大量の金貨
屋敷の前につくと、マッチョなおっさん衛兵に囲まれた。イカついな。
「貴様、見ない顔だな! ソールズベリー伯様に何用だ! 侵入者ならドラゴンの餌の刑だぞ!」
「僕は家を買いたいんだ。お金ならたくさんある」
そう説明するけど、衛兵のおじさんは槍向けて追い出そうとしてくる。信じてくれなかった。
「嘘をつけ! 貴様のような貧弱な男に金があるとは到底思えない。さっさと出て行け!」
いちいち怒鳴らないで欲しいけれど、ここは信じてもらう為に『証拠』を見せる必要がありそうだな。
アイテムボックスから金貨を取り出し、硬貨を見せつける。
「この金貨で信じてくれる?」
「サ、サマセット金貨!? だ、だが……たった一枚では」
「百枚でも千枚でも出せるよ」
てのひらに大量に金貨を出した。
その瞬間、衛兵たちは飛び上がって驚いた。
彼らは騒然となって青ざめていた。
「な、なんですとぉ! 大貴族様であらせられましたか……こ、これは大変失礼を!」
急に態度を変え、へこへこする衛兵。分かってくれればいいんだけど、金貨の効果絶大だな。そのまま中へ通され、厳重なセキュリティを避けていく。
ここは迷路かな。どこまでも通路が続いている。
「凄い屋敷だね」
「はい。屋敷内は数々の罠が張り巡らされており、この近辺では最強の“アクアドラゴン”が守護しているんですよ」
アクアドラゴンだって?
あの水属性のかなり高レベルのヤツだ。ギルド職員としての知識がここで役に立ったな。
背後からついてくるヨークは
「ヘンリーさん、ちょっと怖いです」
「ドラゴンをペットにしている貴族って、かなり凄いと思う。僕は“ぷちテイマー”でもあるけどさ、アクアドラゴンって
「そ、そうなんですね……」
生きた心地のしない中、奥の部屋へ案内された。背よりも高い重厚感のある扉があった。それが自然と開き、轟音をがなり立てた。
突き進むと、広い部屋の中に大きなテーブルが。そこには誰かが座っていた。背を向けて。
「あ、あの……貴方がソールズベリー伯?」
こちらを向く金髪の……少年!?
僕よりも明らかに年下の男の子だった。
でも、子供というよりは大人に見えた。あの
「ようこそ、ラドロー城へ。まずは自己紹介だね。俺は『ネヴィル』という。この中立地帯を任されている」
「僕はヘンリーで、こちらの少女はヨークです」
「それでご用件は?」
「家が欲しいんです。できれば屋敷とか」
「へえ? 家の購入を希望とは珍しいね。見た所、君は貴族ではなさそうだけど」
「はい、ランカスター帝国でギルド職員をやっていました」
その事を話すと、ネヴィルは
「ランカスター帝国か。しかし……」
なんか、ヨークをジッと見つめているな。
「わたくしは、ヨークと申します。ただの聖女ですよ!?」
「随分と慌てているな……。分かった。そういう事にしておこう。それより、家だったな」
改めて僕に視線が向けられる。
「出来れば広い屋敷をお願いします」
「いいだろう。でも、お金はあるのかい?」
アイテムボックスから掴めるだけ掴んで、テーブルにドッサリ置いた。
「金貨ざっと百枚以上です」
「――なッ! サマセット金貨! この重さは本物じゃないか」
「ええ、本物ですよ」
「金貨一枚で“10万ラド”だぞ。百枚で“1000万ラド”だから、普通の家は買える。それ以上あるのか?」
僕は更にアイテムボックスから金貨を掴み、テーブルへ、掴み、テーブルへを繰り返した。その度にネヴィルの顔がどんどん青ざめていった。
「これでどうでしょう?」
「こ、これは驚いた。立派な城が建つぞ! こんなお金をどこで?」
「……いや、それは」
馬鹿正直に“金貨増殖バグが止まらない”なんて言えるわけがない。誤魔化すしかないよなあ。どう説明したものか悩んでいると、ヨークが代わりに答えてくれた。
「そのお金は間違いなく、ヘンリーさんのものです。彼は元ギルド職員ですが、その知識を活かして冒険されたそうです。すると、あるダンジョンで“金脈”を見つけたのですよ。そのおかげで平民ながら、大金持ちなんです」
おぉ、ナイス!
ちょっと盛ってるけど、それっぽい理由だ。
「ほぅ、金脈と。それは俺もぜひあやかりたい。しかし、今は追及しないでおこう。それより、屋敷を案内しよう」
「おぉ! 売ってくれるんですね!?」
「ただし、条件がある」
「条件?」
「ここ最近、中立地帯の治安が悪化しているんだ。あるゴロツキ三人が、女性を襲っていると聞いたんだ。そいつらを排除して欲しいんだ」
あるゴロツキ?
三人?
って、もしかして、この屋敷に来る前にぶっ倒したヤツか。
「それなら、さっき倒しましたよ。衛兵が駆けつけていたんで、捕まっている頃合いじゃないかと」
直後、衛兵が部屋に入ってきた。
「報告いたします!!
「な、なんだとォ!?」
その報告に
条件はあっさりクリアされ、屋敷を売って貰える事になった。良い事はするものだな!
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