第98話 最後の力と最強戦力
サンがオメガを浄化して、オメガがエラになって数か月が経過した。
他にもヴァイオレットやアスタリアも最下層で日々頑張っているが、誰一人辛そうにはしていない。
シャーロットも地上の生活に馴染んで、シャルルと共に死神教国を統治し始め、教王として君臨しているそうだ。
もしシャーロットが眷属奴隷のままだと、教王と呼ばれた瞬間、その首が飛んでいたと思う。
ただ、今のシャーロットとアメリアは立派な眷属となっているので、誰一人拒む眷属はいない。
- 獲得ダンジョンポイントが16,000,000を超えました。ボーナスが与えられます。好きなボーナスを選んでください。-
- ①眷属強制成長(獲得済み)、②眷属視界共有(獲得済み)、③眷属音声共有(獲得済み)、④眷属連携転移(獲得済み)、⑤眷属スキル共有 -
日々増えていくダンポのおかげで、ボーナスも残す一つとなったのが遂に解放の瞬間となった。
⑤眷属スキル共有なのだが、今までこのスキルの有用性はあまり考えた事がない。
その一番の理由は、俺は眷属達を能力で差別しようとはしていないからだ。
中でも剣術に秀でているシャーロットと料理に秀でているアメリアを特別視はしていたが、それは彼女達の能力以上に頑張りがあったからこそだ。
例えば、今ではアスの専属眷属になっているセシルという子も、名前までは憶えていなかったが、最下層のメイド隊の中で誰よりも頑張って走り回っていたのを覚えている。
そんな感じでそれぞれ頑張ってくれれば、俺は嬉しいと思っている。
まぁ、この能力で働きやすくなるのなら、それもいいかも知れない。
早速手に入れた最後のボーナスを検証する。
俺の中に無数のスキルが入ってくる。
その中でもひときわ目立っているスキルがある。
その名は『器用』というスキルだ。
そうしてか、このスキルから他のスキルよりも、より深いモノを感じる。
検証結果からいえば、最後のボーナスは今までのボーナスの中でも随一の効果があるのは確かだ。
まず、眷属達の全てのスキルを俺が獲得する事ができた。ただし、守護眷属達が持っている特殊スキルだけは手に入らなかった。
その理由を考察すると、彼女達の特殊スキルは彼女達のためだけに存在しているという。
それを誰にでも渡せるとなると、それはもはや特殊スキルではなくなるからだ。
二つ目は、獲得したスキルなら、眷属達に全員渡せる事ができた。
それもあり、守護眷属達とアメリア、シャーロットには俺が持つ全てのスキルを渡してみた。
数秒もしないうちに、彼女達が玉座の間に雪崩れ込んでくる。
「主様!」「マスター!」「ご主人しゃま!」「ますたぁ」「お兄ちゃん!」「主!」「「ご主人様!」」
全員が入るや否や俺を呼ぶ。
きっと、急にスキルを獲得した事に驚いてやってきたのだろう。
「どうしたみんな。落ち着くといい」
そう言うと、みんながそれぞれの顔を見つめ、一旦落ち着く姿勢を見せた。
そして、代表としてレヴィが口を開いた。
「主様。新しいスキルを渡されたと、無数のスキルを手に入れたのですが……」
「ああ。俺の新しい力で、眷属達のスキルを全て獲得している。そして、俺が持つスキルなら誰にも付与する事ができるのだ。お前達は俺にとって最も大切な相手だ。俺が持つ全てのスキルを付与しただけだが、迷惑だったか?」
「そ、そんなことはありません! むしろ主様にここまでして頂けるなんて、嬉しい限りでございます!」
レヴィに同調するかのように、全員が大きく頷いて応えた。
「これからもよろしく頼むぞ」
「「「「はいっ!」」」」
何故か一人ずつ口を重ねられた。
◇ ◆ ◇ ◆
数日後。
「主様。大変な事になっております」
「…………ああ。確認している」
やってきた守護眷属達を前に、俺はモニターで現状を確認している。
目の前に映っているモニターには、燃え盛る――――俺の支配街の一つが映っている。
「相手は?」
「どうやら魔族領に向かった勇者が戻ってきた様子です」
「街に住んでいた者は?」
「幸い、この街にはまだ誰もおらず、主様が配置した魔物達しかいませんでした」
「これからの被害は?」
「このまま真っすぐ王都に向かうと思われます。あと数日には着くと思われます。その間に街が8つあり、全部処分されると思われます」
「支配下の全ての国民を移動させろ。王都にSランク魔物を生成する」
「かしこまりました」
Sランク魔物を生成するにはデメリットが一つだけある。
それは全部で7体までしか生成できないというデメリットだ。
1体で100万ダンポを要するのだが、毎日貯まっていくダンポのおかげでそれは大した事ではなくなった。
「デス部隊はどこにいる」
「はっ。ギブロン街の近くで待機させております」
「デス部隊も全員王都に行かせろ」
「かしこまりました」
エルフ族を攻めた時に活躍したアンデッド部隊であるデス部隊。
彼らも非常に強力で、Aランク魔物をセット生成した際に生まれた部隊だ。
普段なら、ただのデスナイトが生成されるのだが、1部隊しか生成できないが、デス部隊を全部で3種類生成できた。
それが、デスマスターを頭にデスナイト30体で構成されている部隊。デスアサシンを頭にデスシーフ30体で構成されている部隊。デスウィザードを頭にデスウィッチ30体で構成されている部隊である。
この3つの部隊は非常に有能で、特にその頭になっている3体は知能があり、命令をしっかりこなしてくれるのが大きい。
彼らにはさらにデスナイトやデスシーフ、デスウィッチを70体追加して、全員が100体ずつ率いて貰っている。
それから数日後。
レヴィの予想通り、勇者軍は快進撃を見せ、王都までの街を守らせていたオークやサイクロプスの2000体をものともせずに殲滅して、突き進んで王都までやってきた。
そして、王都に集めたSランク魔物の七天使達とデス部隊が勇者と衝突すると思われた。
その次の瞬間。
王都前には、七天使とデス部隊と全く同じ姿の色が反転した者達が出現した。
勇者の力とは思えなかったが、今の勇者を見ると、彼が普通の人族ではない事くらい一目で分かる。
何故なら、彼の背中には黒い天使の羽が宿っていたからである。
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