第94話 過去の激白(オメガ視点)
◆オメガ◆
ありえん! ありえん! ありえん!!!
一体あの化け物はどこから現れたんだ!
今の私なら昔の角三つ時代よりも遥かに強くなっている。
それなのに、目の前の化け物には手も足も出ず、勝てる気が全くしないのだ。
何より不思議と思うのは、こちらの攻撃があの女に当たった瞬間、全てが
それがあまりにも不気味で、このまま逃げ出したくなってしまう。
だが、数百年前、角が三つだった時代に戦った――――あの魔人喰いよりも遥かに強いと感じてしまう。
魔人喰いから逃げ延びて、彼があの後どうなったかは分からない。
だが、それ以来、この世界は生きやすくなった。
だから私は長年ずっと隠れて、この日のためにデルタを育て、他の角一つの魔人も育てた。
それを喰らい、ようやく三つ角に戻った上で、あの頃よりも遥かに強くなったというのに…………どうして私の前にここまでの圧倒的な強者が現れたのだ?
どこからダメだったのだろうか。
デルタからギブロン街付近のダンジョンが3つ消滅したと知らされた時に感じた胸騒ぎ。
どうしてもあの時の胸騒ぎが忘れられない。
あの時、ギブロン街という田舎街を制圧するべきだったのだろうか?
だがそんな後悔をする時間ももはや残されていない。
私の前に一瞬だけ映った緑色の髪を持つ女が、私の速度を上回って身体に触れてくる。
――――ただ触れただけ。
なのに、私の身体は非力な虫のように吹き飛ばされ、反撃一つできない。
何故か全身の力がどんどん抜けていく。
これもあの女の力だと思われる。
私は……このまま死ぬのだろうか。
◆
「…………ここは?」
目が覚めたら、初めて見る景色が広がっていた。
身体全体に力が全く入らず、頭より流れる血の匂いから、恐らく魔人の力の元である角を抜かれてしまったのだろうな。
「監獄だよ☆」
懸命に視線を上げて声がしたところを見つめると、ピンク色髪の女の子が笑みを浮かべて私を見つめていた。
派手な服装だが、その瞳には確たる自信が宿っていて、私の記憶が切れる前に対峙していた緑髪の女と似たモノを感じる。
まさか…………ここまでの戦力が一人ではなく、複数人いるとはな。
もしかしたら、彼女達は二人以上いるのかも知れない。
それなら……彼女達の戦力を見極められなかったんだな。
「私を生かした意味はあるのか?」
「もちろんだよ。これから君はダンジョンポイントに変えるからね。死んでもらっては困るのさ」
「ダンジョン……ポイント?」
「君が知る事ではないけどね☆ それより――――魔人喰いについて教えてくれたら、苦しまずに死なせてあげるよ」
「…………」
ダンジョンポイントが何かは分からない。
だがそれよりも、私から魔人喰いの情報を引き出したいのは間違いない。
後ろに控えている長い金髪のメイドからも凄まじい気配を感じられる。
私が答えようが答えまいが交渉にすらならない事は言うまでもないな。
「遥か昔、世界がまだ
「つまり、全ての種族を喰おうとしたのは、君達だったのか」
「ああ。我々魔人は生き物を吸収することで強くなれる。そうやって、私ともう一人の魔人が主軸として国を作り、あらゆる種族を喰い始めた。私と彼もその時に三本角魔人に進化している」
「一つ疑問がある」
後ろの金髪メイドが疑問を口にする。
やはり、ただのメイドではない。
メイド服を着ているのは、恐らく仕えている人がいると思われる。そうでなければメイド服など着る必要がないだろうから。
「どうしてお前達魔人は――――人族しかいない?」
「それは我々が人族からしか生まれないからだ」
「他の種族からは生まれないのか?」
「そうだ。エルフ族も魔族も、既に滅んでいない亜人族も、魔人になる事はなかった」
「という事は魔族と魔人はそもそもが違う種族なんだな?」
「ああ。同族というなら、魔人は人族と同族になるのだろうな。昔、ダークエルフ族という種族がいたが、エルフ族と肌の色や属性が真逆だったが、二つの種族はお互いを憎み、エルフ族に滅ぼされていたな」
私からしたらエルフ族もダークエルフ族も全く同じだったが、あの種族だけは最後までお互いを毛嫌いしていたのを覚えている。
「それで、魔人喰いはどこで現れた?」
「それは分からない。いきなり現れては、次々魔人を喰って強くなっていった。強くなる速度も非常に早く、私ともう一人の三本角魔人と同時に対峙するまでには、既に私達よりも遥かな高みにいた。まぁ、私が相手したあの緑髪の女よりは弱いと思うがな」
「その魔人喰いはどうなった?」
「それも全く分からない。魔人喰いとの戦いで、勝てないと踏んだ私達は、逃げる事にしたがそう簡単に逃げる事はできなかった。もう一人の三本角魔人と、私の角一本を犠牲にする事で逃げ切る事ができたが、それ以降、彼の姿を見てはいない。そもそも私自身が数百年も眠っていたのだからな」
それを聞いたメイドは何かを考え込むと、ピンク髪の女と何かを話し合う。
そろそろ私にも死を迎えさせてほしいものだ。
あれから生き延びるために逃げ続けてきた。
もう行きたいとは思わない。このまま…………。
「オメガとやら。お前に朗報がある」
メイドの言葉に私の胸が不安で支配されたのは言うまでもなかった。
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