飲み物を渡しに行くと、その場では2期生とカリン先輩が雑談をしていた。


「カリン先輩ってもしかしてアニメのモノマネならなんでもできますか?」


「そうだねぇ、声真似のレパートリーはどんどん増やしてるから見たことあるやつは一通りできるよ。最近はカぺ○ートの声真似もできるようになったんだよ?」


「え、あれって真似できる声ありました?」


「もちろん!『エーヨォ、エーヨォオ!!』とか。結構喉に来るんだよ?」


カリン先輩が実際に披露してその場を盛り上げると、カリンは連絡にあった通りに眞緒に話を振る。

「そういえば、そこのスタッフさんまおママの声にすごく似てなかったですか?」


「それ私も思ってました!飲み物もらうとき声聞いたらすごく似てて!!」


カムイが若干興奮した様子でそう話す。2期生の視線が眞緒に集まった。


「なんか喋ってもらってもいいですか?まおママをイメージした感じで。」


「あ、わかりました。」


(とうとうネタバラシだ!)


眞緒はいつもの自己紹介を始める。


『2期生の皆さん初めまして、こんまお〜。ラブシャイン2期生の天抱まおでーす。』


「「「「おぉー!!本当に似てる!!」」」」


『『え?』』


2期生の反応に眞緒とカリンは二人して素っ頓狂な声をあげる。


「そういえば今週まおママとオフコラボあるのに、まだまおママと顔合わせできてないんですよね...」


『今会ってるじゃないですか...』


めぐるの言葉に眞緒がガックリとしていると、社長がニヤニヤしながら話し始めた。


「めぐるちゃん、まおママとはもう会ったじゃない?」


「え?」


社長の言葉にめぐるが頭上に?を浮かべていると、社長は親指でクイッと眞緒を指差す。


「ほら、あなたがずっと会いたがっていたまおママよ?」


眞緒と社長の顔に向けて交互に視線を移し、社長が嘘をついていないことがわかると


「....えぇぇぇぇぇ!!!???」


「「「嘘おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!?????」」」


『『ドッキリ大成功ぉぉぉ!!!!!』』


めぐるが目を丸くして大声を出し、その他の2期生も声を上げ、カリンと眞緒は歓喜の声を上げた。


一時は失敗したかと思われたこのドッキリ、社長のナイスアシストでおそらく成功したのだった。


後日、公式チャンネルで公開されたこの動画はただただ黒音カリンの声真似のクオリティの高さを視聴者に周知する動画となってしまったのだった。


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