第92話 眷属と新たな守護眷属

「ご苦労」


「「「「はっ」」」」


 元王国領内の全てのダンジョンを制圧してきた守護眷属達が戻ってきた。

 さすがの量で数日を費やしたようだが、守護眷属達は誰一人疲労をみせない。

 休んで貰うつもりだったけど、全員要らないとの事だ。

 そもそも守護眷属に疲れは感じないそうで、それよりも俺との時間を過ごしたいという。


「早速帰って来てくれたのだが、どうやらオメガが少し動きを見せているという。派手に動かれる前に終わらせておきたい事を優先にさせて貰うぞ」


「「「「はいっ!」」」」


 レヴィ達には事前に伝えているので、問題なさそうだ。


「では――――――アメリア」


「!? へ? は、はいっ!」


「前に」


 まさか呼ばれるとは思わなかったようで、ポカーンとした表情でこちらを見上げてから前に出てきた。


「眷属として一番長い歴、俺のために尽くしてくれた。それは俺だけでなく、ほかの眷属達にも伝わっていて、守護眷属達も全員が認めている程である。そこでアメリアに誰よりも先に何かを与えなければ、マスターとして示しが付かないと思う。シャーロットの提案ではあるが、アメリアを眷属奴隷から眷属に昇格させたい。アメリアは受けてくれるな?」


 彼女は一切答えなかった。

 いや、答えられなかった。

 ただ跪いて俺を見上げながら、必死に涙をこらえて、その美しい目からは大粒の涙を流していたからだ。


「私はアメリアもシャーロットも大賛成~☆」


「ええ。アメリアのおかげで大いに助かっているわ。もちろん主様のためではあるけれど、頑張ったことに報いたい主様を私も支持するわ」


「うん。私もアメ姉ちゃんならいい」


「アメ姉ちゃん……好き…………」


「僕はまだ日が浅いけど、凄く気が利くし、何よりアメ姉の料理を食べているお兄ちゃんが好き。これからも頑張って欲しい」


 それぞれみんなも思いを語ってくれる。

 それはアメリアだからこそ、みんなの想いが伝わるはずだ。


「アメリア。これからも頼んだぞ」


「あ…………いっ…………わた……しっ…………がん……ば…………す…………」


 今にも泣き崩れそうなアメリアにアスが寄り添う。

 すぐにベルとリゼも寄り添って、それをみんなで眺めるこの瞬間がとても幸せだと思う。


「シャーロット」


「はっ」


「先に眷属になったアメリアを優先してしまったが、シャーロットの活躍もアメリアの活躍に引けを取らないモノがある。王国を制圧する作戦も多くの孤児達を味方に入れ込んたその手腕も、全ては俺のために行った事だと分かる。その功績はシャーロットが求めていた報酬として与えよう。眷属奴隷から眷属となり、未来永劫、地上の元王国領――――死神教国領を守るがいい!」


「ありがたき幸せ!」


 もちろんシャーロットの眷属化に反対する守護眷属は一人も居ず、こうしてアメリアとシャーロットが眷属奴隷から眷属となり、守護眷属以来初めてとなる眷属が二人誕生した。




 ◇ ◆ ◇ ◆




【ダンポ10,000,000を使用し、Aランクガーディアンを生成します。】



 天の声さんからの声がして、目の前に禍々しい魔方陣が現れる。

 ルゼやマモ以上に周囲に放たれる気配は強く、鋭い。

 そして、黒い霧が晴れて中から現れたのは――――綺麗な緑色の目と長い髪を持つ守護眷属だった。


「主。サンと申します。お呼びくださりありがとうございます」


 少し硬い口調の女の子は、アスととても似た雰囲気を持つ女の子だった。


「サン。久しぶりね」


「ん。久しぶり」


 意外にもマモと繋がりがあるのか、サンに真っ先に向かったのはマモだった。


「サンはどういう力を持っているんだ?」


「はい。私は『変化』をもたらします」


「変化?」


「何事にも決められた物事があります。私はそれを書き換え・・・・られます」


「ふむ…………なるほど」


 ここまで6人の守護眷属達。

 彼女達には一人一人特殊なスキルがあって、その効果は絶大な力を持つ。

 彼女の『変化』というスキルは、一見、タダ変えるだけと思われてしまうかも知れないが、考え方を一つ変えるだけでその効能がどれだけ凄まじい事なのか想像できる。

 さらに言うならば、こういうスキルを待っていた。

 オメガが動き出す前に試せるかも知れない。




「サン」


「はい」


「この女の常識・・を書き換えられるか?」


「容易い御用です」


 俺とサン、シャーロットが目の前にしているのは、檻の中で生活を続けているシャーロットの妹、シャルルである。

 彼女の感情はインセイン常識によって、中途半端に支配されているはずだ。


 サンにその常識を変えて貰う。

 伸ばした手から美しい緑色の光が溢れ、シャルルの頭に触れる。

 ゆっくりと目を瞑ったシャルルが数分後、目を覚ました。


「ほぉ……俺を見ても暴れないな?」


「はい。彼女の常識を主の眷属奴隷であるように変化させました」


「本来の常識を書き換えるか…………これで一つ分かった事があるな。ありがとう。サン」


「いえ。いつでも呼んでください。主」


「シャーロット。これからは妹を大事にな」


「ありがとうございます。ご主人様。サン様」


 深々と頭を下げると、檻から出てきたシャルルと嬉しそうに抱き合った。

 シャルルは人族の中でも珍しいスキルを持っており、『狂戦士』という特殊スキルがあり、その力は人族の中でも異質なモノで魔族や勇者に匹敵する力を持つそうだ。

 これからシャーロットと共に、地上の街々を担当して貰う事にした。

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