第99話 最後の鍵《ピース》
勇者軍が王都まで突き進んでいる間。
【所有ダンポが15,000,000を越えております。ダンジョンマスターLvを9から10に上げますか?】
ダンポは既に1500万を超えていたはずなのに、ずっとレベルアップにはならなかったのだが、このタイミングでレベル10か。
恐らく今回の隠れ条件というのは、Sランク魔物を最大数まで生成する事なのだろう。
現在元王都に生成したSランク魔物は7柱の天使だった。
それぞれが固有名を持ち、それぞれが高い知性を持っていて、力も格段に高く、単体でも守護眷属達に近いモノを感じられる。
それに守護眷属達同様、それぞれが特殊スキルを持っているそうだ。
守護眷属達の特殊スキルは特殊スキルの中でも最上位クラスらしく、彼らが持つ特殊スキルや、デス部隊の隊長クラスが持つ特殊スキルは下位スキルらしい。
だが、それでも特殊スキルが強力なのは間違いない事実だ。
では早速ダンジョンマスターのレベルを10にあげよう。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
『ダンジョンマスターLv10』
Sランクガーディアン生成 …… 999,999,999
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
なるほど。
恐らく、レベル10は最後のレベルだと思っていたのだが、その予想が当たったようだ。
今回生成できるのはただ一つ、Sランクガーディアン生成。
「レヴィ」
「はい」
モニターの勇者軍の躍進を見つめながら、眉間にしわを寄せていた彼女が俺を見つめる。
「お前達はまだ生まれていない守護眷属達の事を知っていたな?」
「はい。一緒に過ごしていた訳ではありませんが、私達はお互いがお互いを知っておりました」
レヴィの言葉に不思議な感覚を覚える。
「仮にルゼのように生まれる前に赤い卵の中から外を見ていたのなら分かる。だがお前達はどこから見ていた訳でもないのに、お互いを知っていたのだな?」
「そうでございます」
「では最後の子について知っている事はあるか?」
「最後……と仰る意味が分かりません。我々があくまで
「ん? 七人目はいないのか?」
「はい。私達の記憶の中には、あともさきも全員で6人でございます」
6人…………か。
どうしてか、その言葉に大きな違和感を感じる。
そもそも、現実としてSランクガーディアン生成は存在するので、間違いなく七人目は存在するはずだ。
「他に兄や弟がいるとかは?」
「いえ、私達は6人しかおらず、その他に兄弟の類はおりません」
「そうか。最後にSランクガーディアン生成があるのだが、それについてはレヴィ達は何も知らないのだな?」
「はい。力になれず、申し訳ございません」
「いや、レヴィ達を咎むつもりはない。そもそも最後の子が生まれれば分かる事だしな。すまないな」
「少なくとも、最後の子ですから、素晴らしい子なのは間違いありませんね」
「そうだな」
素晴らしい子――――――ああ。そうに違いない。
が、どうしてか、今までの守護眷属達とは違う感覚を覚えてしまう。
何故そういう違和感を感じるのかすら分からないが、きっとこの子が産まれたら分かる事だろう。
それにしても必要ダンポが999,999,999という最大値のような表記だ。
まだこれだけのダンポを貯めた事はないのだが、これをどうやって貯めるべきか考えないといけないな。
ダンポを大量に手に入れられる魔人ももう残ってはいない。
サンにお願いすれば、敵を魔人に変化させて、瘴気が込められた石を食わせて角三本魔人にして倒せばいいのだが、そうできる程の時間は残されていない。
というのも、勇者が普通の状態ではないのが気になるからだ。
背中に伸びている真っ黒い天使の羽根と、移動中仲間と一切言葉を交わさないのが、今まで戦ってきた相手とは違う雰囲気を醸し出している。
各街のオークやサイクロプスを焼き払う姿も、普通の人族とは思えない姿だ。
それに聞いていた勇者
そこにあるのは、魔人にも似た瘴気が込められた魔法である。
ひとまず、ダンポをどう増やすか悩みながら、勇者軍の対策を進めた。
◇ ◆ ◇ ◆
数日後。
王都前に展開された敵戦力に思わず冷汗が流れる。
まさか、自分達と同じ戦力が召喚されるとは思いもしなかったからだ。
すぐに勇者の命令により、天使部隊とデス部隊が衝突する。
守護眷属達の戦いにも匹敵する凄まじい戦いが繰り広げられるのをモニター越しに見つめる。
その時。
モニターにちらつきが見え、砂嵐のような音が響いて、全てのモニターがスノーノイズ状態になった。
敵意をむき出しにして、俺の周りを固める守護眷属達が、砂嵐のようなモニターを睨み続ける。
数秒後。
まるで嘘かのようにスノーノイズが終わり、美しい空の上の景色が映し出された。
「初めまして~ダンジョンマスターさんでいいかな?」
声と共に映像が移動し、一人の男の子を映した。
そこに映っていたのは、黒い髪と黒い瞳を持ち――――――
俺は思わずその場に立ちあがり彼を睨み返した。
「おっと、そんなに怖い顔をしないでよ~懐かしいでしょう?
「お前は誰だ? どうしてその身体を持っている?」
「ふふふっ。さすがのダンジョンマスターも気になるみたいだね。答えを聞きたい? でもタダでは聞かせられないよ~そこで、僕と取引をしない?」
「取引?」
「ふふっ。この身体の事を教えるよ。何なら――――――返してあげてもいい」
いたずらっぽく笑う少年が笑みを浮かべて心臓を指さした。
「何を求める?」
俺の答えを聞いた少年はご満悦に画面から見下ろした。
「鍵。鍵を渡してくれれば、この身体は返してあげるよ」
「鍵? 俺に鍵なんてないが?」
「いや、あるはずだよ。最後の鍵がきっとあるはず」
「最後の鍵か…………いや、そんな覚えはないな。もっと具体的に示してくれないと分からないぞ」
「ん~一応剣なんだけど、それだけでは鍵にはならない。その剣は既に君が持っていて、鍵に変わったはずなんだ」
少年の言葉に思い当たるモノがあった。
「マモ。あれを出してくれ」
「う、うん! お兄ちゃん」
マモの身体の中から姿を見せたのは――――――ルゼが俺にお土産として持ってきてくれた魔剣ベクハドールだ。
「おお~! ちゃんと
「…………」
画面の向こうの少年はそれはそれは嬉しそうな笑顔でその場から嬉しさを表現して飛び跳ねる。
しかし、
ルゼから渡された剣を手にすると同時に、世界が止まった。
ん? 世界が止まって誰一人動かなければ、俺自身も動けない。
なのに、何故か思考は働いているようだ。
言葉を出そうにも身体が動かないので、声も出せない。
そんな止まった世界で小さな声が聞こえ始める。
――――ぃ。
どこかで聞いたことがある声だ。
――――にぃ。
何度も聞いたその声。
忘れるはずもない。
その声の主は。
「
俺の叫びと共に、止まった世界に亀裂が入り、少しずつ剥がれ落ちていく。
――――お
ああ。間違いない。俺の――――――
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