欲しいもの
欲しいものがあった。
毎週見ていた戦隊ヒーローの玩具の剣だった。
ボタンを押すと光と音が出る、よくある玩具だ。買って貰えなかったから、そのボタンを押したことはないけれど。
欲しいものがあった。
当時流行っていたゲームソフトだった。
四人まで一緒に遊べるゲームで、協力したり対戦したりできる。家には無かったから友達の家に遊びに行った時だけの楽しみだった。
欲しいものがあった。
部活の先輩が持っていたキーホルダーだった。
大きなエナメルバッグのファスナーに付けられた、シルバーのリングだ。学生が買える程度の値段だが、雑貨屋にあった一点物らしく、実際どこを探しても同じ物は見つからなかった。
欲しいものがあった。
あの子の--だ。
明るく、よく笑う子だった。あの子の--はまるでそれ自体が生きているように艶やかだった。よく高い位置で結っていて、本人の性格を表すように左右に大きく揺れていた。
欲しいものがあった。
あの子の--だ。
明るく、よく笑う子だった。運動が好きで怪我も多かったけれど、おしゃれをしたい年頃だから--も綺麗に手入れされていた。
欲しいものがあった。
あの子の--だ。
明るく、よく笑う子だった。きっとあの子の--も活発に、人並み以上に動いているのだろう。そう思って取り出したら、止まってしまった。
欲しいものがあった。
あの子の--だ。
でも、手に入れる前に消えてしまった。
供養 暗藤 来河 @999-666
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